史上最熱の三日間「にじさんじ甲子園2021」本戦まとめ-2:Bグループ編
Aグループの白熱の戦いの翌日。優勝候補ひしめくBグループは幕を開けた。
下馬評ではまさかの2年目のセンバツ優勝を果たしたレインボール高校はやはり総合力の高さから優勝候補との見方が強く、それに対して突出した個性を持つ加賀美実業や神速、評価などでは1歩及ばないものの、ジャイアントキリングも期待される帝華高校などがどこまで食らいつくかが見どころ。
軽く全高校の前評判やデータを軽くおさらいする。
帝華高校
2年冬以降、舞元啓介に代わって勝ち運や闘志持ち先発エースとなった天宮こころとキャッチャーAへと変貌を遂げたリード性能を持つジョー・力一のバッテリーを軸に、肉屋などでの育成のサポートもあり打線面も大きく覚醒を遂げた。3年目の大分県大会も準決勝まで駒を進め、今大会の最強とはいかないものの、十分に戦えるチームへと進化した。
投手陣は先発天宮、中継ぎ舞元、クローザーの周央サンゴのAMSリレーで繋ぐ。
(余談:ちなみにキャッチャーの力一の頭文字も合わせてASM-Rリレーとかの言葉遊びもできる。)
打線はかなりしっかりとしており、役割の固定された打者がほぼいないため、柔軟に打順を入れ替えることができそうな布陣。イブラヒムや鈴木勝、家長むぎなど打線のつながりでどれだけ点が取れるかが試合の行方を左右する。
レインボール高校
なんと言っても3年縛りレギュレーションでのセンバツ優勝は圧巻。天才キャッチャーを軸に打線、守備、投手全てにおいてかなり高いレベルにまで高まったバランスの良いチーム。
投手は大覚醒を遂げたエース、アルス・アルマルがチームの先発を担い、中継ぎ陣や守護神モイラまでかなり厚みのあるメンバー。
野手は走力のある瀬戸美夜子や神田笑一、威圧感持ちのシスター・クレア、強打者フミや今大会最強野手であり、攻守で活躍できる天才キャッチャーミユ・オッタヴィア、守備に強いセカンド、長尾景まで3年間でここまでよくまとまったなという感想しかない。
加賀美実業高校
2年目ではセンバツ出場も決め、より一層激打方針が激しさを増した。
ある程度の守備力をかなぐり捨ててまで攻撃に振ることでの打線の強さはやはり他を圧倒する。打線のなかに捕手ニュイ・ソシエールと新1年生ながらスタメン入りしたロゼミ・ラブロックの2枚の威圧感持ちを入れることでより投手のスタミナを削ることに特化する。その凶悪さをカードゲームのハンデス戦術(手札やデッキを捨てさせる効果のあるカードを多用し、相手の戦術を麻痺させる)に例え、投手のスタミナを削り、戦術の選択肢を減らしていく「ハンデス打線」は対戦相手には脅威。もちろん1番から8番にほぼミート、パワーがC以上の打者しかいない攻撃力の高さは一発や長打を誘発する。
そして投手は今大会NO.2投手の社築を擁し、夏大会前にキャッチャーAに覚醒したニュイ・ソシエールとの最強バッテリーで他を寄せ付けない。後続が少々心配だが果たして。
神速高校
3年目には夏の甲子園にも出場し、更なる強化がなされた神速の名に恥じぬ野球の注目度は高く、黒井しばの内野安打、緑仙のバント、戌亥とこなどの長打の流れで得点の狙う戦術の完成度は高い。その他の打者も一発よりはどちらかというと安打を出せる打者が多く、一発よりも出塁率の高さを重視する野球は監督の風貌とは裏腹に実に堅実とも言える。
エース投手は不破湊。「重い球」やドロップカーブを駆使した投球で被安打を抑えることができるか。後続のライも「奪三振」など駆使し試合後半を有利に進めればチャンスが見えてくる。
それではBグループはどうなったのか。
Bグループ1試合目 帝華vs加賀美実業
加賀美実業は先攻の初回から帝華の先発天宮に対し攻勢を仕掛ける。1番エトナが出塁、2番ニュイの犠打、さらに3番葉加瀬の長打で1点を先制。
しかしその後は天宮と加賀美実業の先発、社との投手戦で互いに点が取れない展開が続くことになる。
なんとか追いつきたい帝華だったが、相手エース社のピンチ時になおも強化されるその投球にアウトを重ねられる。加賀美実業が5回表に再びエトナの出塁からの葉加瀬の長打で追加点を加えるなど、5回,6回に2点を追加。社の無四球完封もあり、加賀美実業が初戦をものにした。
