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人生の宝

私の人生の財産は、高校時代の部活動だ。

高校受験に失敗し、滑り止めで入った高校には何の希望もなかった。
入学して3日後くらいに、部活動の見学が始まった。
まだ友達も作れなかったため、一人でさまよっていたらすごく元気な3年の先輩から、勧誘のチラシをもらった。
どうやら音楽部らしい。
私はもともと音楽が好きで、幼少期はピアノを習い、中学時には合唱に力を入れて全校生徒の前で指揮をしていた。

その先輩に付いていくと、見たことない楽器が目に入った。
その部活は「ギター・マンドリン部」だった。
言ってしまえば、吹奏楽の弦楽器版である。

卵型の小さい弦楽器(マンドリン)を、先輩は見たこともない奏法で楽しそうに弾いていた。そして、部員の人たちはみんな明るくて気さくだった。
隣り合わせの姉妹校との合同部活だったため、部員が先輩だけで30名いた。

そして、その30名の中に混ざってマンドリンを弾く先輩の隣で、合奏を初めて聞いた。
圧巻だった。感動した。あの時のときめきは、今でも忘れられない。

その後、即決で入部を決めマンドリンの練習を始めた
私の代は、多い年らしく20人が入部した。
合奏は全部で、6パートで構成される。
指揮者は男の先輩がしていた。
練習は日曜以外の週6行われていた。
そして、毎年全国大会に出場している
しかし、コーチはおらず、ベテランの顧問の先生が教えてくれていた。
その先生は忙しいため、週に1回来てくれたら有難いレベルだった
2つの高校での共同部活のため、それぞれの学校の部長がいた。
そのため、幹部は部長2名と指揮者1名。そして、各パートリーダーが存在していた。

私は、ひたすらマンドリン練習に打ち込んだ。
朝練は無かったが、早く学校に行って一人で自主練をしたり、放課後は部活の時間後も残って練習をした。
幸い、一緒に入部した仲間も熱心な人だらけで、みんなで教え合って先輩の見様見真似で練習した。そして、4か月後には私が初めて聞いてときめいた15分もある曲を、1年生だけで弾けるようになっていた。
先輩にも先生にも驚かれたのは、いい思い出。

そして、その夏に行われた全国大会。
私たち1年生は出場ができないため、客席で見ていた。
今までに感じたことがない独特な緊張感の中、先輩たちの演奏はいつもの練習とはちょっと違って聞こえた。
結果は、一番下の努力賞

下から、努力賞⇒優良賞⇒優秀賞となっている。
悔しそうな先輩を見ながらも、「仕方ないか」という雰囲気もあった。
長年、努力賞が続いているらしい。

そして翌年、先輩の敵討ちを目指して私たちの代も奏者として全国大会の舞台に挑んだ。
結果は、努力賞
仲間と号泣した。悔しくて悔しくて。でも、半ば分かっていた結果でもあった。
改めて全国大会に出る他校の演奏を見ると、指揮者はコーチや先生である高校がほとんどだ。

専門的な指導が受けれないことが原因なのか?
基礎練習が足りないのか?

どうしても原因が知りたくて、仲間と強豪校の生徒に「基礎練習ってどうやってやってますか」って聞きに行った。
答えは、「コーチに言われたことをやってるだけだよ」だった。

私たちには、毎日付き添ってくれるコーチはいない。
基礎練習は、代々先輩が積み重ねてきたことを受け継いでいるからなんとなくやって続けていた。

このままじゃだめだ。環境は自分たちで変えなきゃ。

そう思っていた時、3年生が卒部して私たちの代の幹部が決まった。
私が指揮者に任命された。
マンドリンが大好きだったから、もう奏者ではいられないことに名残惜しさはあった。
しかし、先輩からも同期からも推薦されたため受け入れた。

先輩から言われた推薦された理由
①どの部員にも満遍なくコミュニケーションを取っている
②練習に手を抜くことがなく演奏に本気だから

私たちの代20人で毎週ミーティングをして、各大会の目標と全国大会で優良賞を獲得することの意思統一をした。

そして、今まで個人で行っていた基礎練習は、パートリーダーを中心に20分間パートごとに行った。
その際に、後輩の技術向上にも力を入れた。

そして、コーチについてだ。
そんな人を雇う予算はない。
そこで、8年前に全国大会で優良賞を取り、現在音楽関係の仕事をしているOBの方にコーチをお願いした。大会近くの週末に来てくださった。
また、校長先生にも幹部3人で頭を下げに行った
校長先生は、校長になる前(教頭の時)はギター・マンドリン部のコーチ代わりで頻繁に部室に足を運んでくれていた。
私たちは、全国大会で優良賞を本気で目指していることを校長に伝えた。
その後、校長は仕事の合間を縫って部室に来てくれ、アドバイスをくれるようになった。

そして、私は指揮者としての役割を全うした。
部長2名は、部員をまとめて部活の運営をしていた。
指揮者は、練習の総リーダーとして細かく練習計画を立てた。

力を入れたことは技術面精神面の2つ。

まずは、技術面から。
毎日、大人の人がいるわけではないから私が合奏をまとめなければいけない。
まとめる」というのは、
・各パートのリズムと音があっているのか
・6パートがそろって合奏した時にずれる原因は何か
・強弱や抑揚のつけ方の指導
・演奏のフェーズごとにイメージする描写は何か

