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この世の未知の世界


 人間、いくつになっても新しい経験に遭遇する機会があるらしい。

 新しい体験とか、心の震えた場面とかの思い出を辿って行くと、いろいろある。例えば

その1)
 いつも童謡や唱歌を歌っているくらいの少女が、音楽に初めて深い感動を覚えたのは、日比谷公会堂で大編成のオーケストラによるベートーヴェンの交響曲第五番と、シューベルトの未完成交際響曲を聴いた時だった。
 生意気にも曲の解説とその時の感動を作文に書いたら、賞をもらったのも初体験。

その2)
 初心者からベテランまで人気の、標高1,977メートルの谷川岳。登山コースや天候によっては決して侮れないこの名山に、上越線の水上駅から、初心者向けの天神尾根コースとはいえ、ズック靴にスカートという軽装で山頂を目指した。下山途中に手間取ったため、帰路は、真っ暗闇の細い山道を、足探りでようやく宿に辿り着いたという、なんとも非常識な登山経験。(昭和26年)
 この出でたちで山頂に立った得意満面のモノクロ写真は、もう何処へ行ってしまったか。

その3)
 合唱だけでは飽き足らず、40代後半から、声楽の個人レッスンを受け始めたのはいいとして、発表会と称する試練を、毎年一回経験する羽目となった。
 大勢のお客を前にしたステージで、ホールの中はピアノの他には自分の声しか聞こえない。舞台の袖から始まるこの異常なほどの緊張感は、初体験から5年は続いただろうか。
 しかし、車の運転同様、慣れるというのは有り難いもので、回を重ねるごとに、心に余裕ができ、視野も広がってくる。30回を過ぎる頃には、お客さんたちの反応を快く楽しむようにさえなった。

 思い出話はここまで。

 人生も終り近くなった今頃になって、また新しい経験をしなければないとは、予想もしないことだった。

 お産以外に、病室という所で何日かを過ごしたという経験はない。

 体の中に異物が見つかったので、それを取り除こうという話。
 それはまだ小さくて、特別な問題はないらしく、  1時間ほどのオペと1週間足らずの入院という予想なので、大したことではないのかもしれない。

 けれども、やっぱりお産とは違う。 陣痛にさえ耐えれば、赤ちゃんは自分で出てきてくれたし、あとは、また新しい世界が待っていた。

 手術となると、麻酔に始まって、全てを医術と人術に任せるしかない。
 過去に、身内や他人に起こった医療事故や、トラブルの情報が記憶に蘇ってくると、どうしても、一抹の不安を拭い去ることが出来ない。

 子供たちは、医学の目覚ましい進歩を説いて、不安の払拭に努めてくれるし、友達がケ・セラセラという言葉を投げてくれた。

 まさにその通り!無益な煩悩はこのnoteに放り込んで、ポジティブに立ち向かおう‼️


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