イランで凡人の私がサインを頼まれた話
イランから日本に帰国して、もうすぐ9年になろうとしています。
今日は、約10年間住んでいたイランでの出来事の中から、スターでも何でもない凡人の私が「サイン」を頼まれた時の話です。
イランの首都テヘランには、外国人が数多く住んでいました。
私のようにイラン人と結婚している人もいれば、企業の駐在員として来ている人達や語学のために来ている人などもいました。
さて、首都では珍しくない外国人も、ちょっと地方に出るとたちまち珍しい存在となるのは、たぶんどこの国でも同じなのではないでしょうか。
イスファハン(イランの古都で何度でも行きたい場所)やシーラーズ(ペルセポリスなどの世界遺産がある観光地)を旦那と一緒に旅行していた時、イラン人の女性から「すみません」と声をかけられました。
彼女はちょっと恥ずかしそうに、「すみません、私の娘と一緒に写真に写ってもらえませんか?」と言います。
あぁ、ここでは日本人は珍しいんだろうなぁと思い、快く引き受けることに。写真を一緒に撮った女の子は、今度は私に紙とペンを渡してきます。
「あなたの名前を書いてください!」
にこにこして、ただの旅行者の私にサインを求めてくる女の子。
「ええっと、、、。じゃあ、漢字で名前書きますね」
そう言って、私は紙に自分のフルネームを書きました。
「メルスィ!(مرسى)」(ありがとう)といって嬉しそうに微笑む女の子とお母さん。
何だか、ちょっぴり気恥ずかしい気分になったけれど、喜んでもらえて良かったです。
こんなふうな出来事は、首都以外の場所では何度かありました。
ところが、ある日テヘランの公園に行った時のこと、その公園にはどこかの小学校の女の子たちが遠足に来ていました。
そして、私を見つけると数人の小学生が何人か駆け寄ってきて「すみません!サインしてください!」と言うのです!
え?ここテヘランだよ?
外国人(日本人)は珍しくないはずなんだけど、、、。
でも、子どもたちは目をキラキラさせて「お願い!サインして!」と言ってきます。
私は、渡された紙に自分のフルネームを書きましたが、とにかくスターでも何でもないのに、「外人」と言うだけでサインを欲しがる子どもたちを見ていて、自分の中学生時代を思い出しました。
ずいぶん大昔の話ですが、私が中学生の時に修学旅行で鎌倉の大仏を観に行った時のこと。日本に旅行に来ていたスラリとしたスタイルの良い外国人女性を見た私は、「すみません!写真一緒に撮ってもらってもいいですか?」と言ったものです。
あの時の私も、今のこの女の子達と全く同じだったんだなぁと懐かしくなりました。
「自分たちと違う」というのは憧れにもなるし、その逆にもなり得ます。
あの時、私が書いた名前のサインは今頃はもうどこにもないかも知れないし、もしかしたら奇跡的に残されているのか、それは分かりません。
でも、思い出は私の頭の中に残されていて、それが今日のようにふと頭に浮かんできます。
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