超癖玉とクロスプロセス (PENTAX 07 MOUNT SHIELD LENS)
前回の記事で手短にレビューした、PENTAX Q用レンズの07 MOUNT SHIELD LENS。
いやまあ、ユニークレンズと自称して売ってるんだから言葉通りですけど、「これユニークで済むか?」と思わせるというか、他のユニークレンズに比べても際立ってすごい写りするレンズです。
まるでトイカメラで撮影したような画像周辺部の流れや、個性的でやわらかな味わいのある描写が手軽に楽しめます。また、ボディキャップの感覚で使用できる全長6.9mmと非常に薄くコンパクトなサイズで、撮りたいときに手軽に撮影することができます。(上記製品情報ページより)
とPENTAXはいう。これ見たら「おもしろい描写で、何を撮っても特徴的な写真になる」と甘いこと考えちゃうじゃないですか。
そして確かにボディキャップに等しい超小型レンズなんですけど、撮りたいときに手軽に撮影とな……。
手軽に特に何も考えずに撮ったらこんなんです。
どこにピント合ってるかよくわからない。中央はある程度ちゃんと写ってるけど周囲は流れまくってる。まとも、とは言えない。
07 MOUNT SHIELD LENSはレンズ構成1群1枚、単玉レンズというやつ。
しかし、いくら単玉にしても写りが悪い。昔の超廉価フィルムカメラとか写ルンですとか単玉レンズですけど、ここまで悪い写りじゃない。
なぜ……と思ったら、手元の07 MOUNT SHIELD LENSのレンズ玉が偶然外れてしまってわかったんですが、これ両凸レンズだ。
写真用の単玉レンズって、片面が凸・片面が凹のメニスカスレンズを使うほうが収差が少なくなります。だからわざと両凸レンズにして、写りの癖というか欠陥を強く出してる。周辺の流れがすごいのは多分このせいでしょう。
こんな変なレンズをいかに使うか。
幸い、PENTAX Qシリーズのボディには、様々なエフェクト機能がついてます。
ボディ前面のクイックダイヤルに「スマートエフェクト」というのを割り付けて、特殊な、大抵は極端な調子の写真が撮れる。「極彩」「ハードモノクローム」といったわかりやすいものから、「ドラマチックアート」「あでみやび」といった名前じゃわからないものなど9種類、しかも各エフェクトの強さなどを調整もできる。
03 TOY LENS WIDE・04 TOY LENS TELEPHOTOあたりには、これの「Auto110モード」あたりでレトロ調に仕上げると実に似合うんですが、07 MOUNT SHIELD LENSだったらもっと極端なやつがいいと思います。
上の作例はハードモノクロームです。極彩とかドラマチックアートも。もちろん被写体次第で。
それから、カスタムイメージの「クロスプロセス」なんかも面白いところ。ちょっと白飛びしがちになるんで、-0.5か-0.7EVくらい露出補正するほうが好きかな。
本来は、ネガフィルムをポジフィルムの方法で現像するとか、通常と違う現像を行って、仕上がりが狂うのをあえて表現手法として使うもの。
最近のPENTAX機だとどれでもできます。デジタルなのに、シャッター切るたびに色がぜんぜん変わるという、なかなか無茶なやつです。
全体的には、色が派手に転ぶし、コントラストも強かったりとか、かなり癖の強い写りになります。
07 MOUNT SHIELD LENSの変な写りの癖も、面白みに回収してくれる。
たまたま紫に転んだカットが続きましたけど、青くなったり黄色くなったり毎回変わります。
それから07 MOUNT SHIELD LENSは、ピントが近い位置に固定されてるので、無限遠は出てません。遠景はボケボケになります。
近くは意外と写る(公称最短30cm)ので、思い切って寄ってみるのがコツですね。
周辺は距離にかかわらず流れます。
写真のセオリーとして、撮りたいものがど真ん中の日の丸構図は避けたくもなるんですが、ちゃんと写る範囲がかなり狭いから中央を外すと流れる。落とし所が難しい。
ともあれ、クロスプロセスとかスマートエフェクトを思い切って派手に掛けてやれば、07 MOUNT SHIELD LENSの癖がありすぎる写りと、うまくマリアージュする、場合がある。
(もちろん無数の捨てカットの山の中から掘り出すような形で)
ところで、クロスプロセスで撮影したDNGファイルを、PCのPENTAX Digital Camera Utility 5に読み込ませると、カメラでRAW+JPEGで撮影して記録されたものとぜんぜん違う仕上がりになる。
実は、昔からQとDCU5は、どのカスタムイメージでも仕上がりが違うんですけど、それにしてもクロスプロセスはびっくりするほど違う。
まあ、RAW+JPEGで撮っておけば両方の結果を得る手段が残ります。
07 MOUNT SHIELD LENSを前から見ると、2mmくらいしかない開口の奥に小さなレンズ玉が覗いてます。
こんなところに汚れが入っちゃうと大変ですね……。
で、汚れてしまったので困ってたら、これ、爪楊枝で押したらレンズが向こうに抜けますね。はい。はめこんでるだけ。
外れたレンズを拭いて、ピンセットで摘んで元の位置に納め、ぐっと押し込めば入ります。(レンズが緩んで奥にズレてることもあるので、そういう場合も押し込めば収まります)
両凸レンズだと気付いたのはこのときでした。