見出し画像

【歌詞】『螢の光 窓の雪』/再会の喜びか別れの励ましか

 卒業式の季節になると聞こえてくるのが『蛍の光』でございますね。毎年のように思いますに、これって、子どもたちに事実を知らせないまま歌わせておいて良いものなのでございましょうかね・・・
 原曲は何ら問題のないスコットランドの古い民謡で、現在の形 ”Auld Land Syne”(久しき昔)に採譜、作詞したのはスコットランドの詩人ロバートバーンズ(Robert Burns, 1759-1796)と云われております。<Brtitannica>
 原曲の歌詞は、次の通り。
 (スコットランド語:<Britannica> 和訳:高安城 征理)
 
”Auld Land Syne”(久しき昔)/Original Scots version
 Should auld acquaintance be forgot,
 and never brought to mind?
 Should auld acquaintance be forgot,
 and auld lang syne?
  古き友は忘れられ、
  決して思い起こされないのであろうか
  古き友は忘れられ、
  そして、久しき昔も
(Chorus)
 For auld lang syne, my jo,
 for auld lang syne,
 we'll tak' a cup o' kindness yet,
 for auld lang syne.
(Chous)
  友よ、久しき昔のために
  久しき昔のために
  私たちは懇意の一杯を交わすでしょう
  久しき昔のために
 And surely ye'll be your pint-stoup!
 and surely I'll be mine!
 And we'll tak' a cup o' kindness yet,
 for auld lang syne.
  そして、必ずやあなたはあなたのパイントカップを買い、
     ※パイントカップ(pint cup),1 gallon= 4quarts, 1 quart=2 pints,       1pint=0.568ℓ=568cc
  必ずやわたしはわたしのものを買うでしょう
  そして、私たちは懇意の一杯を交わすでしょう
  久しき昔のために
(Chorus)
 We twa hae run about the braes,
 and pou'd the gowans fine;
 But we've wander'd mony a weary fit,
 sin' auld lang syne.
  私たち二人は斜面を駆け回り、
  綺麗なひなぎくを摘んだ
  しかし、私たちは疲れ果てた足で彷徨った
  久しき昔から
(Chorus)
 We twa hae paidl'd in the burn,
 frae morning sun till dine;
 But seas between us braid hae roar'd
 sin' auld lang syne.
  私たち二人は小川で舟を漕いだ
  朝から夕食時まで
  しかし、私たちの間の海は高なっていた
  久しき昔から
(Chorus)
 And there's a hand, my trusty fiere!
 and gie's a hand o' thine!
 And we'll tak' a right gude-willie waught,
 for auld lang syne.
  そして、ここに信頼できる友の手がある
  だから、その手を貸してほしい
  そして、私たちは心からの善意の一杯を交わすでしょう
  久しき昔のために
(Chorus)
 
 この曲、日本では、明治14年(1881年)『小學唱歌集初編』第二十「螢」として発表されました。
 原曲が友との<再会>を祝福する歌なのに対して、日本では、友との<別れ>に際して今後を励ます歌になっております。
 今日の『蛍の光』には、大東亜戦争の敗戦後、連合国占領軍の判断により半分削除されたところがございます。もはや現代、占領軍に従う必要はなく、日本人自らが歴史上の事実(時代の反映)として知った上で、歌詞をいかに扱うか「自律」した判断をすべきなのでございますよ。
 では、削除された歌詞とは、いかなるものなのか。
 
 『螢』
 
明治14年(1881年)
 作詞:稲垣 千穎(いながき ちかい 1845-1913)
 原曲:スコットランド民謡
 
  一 ほたるのひかり。まどのゆき。
   書(ふみ)よむつき日。かさねつゝ。
   いつしか年も。すぎのとを。
   あけてぞけさは。わかれゆく。

 二 とまるもゆくも。かぎりとて。
   かたみにおもふちよろづの。
   こゝろのはしを。ひとことに。
   さきくとばかり。うたふなり。

 三 つくしのきはみ。みちのおく。
   うみやまとほく。へだつとも。
   そのまごころは。へだてなく。
   ひとつにつくせ。くにのため。

 四 千島(ちしま)のおくも。おきなはも。
   やしまのうちの。まもりなり。
   いたらんくにに。いさをしく。
   つとめよわがせ。つつがなく。

 ※出典<Wikisourse>、但し旧仮名は現代仮名に直されている
  明治政府によって領土部分の改変された歌詞も幾つか存在する

 歌詞を漢字に直してみます。
 螢の光 窓の雪
 書読む月日 重ねつつ
 何時しか年も すぎの戸を
 開けてぞ今朝は 別れ行く
 
 止まるも行くも 限りとて
 互に思ふ 千万の
 心の端を 一言に
 幸くと許り 歌ふなり
 
 筑紫の極み 陸の奥
 海山遠く 隔つとも
 その真心は 隔て無く
 一つに尽くせ 国の為
 
 千島の奥も 沖繩も
 八洲の内の 護りなり
 至らん国に 勲しく
 努めよ我が兄 恙無く
 
 歌詞を現代口語で拾い上げます。
 蛍の光で 窓の雪明かりで
 書物を読む日々を 重ねて
 いつの間にか年が 過ぎた(何年も開け閉めした)戸を
  ※「すぎの戸」を「杉の戸」に掛けているという説あり
 今朝は開けて 別れてゆく
 
 故郷に残る者も去る者も 今日限りなので
 互いに思う 無数の
 思いを 一言で
 幸あれと歌う

 九州の果ても 陸の奥(東北)も
 海や山で遠く隔てられても
 真心は隔てられることはなく
 ひたすら尽くせ 国のため
 
 千島列島の奥先も 沖縄も
 日本の国内の護り
 護り至らぬ国に 勇ましく
 尽力せよ我が兄弟 ご無事で


いいなと思ったら応援しよう!