ソビエトプロダクト(MEPROZENIT-E)がやってきました
私がまだ馬券買えない頃に観てた競馬で、海外からスプリンターズステークスに殴り込みをかけてきた馬の名前が「ソビエトプロブレム」っていう強烈な名前だったのを、未だによく覚えております。
90年代半ばのことで、当時はまだまだ日本のレベルが一枚下で、海外馬が来たら強くて大変だったんですけど、この馬はコーナーをちゃんと曲がれなくて外に飛んでいっちゃいましたね……(アメリカの競馬は左回りなんですけど、日本の競馬は右回りが多い)
でまあ、ソビエトプロブレムはアメリカから来たんですが、今回我が家に来たのは紛れもなくソビエト連邦、USSRからやってきたカメラでした。
ソ連で1965年から大量に作られて、大量に輸出もされたZENIT-Eの、日本向け輸出モデルがこのMEPROZENIT-E。
ネット情報によると、なんかダイエーで売ってたとか。1970年頃のことらしいですが、PENTAXでいうとSPやSL(64年に発売してヒットしていたSPから露出計を省いた廉価軽量モデル)あたりの時代。ニコンはニコンFがもうありましたね。
ニコンより庶民的なPENTAXよりさらにチープなペトリのカメラのさらに半額以下の1万円カメラだったとかで。1969年の大卒初任給が34100円だから2/7、今の大卒初任給20万円として換算すれば、6万円ってとこかな。ペトリでも15万。
じゃあショボいモノなのかというと、まあショボいんですけど、意外と頑丈は頑丈みたいで、このMEPROZENIT-Eも、別にダイヤルやボタン類もおかしいところはなく、外観もボロい感じはない。
ペトリのカメラって現存個体が少ないくらいに壊れやすいらしい(リセールバリューが低いから修理されないのもありますが、実家にあったのも20年前の時点で壊れてたな)のに比べると、ZENITはソ連らしく、極寒の中で乱暴に扱っても耐える剛健さはあるのかもしれません。
ダイエーで1万円で売りっぱなしにされたものを、お金かけてメンテしたり修理したりするとも思えませんしね。
右肩は、巻き上げレバーとカウンターとシャッターボタンが同軸に。
巻き上げレバーを倒すと、あからさまにジーコジーコと巻いてる音がして、しかも分割巻き上げができちゃう。1回だと200度くらいとストローク長いですが、分割巻き上げなら小さい動きでもOK。カッコいいし。
ただ、面白がって分割巻き上げを何回かやってたら、シャッターの動きがおかしくなった、あるいは、おかしいと気づいた。ありゃ?
時々シャッターボタンが戻らなかったり、押し込んでも幕の走行が途中で止まって離す時に走ったり、離しても走らなくてスタックしちゃうとか。あるいは、裏蓋開けてたら動くけど、閉じるとおかしくなったり。
で、いじってみているうちにわかってきたけど、どうも分割巻き上げをするほうが調子がいい。なんだろう、1回で巻き上げるとちゃんと巻き上げきらないみたい。
2分割で巻き上げたら、グっと最後まで巻ききれるから、シャッターチャージも正常にいくようになる、らしい。
それからどうも、1/30秒だけ上手く作動せず、後幕がちゃんと閉じきらずに隙間ができてる。
よーく眺めてみた感じ、ミラーの裏に貼ってるテープ?みたいなのが幕に当たっちゃってるような。他の速度だと当たらないのが不思議だけど、幕の先っぽは金属のクリップついて厚いから、幕の走行とミラーの戻りのタイミングとかによるのかな。
そうやって何度も幕を眺めながらシャッター切ったりしてたんですけど、どうもこれ幕の走行がおそいな。
まあ、シンクロ速度が1/30秒、そこまで遅くないと幕が全開しないんだから遅いはずですわね。これローリングシャッター現象が起こってしまいそうだなあ。
シャッターダイヤルも面白くて、これシャッターチャージしても、レリーズしてもシャッターの動作に合わせて回転します。これチャージしてから変更してええんやろか。
2枚のシャッター幕をコントロールする機構だぞ、とアピールしてる感じがしますねえ。好き。
