壊れそうに街が泣いてんだ。
会社の近くに高齢の女性がいるのです。
ひとりで一軒家に住んでいるようでした。
なんとなく時々、話をすることがあります。
「生きてるだけで精一杯よ。」
話の最後に、いつもそんなことを言うのです。
庭には木があり、花が咲いていました。
花の名前は分からないのですが、たくさん咲いていたのです。
「世話をしないから、花の咲きかたが弱いわね。」
そんなことも教えてくれました。
それでやっぱり「生きてるだけで精一杯よ。」
穏やかに言うのです。
生きてるだけで精一杯なんだろうと思うのです。
花が咲くこともあります。
仕事をすることがあるんです。
終わりと思ったときが終わりなんです。
歩けなくなるでしょう。
泣きたくなったり、はしゃいでみたり。
仕方がないことが多いと聞きました。
ダサいくらいでちょうど良いのです。
青い電車で行くのです。
それで僕はいつも
「あなたは若いから良いわねえ。」
なんて言われるのです。
精一杯生きている人から
「良いわねえ。」
なんて誉められたのです。
この上ないなと思うのです。
これ以上のことはないだろうと思ったのです。