2024.10.19
遠く遠くへ行きたい。海の目の前を、海の上を走っている電車に乗りたい。江ノ電の魅力、あまり分からないけど北海道に行った時小樽に向かう途中の電車で見た海はとても綺麗だった。
願うとそれらは叶わない。何も思っていないくらいがちょうどいい。何もいらないと思いこむことを通り過ぎて、何にも興味を示さなくなる。それでいいと思う。電車に乗ること。新幹線は好きだけど、私の中ではまだ少し特別な存在なので乗るとウキウキしてしまう。電車に乗ったこと、京急線の始発に乗ったこと。海の近くと言えど海は全く見えない場所からわたしは街へと向かっていく。いつまでも薄暗い街に行く。海へと下っていく。横須賀まで行かずとも、まだ明け方みたいな気持ちで海へと歩いていく。さむくて、本当に耐えられなくて、だけどなぜかあの日々を乗り越えて今ここで生き延びている。バスを待った日。
横須賀という街。それは私の中で、あんまり良い思い出があったわけではない。地元ではない。記憶の中で飛び飛びになっている場所たち。公園も、ホテルも、喫茶店も、もうぼやけて見えないけれど、良い思い出とかなかったけど、良いところだなと思った。
そしていつか私は溺れていく。記憶の中の私はいつでも見失っている。波が来る度どこだか分からなくなる。海の底に縛り付けられている。その時私は夜の海にいる。どこかに誰かがいると思いながら誰も見つからない夜を過ごしている。そして目を覚まし、重い何かが私の布団みたいに覆いかぶさって二度ともう起きれない。指先を見ている。シーツの糸を見ている。時計が見えている。心臓が破れそうなくらい痛くて、太陽が昇り沈むのを見ている。やがて私は立ち上がり、また地獄へと戻っていき、そしてなおこの世に生きている。流れる景色を見ていく。人生の辻褄合わせをしている。