しかし7回表の満塁の自身で招いたピンチを封じた周央サンゴなど、要所で加賀美実業のチャンスを封じ込めた帝華投手陣にはやはり強力であったとの一言に尽きる。
加賀美実業 3−0 帝華
Bグループ2試合目 神速vsレインボール
屈指の名勝負となったこの試合。初回からレインボールは瀬戸とミユの連続安打で1点を先制するも、その後はエース不破の獅子奮迅とも言える投球と外野の戌亥、黒井の名守備、緑仙、夜見の二遊間に阻まれ得点できない。神速もレインボールの先発アルスの投球や堅い守備陣に守り切られ、3回表までレインボールの一点リードが続く。しかし3回裏、7番エクスのライン際の好打を口火に8番不破の送りバントでランナーのエクスが3塁まで移動。9番弦月の長打で1点をもぎとり、同点とする。こう着状態の5回裏、ついに「ターニングポイント」が訪れる。5番クレアのツーベースヒット、7番長尾の犠牲フライで2アウト、ランナー3塁となり、8番健屋まで打順が回る。ここでエース不破が降板し、リリーフのライが登板する。
フルカウントまでもつれた勝負の後、健屋の放った打球はレフト黒井のわずか右をすり抜ける。流れを引き寄せたのはレインボールだった。
追加点をもぎ取ったレインボールはリリーフエースのモイラが登板し、続く2回を無失点に抑え、接戦を制したレインボール高校が勝利を手にする。しかし大量得点も期待できたレインボール高校の打線がここまで抑えられるほどの投手戦に神速の投手陣を称える声は大きい。
神速 1-2 レインボール
Bグループ3試合目 帝華vsレインボール
レインボール有利に見えたこの試合もまた、とんでもない結末を迎えることになる。
序盤から先発のアルス、天宮が白熱の投手戦を繰り広げる。天宮はレインボール打線に対して外野手、内野手の好守もあってピンチを凌ぎ続け、アルスは初回から帝華の打線に対し奪三振を重ねる好投。しかし5回表で代打を出したことでアルスが降板。リリーフモイラに交代する。
互いにゲームの動かないまま6回裏、帝華は1番スハの出塁から対左Gと左投手に弱い2番アクシアの送りバント。3番イブラヒムが三振に倒れて、これで2アウト。
迎えるのは加賀美実業戦での安打の活躍から4番に据えられた家長むぎ。対左投手はFなので苦手だがチャンスの局面には強い。
ボール球を挟んだ後の2球目だった。
甘く入った球を完璧に捉える2ランはセンター方向への確信ホームラン。ここで帝華高校がまさかの先制。そして値千金の2点リードを得る。
そして7回表、マウンドには完投を狙う天宮こころ。小野町監督も代打策に出るが、初回から放たれていた闘志の炎はこの試合、ついぞ消えることはなかった。
帝華高校が下馬評を覆す大金星を挙げる。エース天宮は「闘志」と力一のリード能力の(キャッチャーA)によるサポートで今大会3人目の7イニングの無四球完封勝利。
レインボール高校はまさかの敗戦。家長の苦手としていた左投手であったモイラがまさかの被弾を受け、打線もあと一本を天宮の「重い球」などで野手に打ち取られてしまい、悔しい敗戦となった。
帝華 2-0 レインボール
Bグループ4試合目 加賀美実業vs神速
乱打戦とも思われたこの試合は、序盤から白熱の投手戦に。先発社と不破はそれぞれの打線に対して無失点に抑える。
特に不破は初回から強力な加賀美実業打線に対して重い球などでゴロを打たせるなどノーヒットに抑えるピッチング。
社はピンチを背負うも要所で神速の強打者を抑えていく。
しかし、5回表に来栖夏芽のチーム初ヒットを皮切りに白雪巴が外野の頭上を越える巧打で一点を先制、さらに文野環の長打で追加点を挙げて2点のリードを得た加賀美実業。
このリードを社が粘り強く守り抜き、2連勝となった。神速高校は不破やライの好投に打線が社を捉えきれずに惜敗。
一位通過の夢が潰えることになる。
加賀美実業 2-0 神速
Bグループ5試合目 帝華vs神速
金星を得て勢いつく帝華とこれで終われない神速。帝華の一位通過のためには大量得点を見込みたいものの、3回表に2アウトで1、3塁としていたところを5番リクサの一打で先制される。
