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COOLPIX 910 ~ 原始、スイバルはハイエンドだった

 動画も出ましたよ。


 大阪市内にもリサイクルショップは結構あるんですけど、置いてるのが白物家電中心で、あまり私が面白がるようなカメラなどの小型AV家電は置いてる店が少ない。
 のですが、なんか最近、実に雑多な感じで細かい物をたくさんおいてる店ができて、覗いてみたら何やらニコンのマークがついたうすらでかいポーチがある。なんだろうと手にしてみると、COOLPIX 910でした。

 発売は1998年10月24日。私が手に入れたのも10月だったんで、23周年でしたね。
 標準価格は99800円。私が買ったのは1/200くらい。

 当時としては、ニコンCOOLPIXのハイエンドでした。
 まあ、98年頃だとニコンはまだデジタルに全然力入ってなくて、このCOOLPIX 900シリーズ以外は、ノートPCに直結するPCカード型のやつとか、PanasonicからまるっとOEMした機種とか、数えるほどしかラインナップしてませんでしたけどね。

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 しかしながら、右側の操作部と左側のレンズ・センサー部が、1軸でぐるっと回るスイバル型なんていう、フィルムカメラじゃ不可能な特異なカメラを、ニコンはハイエンド機として独自開発してたんです。
 2001年末にCOOLPIX 5000という、カメラらしい形のハイエンド機を出すまでは、ずっとスイバルがニコンのトップでした。
 トップモデルではなくなった後も、2006年に出したCOOLPIX S10まで、10年近く作り続けてました。ニコンがスイバルを価値があるものだと思ってたんでしょうねえ。

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 回転角度は270度もあって、真下から前方を通って真後ろまで回ります。

 チルト液晶とかでいいんじゃない? と思われそうですけども、シャッターボタンと液晶画面を含む操作部の角度も自由自在なので、撮影ポジションの取りやすさは圧倒的に違う。独特の撮影体験がありますね。

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 メディアはコンパクトフラッシュ。
 で、コンパクトフラッシュのカメラって、かなり古くても2GBは使える機種がけっこうあります。もともとPC用HDDの規格が流用されてたりするので、2GBまでは当時の規格内に収まってました。
 が、このカメラは2GBだめでした。おおっと……。

 512MBは大丈夫でした。
 古いデジカメで遊ぶなら、小容量の旧規格メディアをガメとかなきゃいけませんね。

 電源は単三電池四本。しかし古いデジカメはアルカリ電池だとすぐ力尽きたりしやすいので、ニッケル水素電池がベターです。
 私はまあ中国製の、リチウムイオン電池にレギュレーターとUSB充電口をつけて1.2Vの単三電池型にしたものを使っておりますが。

スペックなど

 センサーは1/2.7型 130万画素CCD。記録サイズは1280x960です。今時のモニターより画素数少ないですが、当時のPCモニターって1024x768とかザラでしたからね。
 感度はExifにも記録されてないんですが、公称値はISO64とのことです。

 レンズは換算38-115mm F2.4-3.6と、広角がやや物足りないものの、明るい3倍ズームレンズ。
 スイバル型のカメラって、沈胴式レンズにしなくても、カメラの高さ分まるごとレンズに使えるので、長い構成のレンズが使えます。それが設計上有利に働くのかも。

実写

 では、持ち出して撮ってきました。
 起動に10秒くらい、撮った後の記録にも10秒くらいかかるな、と、早速しんどみを感じつつ。

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 広角端で、ショッピングビルの吹き抜けから。
 小さいセンサーに大きいレンズを使ってるカメラではあるんですが、ちょっと隅の方が流れてるなあ。
 このカメラ、起動時に広角端じゃなくて約50mmにズーム位置がくるんですけど、標準レンズ的なところをデフォルトにしたのか、あるいは広角がちょっと弱いのをわかっててそうしたのか。どうだろう。

 歪曲収差も少し樽型に出てますが、まあこれは少しだけですね。

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 大抵のカメラって真上を撮るのはやりにくいものですが、スイバルだと楽々。だからついつい真上撮っちゃう。
 これは広角端で、絞りはF6.6になってました。広角端でF2.4 / 4.0 / 6.6と3段階に変化してるようです。絞ると隅の流れも目立たなくなって解像感も上がりますが、あいにくプログラムオート専用。

