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【随想】目標:技術資源国/日本国の在り方考えれば

 かつて日本は「技術立国」と称しておりました。
 「科学技術を基盤に、国の存立と発展を目標とする政策が、技術立国」「高い科学技術を維持、発展させて、人類の福祉に貢献」「科学技術のフロンティアを開拓し、それを世界に発信する技術立国こそ、我が国が歩むべき道」<一般社団法人日本機械学会『機械工学事典』>
 とされておりました。
 今や、その意味を広げ、「技術資源国」を目指し、基礎的な技術を育てることが、この国の在り様(よう)に相応しいと考えております。
 「ものを作る」、都市を造る、建物、橋を造る、トンネルを掘る、ロケットを造る、鉄道を敷く、家具を作る、道具を作る、ねじを作る、ばねを作る、大きなものから小さなものまで、更に、米を作る、野菜を作る、和洋服を作るに至るまで、衣食住全てに亙って「ものを作る」ことは、金持ち貧乏人の区別なく、人を豊かに幸せにする社会基盤となるものでございます。
 日本には、何でもある(どのような技術もある、技術資源が沢山ある)、世界中に輸出して応用できる技術を蓄えている、という国になることは、「豊か」になるということでもございます。

 何故この国にとって技術が大切か、技術を育てることが重要か、その答として実例を一つ挙げることにいたします。
 エネルギー源として石油が欠かせませぬ。日本を含め産油国でない国は、昔からエネルギー源の確保に苦労して参りました。
 その一つ、石炭を液化して石油のように使おうとする考えは、第二次世界大戦前からあったようでドイツがその技術を開発していました。日本でも昭和12年(1937年)、石油輸入量400万キロリットルの半分を石炭液化で供給する計画が立てられました。<詳細不明、大学時代の講義ノートから>
 現在でも細々と技術開発は進められているようですけれども、石炭を液化する工程で大量の二酸化炭素を排出することが、未だに懸案として残っているようで主流にならないのでございましょう。<J-Stage「石炭液化技術における材料の現状と将来」>
 日本は天然資源に乏しいとずっと昔から云われております。確かに、ヨウ素とか石灰石(※)とか除けば、主要な天然資源の多くは輸入に頼っておりますね。
  ※ヨウ素 レントゲンの造影剤、液晶パネルの偏光フィルムで使用
   国内生産量10,050トン(2019年)<(株)東邦アーステックのホームページ>で輸出国
  ※石灰石 セメントの原料で使用
   国内生産量118,946千トン(2023年)<石灰石鉱業協会資料>で100%自給国
 
 しかし、今や、電子機器の廃製品、部品から金属資源を回収し、再生利用する時代になりました。技術の進歩したお蔭で、日本には再生すれば利用できる金属資源(金Au、銀Ag、銅Cuなど)が沢山あるのでございます。

図_国内にある再生可能な金属
<国立研究開発法人 物質材料研究機構 作成>
※クリックで拡大

  もうお分かりでございましょう。日本には天然資源が少ないと嘆く必要などないのでございますよ。技術は新たなる展望を切り開くのでございます。

 日本の風土、日本人の特性が最も生かせるいろいろな技術の存在する国「技術資源国」を目指すことで、世界に貢献しながら人々に職場を提供し、その技術の恩恵を受けて末端の個人にまで及ぶ豊かな国になれるのでございます。お得意の掛け声だけでなく、忘れてならぬことは、高品質の技術を支えるのは、飽く迄も個人(質)でございます、言い換えれば、もっと技術者に、労働者に投資せよということでございますよ。 <了>


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