でもってこれが露出計。故障してるので全く動きませんけどね。
レンズやシャッター速度ダイヤルとは連動してなくて、まず内周を入れたフィルムの感度に合わせて設定します。
ГОСТ-ASA感度で16-32-65-130-250-500、DINが13-28の範囲で設定できます。ISOはASAと同じです。
しかし、ГОСТというのはソ連で使ってたGOST感度というやつのはずで、ASAとはイコールではないんだけどな。GOST16=ASA20、GOST32=ASA40、GOST65=ASA80、GOST130=ASA160、GOST250=ASA320、GOST500=ASA640ですね。系列が今どきとちがうからどっちみちぴったり合わないや。
で、外のダイヤルを回して露出計の表示に指針を合わせる。
すると、適正露出になる絞りと速度の組み合わせが見える。上の写真で指針と露出計が合ってるとすると、F11・1/60秒とか、F8・1/125秒でOK。
でもこのカメラ、シャッター速度はバルブ・1/30・1/60・1/125・1/250・1/500しかないのにな。露出計にはもっと低速シャッターまで表示がある。見栄張っとるなあ。
まあその、露出計ついてるったってTTL露出計ではない、外光式セレン露出計ですからね。そんな精密なもんじゃありません。GOSTとASAのズレくらい問題にもならんのでしょう。
左肩なのでもちろん巻き上げノブも兼ねてます。
真ん中を押し込んで左に回すと、シュコっと立ち上がってきて回せるようになります。ちょっといいなこれ。
ファインダーは、けっこう倍率は大きいんだけど、ミラーが妙に小さいから多分視野率低いんじゃないかな。
あとなんか、凸レンズ入ってるのかな、全体的に丸く歪曲してる。しかもスクリーンの角も丸く落とされていて、なんか不思議な見え方。
もちろんMFカメラなんだけど、恐ろしいことにマイクロプリズムもスプリットもなんもない全面マット。えー……。
マットでも合わせやすいように明るいレンズを使うか、どうせ精密にはできないだろうから広角レンズで絞って使うか、どうするかな。
少なくともSuper TAKUMAR 35mmF3.5だと、絶望的なくらいに合わせづらいのだけども……。
ちなみに、MEPROZENIT-Eがダイエーで売られたときは、日東光学にMEPRO-KOMINAR 55mmF2.8というレンズを用意してもらったそうです。
しかし極限まで安くしてもらうために暗いレンズになったんでしょうけど、いくら70年頃でも標準がF2.8って珍しい。そしてこのファインダーで50mmF2.8は使いづらそう。
ボディ前面右手側に、セルフタイマーとシンクロ接点。
この接点はX接点またはM接点。シャッターダイヤルの周りに選択レバーがあります。閃光電球を使うならMにします。
セルフタイマーは10秒くらいで切れました。ごく普通の昔のセルフタイマーって感じですね。
レンズマウントは信頼のユニバーサルマウント・M42スクリュー。
こころなしかねじ込みが硬い気がするんだけど正直どうもならんなあ。
もちろん連動機構など一切なしのピュアM42。
ただ、どういうわけかねじ込んでも位置がちょっとずれる。
単にネジの切り始めがずれててこうなるだけなのか、ねじ込めてない分だけフランジバックにずれが出ちゃってるか。もしかすると微妙に無限遠が出ないとかあるかも。
これ以上はフィルム入れてみないとわからないか。
しかし私が持ってるM42マウントのレンズ、けっこう偏ってるからなあ。どうしよう。TAKUMARの35mmF3.5・135mmF3.5・200mmF5.6・300mmF6.3って暗いのばっかやんか。
ZENIT-Eが本国でセットにされてた標準レンズはHELIOS-44、58mmF2だったみたい。まあ1万円もせずに買えるようなレンズではあるけれど、さて。
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