などをすべて部員全員と共有することだ。

それを部活中にスムーズに行えるように、毎日授業時間以外はYouTubeにあるプロの演奏を聴き込んだ。6パートの楽譜がすべて乗っている総譜と呼ばれる物に書き込みながら。お風呂にもスマホを持ち込んで、曲を聴き込んだ。
その結果、部員全員で合奏をしているときに「どのパートの音やリズムが違うか」を耳で判断できるようになった
何度もミーティングして生まれた私たちの理想の合奏に近づけるために、私が各パート練習に付き添い、「この部分は他のパートが主線だから小さく」「ここ盛り上がりたいから、強弱はっきりつけて」など6パート全てに指示に回った。
そんなことしていたら、その人の弾き方の癖で誰が弾いているのかを音だけで聞き分けられるようになった。

次に精神面。
これは、私のではなく部員の精神面だ。
本番になれば、何十回何百回と練習しているので、指揮者がいなくても合奏は成り立つ。なんなら、指揮なしで合奏できたら、お互いのパートの音が聞けている証拠だと考えている。指揮者がいる意義について考えた。

指揮者は、常に全部員の前に立っている。
これは、緊張する大会のステージでも同じだ。
しかも大会では、みんなの前には私だけでなく大勢のお客さんと審査員がいる。一方で、私の前はいつもの安心するメンバーだけだ。
本番で120%の力が出せるように、私が仲間の精神的支柱にならない手はないと考えた。
そこで、日頃から部員一人一人とコミュニケーションを密に取るようにした。練習の中で苦手としている部分から、趣味の話や人間関係の話などをすることでお互いの信頼関係を築いていった。
そして、部員のモチベーションが下がるときや大会会場に向かう際の緊張しているときに、私の想いや熱の部分を言葉にして伝えた。

これらを続けていると、本番中に仲間と目が合って緊張ながらに微笑み合うことが増え、メンバーが楽譜ではなく指揮を見るようになることで、合奏に一体感が生まれた
そして仲間に「私、○○の指揮好き!見ると安心できる」と言ってもらえた時は、泣きそうになった。
新入生が入部し、総部員数が約50名になった。後輩たちから私の指揮を見て入部を決めたと聞いたときは、正直めちゃめちゃ照れた。

全国大会の曲は、何度も同期とミーティングを重ねたうえで全員納得の一曲に決めた。
その曲を顧問の先生に伝えると、「総譜しかなくてパート譜がないから無理」と言われた。
そんなの受け入れられなかったから、同期みんなで手分けして総譜をパートごとに書き写した。10分ある曲のパート譜作成は、簡単ではなかった。
音符一つ書き間違えるだけで、不協和音になる。
私は、出来上がったそれぞれのパート譜の最終確認を目でも耳で行った。
練習中に楽譜の間違いが発覚することも多々あった。
しかし、楽譜を手作りすることで曲への想いも高まり、部員の合奏に対する士気が上がった

全国大会本番は、とにかく楽しんだ。
一瞬の出来事でほとんど記憶にないが、終わった瞬間に練習のすべてを出し切れたという感覚は覚えている。

結果は、優良賞だった。
涙は出なかった。うれしさと悔しさがあった。
この悔しさは、「もっと上を目指せたな」っていうないものねだり。
それくらい、全力を注いで出し切ることができたんだと思う。

本校としては、8年ぶりの優良賞
先輩たちが取りたくても取れなかった優良賞を、私たちの代がつかみ取れたことを誇りに思う。


そして、私を支えてくれた仲間に本当に感謝をしている。
この同期に出会えたことが、私の人生に置いての最大の財産だ
絶対に手を抜かない根性集団だった。
全国大会の2週間前にある県の大会で、私たちがどうしても弾きたい憧れの15分ある曲を、顧問の先生に相談したら「これは難しすぎて君たちのレベルには合ってない」って言われた。
でも諦めきれないから、全国大会の曲を同時並行でどちらの練習もしっかりやることを宣言して、許可をもらった。先生の言っていた通り、想像以上に難しかった。
しかし、その曲を大会で披露した時は、先生から「見直した」という言葉を頂いた。
もちろん、1位を取った。

真っすぐな想いをもった仲間と活動できたことが幸せだった。


長くなったが、結局言いたいことはこう↓

・ギターマンドリン部で指揮者に推薦された
・先輩が成し遂げられなかった「全国大会優良賞」をめざした
・課題点は「コーチがいないこと」「なんとなくやっていた基礎錬」
・解決策は「OBと校長先生に指導を乞う」「基礎錬パートごとに毎日20分」
・指揮者として注力したこと「技術面」「精神面」
・楽譜を仲間と手書きし、目と耳で確認
・結果、全国大会で優良賞獲得(8年ぶり)
☆目標を達成するために課題を解決する行動力がある!

最高な青春だったなあ。

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