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【随想】介護の現場は苦しい/消費税は何のため?
社会福祉法人に勤めている方がいらしゃいます。
身体障害者の施設には、直前まで何の病気もせずに普通の生活をしていたのに、熱中症で倒れ発見されるのが遅くて脳梗塞となり、脳の一部分が壊死してしまって、40代で寝たきりになってしまった人、赤ちゃんの二人目を産んだときに脳出血を起こして、右半身が使えなくなって車椅子に乗り左手だけで子育てをしなければならない30代の人、脳性まひで話せない動けない・・・母親が亡くなった後父親が一人で面倒を見ている10代の人、車の事故による全身打撲で生死を彷徨った挙句、目が見えなくなった50代の人・・・何か悪いことをなさった訳でもないのに、思わぬ不幸を背負ってしまわれた方々がたくさんいらっしゃいます。
そして、こういう方々を毎日毎日助けていらっしゃる方々がほんの少ししかいらっしゃらない。
介護の現場は、その性質上精神的にも肉体的にも過酷なものがございます。にもかかわらず、その職場では働く方々の環境、待遇は大きく変わらず、成り手は少なく働き手が去って行くというというのが実状でございます。
益してや、ご家族ご家庭でされていらっしゃる方々のご苦労は並大抵のことではなく、家族は去ることもできませぬ。
「弱者救済」は国家の概念。もっともっと行政が踏み込んで、公営施設を造るとか介護の方々の待遇、環境を改善するとかの対策が必須であるにもかかわらず、ほんの一部の民間の善意に丸投げされて、厳しい現実が続いております。
社会保障を掲げて、平成元年(1989年)付加価値税(原料の調達から製造、販売、顧客サービスに到るまで全流通に於いて製品に価値が付加された所で課税されるもの)として3%の消費税が導入されました。
この消費税は、
平成 9年(1997年)には 5%に増税
平成26年(2014年)には 8%に増税
令和元年(2019年)には10%に増税されています。
果たして、この税収は本当に社会保障のためになっているのでございましょうか。
消費税が導入されたのが平成元年(1989年)、消費税収入の使途が明確化されたのが平成24年(2012年)8月「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する法律」から、そして、かの有名な驚きの発言が令和元年(2019年)にございました。
「8%への引き上げ時の反省の上に経済運営に万全を期してまいります。増税分の5分の4を借金返しに充てていた消費税の使い道を見直し、2兆円規模を教育無償かなどに振り向け子育て世代に還元いたします。」
<令和元年(2019年)1月28日、安倍晋三内閣総理大臣施政方針演説>
消費税は、内閣総理大臣が堂々と本来の使い方をされてないと明言されているのでございますよ。
消費税について財務省はどのように説明しているのか。お役所は、財源の転用が多く使途の分かり難いところが恒常化してございますね。<財務省 令和5年度特別会計ハンドブック>
財務省のホームページから「消費税の使途に関する資料」をいくつか拾ってみることにいたします。
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※以下、図はクリックで拡大
上図に拠れば、消費税は社会保障の四つの分野(年金、医療、介護、少子化)に回されているということになります。では、その社会保障費は特別会計にいくら計上されているのでございましょうか。
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上図に拠れば、社会保障費は47.0兆円(令和6年度予算)とかなりの巨額で、それを担うとされる消費税収入は30.2兆円、不足分は一般会計から補填されるということでございます。
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上表、消費税の使途を拝見しますと、四つの分野で毎年少しずつ増額されているようでございます。
ただ、注記されているように、これらの金額には諸経費が含まれて全額が所謂現場に回っている訳ではございませぬ。また、これらの数値がどれほど正確なものなのか、国会の答弁で分かる通り官僚の説明には政府への忖度が含まれており、どこまで信頼性があるのか分かりませぬ。
いくら予算が組んであるとしても、複雑な行政(役所が別々)の下でその効果が見出だせていないのがすでに述べた現実でございます。
そもそも消費税なるものが財源として信頼できるものなのでございましょうか。税金は市場に出回る資金を回収して経済市場を縮小させるものでございますよ。税収より国債の発行のほうが財源としては明解ではございませぬか。
国の財政に関しては、法律で国債の発行を禁止されておりますが、公共事業には例外として建設国債が発行されます。
「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。 但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
前項但書の規定により公債を発行し又は借入金をなす場合においては、その償還の計画を国会に提出しなければならない。
第一項に規定する公共事業費の範囲については、毎会計年度、国会の議決を経なければならない。」<財政法(昭和二十二年法律第三十四号)第四条>
法律を作れば良いのでございます(政治家は立法が仕事)。
「社会保障」の専門の役所を作る
財源も新たに法律を作って「社会保障国債」を発行して必要な資金を作り、運用をきちんと国会に報告する体制にする
とするのは如何でございましょうかねえ。 <了>