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ネオ旅行記(1) 樽見線

 ここから、初めて乗り込む樽見鉄道。
 私は乗り鉄なんて名乗るのは実態に沿わないので気が引けるんですが、それでも日本の鉄道の40%は乗ったことがある(乗りつぶしオンライン調べ)ので、今回は主に樽見鉄道を端まで乗りたい旅なのでした。

 「観光列車ねおがわ」ヘッドマーク……いやこれ描き込み? がついてる、予約無しで乗れる観光列車だそう。でも狙って乗れない観光列車なような。通ならちゃんと運行スケジュール把握してるかな。

 鮎吊り革は超良い。

 大垣から本巣あたりまでは、田畑が広がるけどショッピングモールや市街地も見える、ローカル線らしい景色。川沿いに続く地形からすると、三岐鉄道北勢線なんかは近い感じかな。
 しかし織部駅を過ぎたあたりで、峡谷を走る景色に変わる。
 しかも雪がどんどん降ってくる銀世界だ。もしかして雪があるんじゃないかと思って防水かつグリップ効きそうな靴買って履いてきたばかりだよ。ファインプレーすぎる。

 到着。

 地元小中学校の子が描いたらしい観光看板。
 駅から徒歩だと2時間くらい行った先に根尾能郷というところがあって、能の発祥の地というか源流というか、そういうのが今も伝わってるそう。

 駅がなんとも画になる。

 ほぼ真っ白な中で、列車と看板だけがカラフル。
 一般に樽見は春にくるところで、こんなタイミングでひとりでやってくる私も謎のおっさんという感じだったが、この真新しい雪が積もったばかりの景色が見られれば大当たりではないか。

 待合の窓ガラスがポップアート。

 鉄道が絵になりすぎる樽見駅。随分撮ってしまった。

 失礼ながら思ったより商店街がある。
 もともとこの根尾川沿いには、越前大野まで抜ける街道が通っていて、古くは越前や加賀との往来も多かったそう。それで宿屋も多いし商業も栄えていたそう。
 北陸の魚も街道沿いに伝わってきて、このあたりでは今でも鯖の押し寿司をやってるし、農業シーズンには鰊の棒寿司を作っておいて忙しい作業の合間にさっと食べるというような文化もあったそうで。
 むしろ近現代になってしまうと、今は国道157号に指定された道も、超える温見峠がハードすぎ、道は車には狭隘かつ「落ちたら死ぬ」看板で知られる断崖沿い、洗い越しもあって冬期通行止めの名うての酷道。樽見線も大野まで行こうとして力尽きて樽見までになり、と、往来が難しくなった。
 最近ようやく酷道がある程度改良されて冬にも通れるようになって、北陸からの通行が増えてきたそう。落ちたら死ぬ看板も撤去された。

 というような話を、今夜の宿、住吉屋のご主人から伺った。
 チェックイン3時からだから、2時前について荷物だけ預けるつもりが、早めに部屋に通してもらえて荷物も入れられた。ありがたい。

 ちょっとGoogleマップの口コミの書かれように厳しいところがあり、まあ客室棟自体が昭和の昔の基準で作られたままっぽいので、今の感覚とは外れた部分があるのは否めず。真冬だと影響しない部分があったり、そういうの面白がれるタイプの私はいいんだけど無理な人は無理だろなとも思う。
 夕食付き一泊5900円、素泊まりかと思うような値段だったし。

 時系列を変えて、その素泊まりかと思うような値段ででてきた夕食に先にいくと、まず蕪の漬物(上品な薄味)と、ちとボケさせすぎたけどブリ大根(これでご飯一杯食えるくらいのボリュームだけど、これだけつついてもうまいくらいの塩梅)。

 そしてこの子持ち鮎がどーん。私は魚食べるのが下手すぎてみっともないから、普段なら頼まないはず。じゃらんで予約したのを見返しても、「うすずみ豆乳蕎麦と豚ステーキ定食」となってる。鮎とは書いてない。
 ほんとに食べるのが下手で恥ずかしいだけだから、嫌いとか食べられないとかではなく、ぼろぼろにしてしまいつつ美味しくいただいた。
 改めて予約したじゃらんを見返しても鮎とは書いてなかったな。小鉢扱いなのか、オフシーズンボーナスか。

 ポークステーキはまあ生姜焼きかな。もちろん外れようがなし。

 そして根尾の地場産十割蕎麦。つなぎに豆乳を使って手打ち。シンプルなかけそばでくるあたりで間違いない。
 日本酒(千代菊)一合770円でつけてもらって、食事でバリューぶっちぎりの一夜になったのでした。
 これほどとわかってたら朝食もつけたなあ。

 食後に薪ストーブにあたりつつご主人と話してたら、住吉屋旅館は今のご主人で七代目だそうで、けっこうな老舗であった。ゆえに増改築を繰り返して今の姿。
 岐阜では金生山が化石で有名なんだけれど、このあたりも海の化石がうじゃうじゃ出るとか。菊花石も有名なとこだし、地学ファンには楽しい土地かもしれない。
 街道沿いの宿場の話や越前の魚を食べる文化の話やら、継体天皇の話(薄墨桜を植えていった伝説あり)とかあれこれ話してゆったり過ごしたのでした。

 次回は根尾徘徊編。


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