しかし、その裏1番スハが神速先発不破の失投を見逃さない完璧なホームランで同点とし、天宮を援護する。
その後互いに一発のないまま、6回表に突入。2アウトながら弦月の長打で2、3塁とチャンスとなった「ターニングポイント」に神速は代打春崎エアルを投入。ここで帝華はピンチを背負った中継ぎエース舞元の降板か続投かの選択に追い込まれる。鷹宮監督はここで舞元を降板させ、周央サンゴを登板させる。
この勝負は春崎をセカンドゴロに打ち取った帝華の勝利。
すると直後の6回裏だった。6番力一のレフト黒井のさらに左に落ちるヒットで出塁。すると続く竜胆尊が広角打法を活かした2ランホームラン。
鷹宮監督を含めた同期組、RRRの2人が采配に応えて逆転。
そして神速の最後の攻撃となる7回表、回を跨いだ抑えの周央が打者3人を打ち取りゲームセット。加賀美実業との得失点差の関係上、1位通過は厳しいものの、破竹の勢いを示した帝華高校。上位への躍進が期待できる2勝1敗となった。
神速 1-3 帝華
最終戦前の順位
1 加賀美実業 2勝0敗 +5
2 帝華 2勝1敗 +1
3 レインボール 1勝1敗 −1
4 神速 0勝3敗 −5
レインボールの1位通過条件は「4点差をつけての勝利」
加賀美実業は「引き分け以上」
Bグループ6試合目 加賀美実業vsレインボール
互いに負けられないBグループ最後にして最大の戦いと予想されたこの一戦。
加賀美実業が初回、1番エトナ、3番葉加瀬の安打でチャンスを作ると、5番ロゼミの安打で先制。
しかしその裏でレインボールは2番フミのフェンス直撃の二塁打でチャンスを作り、3番クレアの外野の穴を突く長打で得点。さらに4番のミユで追加点を得ると5番の空星きらめも長打を放ち、この回で3点を得る速攻の逆転劇で社に初失点をつける。しかし、その後打線はつながらずアルスと社の投手戦になるかと思われたが、加賀美実業は3回表、1アウト2、3塁で4番来栖がセンターの手前に落ちる安打で1点を追加。
そして5回表、9番文野、続くエトナでノーアウト2、3塁のチャンス、「ターニングポイント」を作る。アルスは2番ニュイを三振に打ち取るも、葉加瀬に安打を打たれ満塁に。ここでアルスが降板、モイラが登板する。4番来栖は三振にするものの、ロゼミに安打を放たれ、加賀美実業は同点に追いつくことになる。
5、6回で点を取れなかったレインボールは最終回、「サヨナラ満塁ホームランでの勝利で1位通過。」に挑むことになる。
1アウトで9番神田が出塁、その後盗塁を行う。
これが悪手に見られたが、ここで社のスタミナ切れで1番瀬戸美夜子が社から初の四球。加賀美実業はリリーフでジユを登板させるも、続くフミが安打で出塁。
ここでレインボール打線はまさかの「満塁」となる。本塁打が出ると逆転で1位通過となるこの状況、打者は3番シスター・クレア、そして4番に満塁男の能力を持つ最強打者ミユと続く。
だが第二球、ゴロの打球をセカンド文野環が本塁への送球。これをアウトとするとそのまま捕手ニュイが一塁へ送球。ファースト葉加瀬が取り、これもアウトで併殺成功によりゲームセット。
本塁ゲッツーを成功させた加賀美実業の守備がゲームを同点で終わらせた。併殺崩れで一塁がセーフになっていた場合、4番ミユに回っていたため、勝負がわからなくなっていた可能性もある。固い内野の前進守備と打たせた打球が全てを決着づけた。
これにより加賀美実業の決勝進出が決まった。
加賀美実業 3-3 レインボール
最終結果
1 加賀美実業 2勝1分け +5
2 帝華 2勝1敗 +1
3 レインボール 1勝1分け1敗 −1
4 神速 0勝3敗 −5
Aとは打って変わって投手戦となったBリーグは1点の行方を固唾を呑んで見守ると言うべき試合が多く、僅かな試合の流れ、特にターニングポイントを制したチームが勝利したとも言うべき試合の数々であった。金星を挙げて2位通過となった帝華、最後まで諦めなかったレインボール、そして激打の得点をもぎ取る力と社や固い内野守備によって点を守り抜いた加賀美実業、接戦を演じ、左中間の外野守備の固さは随一とも言える神速。いずれのチームにも大きな可能性のあった試合だったと言えるだろう。