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 サイゼリヤでお昼。しかしその……なんだ、美味そうに写ってないな……。
 CCDのカラーフィルターが補色なんで、その後主流になる原色フィルターに比べるとどうしても色がくすみがちで。
 フィルターを通る光が多いから、感度はちょっと有利になるメリットはあり、この時代にはよく使われてました。

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 ガンマ補正で明るくして彩度とコントラストをちょっと上げれば多少ましになるかな。
 ただダイナミックレンジが広いわけでもないようで、机は白飛び、スープの器も黒つぶれスレスレ。補正の耐性があるというわけでもない。
 まあセンサー性能ばかりはどうしようもないですね。

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 木にベタ付け。こういうのをちゃんとモニター見ながら撮れるのがスイバル。私スイバルのカメラ持ったらいつもこれやるな。

 露出補正は1/2EVステップで可能ではあるんですが、メニューの中で、しかも操作性が厳しい。十字キーがないので、左右に倒れるズームレバーでカーソルを上下に動かしながらシャッターボタンで決定する、という仕方ないけど気持ち悪い操作。
 今回はもうオートに任せてますが、さすがのニコン、露出もホワイトバランスもほとんど問題なく決まります。90年代だと頼りないカメラもあったんですが、さすがはニコンか。

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 これは電源入れたときの50mmで。
 さすがに画素数低いと、木の葉なんかは曖昧な感じになりますね。まあしょうがない。

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 猫との遭遇で、テレ端。実焦点距離17.4mmで、絞りも入ってF9.9、130万画素じゃ、猫の全身くらいの距離でもうパンフォーカスになってます。

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 マクロはテレ端で20cm、ワイド端で8cmまで寄れるとのことで、テレ端のほうが倍率は大きい。
 スイバルの自由なアングル取りは、マクロが強いレンズがあると非常に扱いやすくなりますね。

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 小さなオシロイバナを、覗き込むように撮る。うつむき加減に開く花だから、下から見上げるように覗き込む、つまりスイバルならではのポジションで撮れる被写体。
 しかし補色フィルターCCDってこういう色が苦手なもので、なんとか色が破綻しないようには抑えているものの、妙に解像度が低いような、ジャギーみたいなのが出てますね。こういうのもあるのか。

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 それから、意外と手ブレしづらい感じも。これ広角端で1/29秒。
 単に画素数低いから細かいブレはわからないとは思いますが、スイバルは安定した構えを取りやすい。これもウェストレベルで、腹に当てちゃうような撮り方してました。
 ウェストレベルで撮るだけならチルト液晶とかでもできますけど、腹に当てて安定させるというのは無理でしょ。スイバル強し。

まとめ

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 COOLPIX 910の出た98年後半って、高級機が130~150万画素に突入すると共に、大型のハイエンド機もぼちぼち出はじめてました。
 オリンパスC-1400XL、ソニーDSC-D700、キヤノンPowerShot Pro70、フジフイルムFinePix 600Zとか。
 FinePix 600ZとC-1400XLは持ってたことあるんですが、COOLPIX 910はセンサーが1/2.7型と小さい分だけ、ちょっと画質で落ちるように思います。C-1400XLは2/3型、FinePix 600Zは1/2型です。
 98年末でこの画質だと、トップ級には及ばないけど、レンズの良さと、露出・WBが安定してるから、次点グループの上位くらいじゃないかな。
 スイバルならではの使いやすさに、マクロ性能が高いことを加えた総合的な良さだったら食らいつける、って感じでしょうか。

 COOLPIX 900はまだ「ニコンがはじめてまともに作ったデジカメ」ということで注目されてたみたいなんですが、910の方はどうも、かなり売れ行き悪かった機種らしいんですよね。
 900の詰めが甘かった部分(ストロボモード記憶しないとか、露出補正が1EV単位とか、オートパワーオフが30秒固定とかつまらないアラが多々あり)をブラッシュアップしてはいるんですが、「最初からこれで出せや」と思われたでしょうね……。
 半年後に出た後継モデルCOOLPIX 950が、ブラックの金属ボディで全体的に引き締まり、スイバルの機能性そのままに200万画素になり、と、こっちのほうが好意的に受け入れられてた印象ですね。


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