安全な社会のためにできることって何なんだろう、と考えて地域社会の大切さに思い至った話
「あの事件は異常事態であって、日常では起こらない。そのことをもう一度、思い出していく作業が必要です」
こういう考え方が日々を円滑に送るために大事なのは分かる。非常によく分かる。実際必要だと思う。しかし、これは同時に異常な事件に遭った人や家族の異常視(スティグマ化)につながる考えでもあるな…と思う。
「ああいう事件は異常事態であって、日常では起こらない」「異常な事件は自分とは縁がないこと」と、どんな被害者の人たちも、ご家族たちも思っていたはずなので…
被害に遭うのは異常な人たちでも、特別な人たちでもない。自分たちと同じふつうの人たち。
でも、そう考えると自分や家族もいつ事件事故に巻き込まれるか怖くて仕方がなくなってしまうときは、とりあえず「あれは異常事態、日常では起こらないこと」として精神状態を良くするのはとても大事、とは思う。
けどその考え方が多くの人の中で強く内面化されると、なんか、被害者本人、そして周囲の人たちは生きづらいんじゃないかな、、、
脳内にある「異常=自分と関係ない、知りたくない」フォルダに加害者だけでなく被害者や被害者のご家族も入れて、「自分の日常と関係ないこと」と遠ざける、みたいなことが起こりやすいのではないのだろうか。
それは、被害者やその周辺の人たちが声を上げにくい社会と地続きなのではないのだろうか。
と思ってしまった。
日々の暮らしを円滑に回すには、「異常事態はめったに起こらない」と言い聞かせ、一旦忘れるのも大事。でも、忘れていくだけでは、社会は安全になっていかない。難しいですね。
日々を滞りなく送るとともに、ちょっとずつの周囲の人への目配りや心配り。あと「おや?」と思ったときにちょっと踏み込む勇気を、この社会に住んでいる私たち一人一人が持つことも、社会を安全にしていくのに大事な要素なんだろうな。
「自分には関係ない」で済ませない。巡り巡って、自分にも関係してくるんだ、と思うこと。
しかし、少し話はそれるけど、地域社会って大事なんだな…と最近改めて思います。
家族、親族、友達以外の人、例えば近所の大人から親切にしてもらったり、助けてもらったりした経験がないと「困ってる人がいたら助ける」「困ったら助けを求める」「困っていそうな人がいないかさりげなく目配りする」という助け合いの精神は身につかないよね。
自分が家族や友達以外の人から助けてもらったことがないと、「困っていそうだな!手伝った方が良いかな?」みたいな発想がまず出ないし。「困ってるのかな?まあ関係ないか」とか、「人を助けることで生じる自分へのメリット、デメリットは?」みたいな発想になっちゃう。
(最近AEDで女性を救助するときに必要があって下着を脱がせたら、罪に問われるか否かみたいな議論があると知り、驚きました。人命と自分の損得を天秤にかける人が結構いるんだな…と)
私は小さいころ長屋みたいな、小さな路地に家が何軒も密集しているところで育った。下校して親が何かの都合で不在で家の鍵が開いていなかったときには、斜め向かいのおばあさんの家に上げてもらって親の帰りを待ったり(猫を14匹、犬を1匹飼っているおばあさんだった)、あるいは家の屋根に上っているところを近所の人に見つかり怒られたりなど、家族でない大人からも「何か気にかけてもらってる」感をいっぱいに受けて育ちました。
私にとって世界というのがぼんやり優しいイメージを保っているのは、そういう生育環境もあるんじゃないかと最近思う。それは、地域社会という共同体の優しさに触れたことがあるからなのかも。
大人になった今、夜に道に倒れてる人とか気になって声をかけ、たまにうざがられたり、あるいは本気で困ってたので助けたことにお礼を言われたりとか、そういうやりとりが私の日常に自然にあるのは、あの長屋での幼少期が影響大なのかもな、と思う。
小さいころに受けた、そこまで深い関係でない存在からの「シンプルな思いやり」って、実は影響大なのかもな…と思います。
世の中には見返りを期待しない親切が存在している。困ったら自分を助けてくれる人がいる。そう知っているか知らないかでは、社会へのイメージも変わってくる。
そこらへんの道を歩いている人にも感情があって家族があるっていう、考えれば当然のことも、忘れないでいられるようになる。
だから、いろんな人からささやかな思いやりを受けることが、人の社会への信頼感を醸成するのかもな、と思います。それが、結果的に犯罪の抑止につながる、とも思います。
とりあえず、私に日々できることは、ここらに住んでいる子どもや近所の人が困っていそうなら声をかける、ということかな、と思いました。
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