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より良い経営のための道標になれるように

不撓不屈ー図書館シリーズno.1ー「経営コンサルタント編」


伊藤 裕之(いとう・ひろゆき)
長年の製造業での経験と、経営大学院で学んできたことを活かし、株式会社ダブル・ディベロップメントを設立。製造業の中小企業を主な対象とした、経営支援・実務支援・技術支援だけでなく、自社で企画検討・設計検討を行い、ロボット開発も進めている。大手機械メーカーに長年勤務し、技術部で新製品企画、製品開発をしてきた経験を活かし。構想、アイデアを具現化していくことを得意としている。異なる市場、多種多様な製品を扱い、中国での勤務経験もあり、マネジメント、財務の側面でもサポート。日本における製造業の発展に寄与し、社会に貢献することを意識し、中小企業の困りごとの解決方法を、一緒に考え、伴走するコンサルティングを実施中。

■経歴
1959年生まれ。
1981年       筑波大学第三学群基礎工学類 卒業
1981~2020年  大手機械部品メーカー勤務。
            主に自動車向け変速機、ステアリングユニット
            設計、製品開発、企画、マネジメントに従事。
            中国法人にて3年間勤務。
2021年       法政大学経営大学院 卒業MBA
           (経営管理修士)中小企業診断士、
            日商簿記2級、ITコーディネータの資格取得、
            株式会社ダブル・ディベロップメント設立


中小企業診断士としての挑戦と成長

中小企業診断士としての背景と目的

 私は製造業で長く働いた経験を活かして、中小企業の製造業に貢献したいと考え、中小企業診断士になりました。資格を取得するには大きな決断と努力が必要でした。私の場合、資格取得までに4年かかりました。最初の2年は勉強しながら試験に挑みましたが、一発では合格せず、3年目に一次試験に合格。その後、二次試験を受けずに経営大学院に進み、1年後に資格を取得しました。この間、58歳で勉強を始め、62歳で資格を取得しました。資格取得後、独立して会社を立ち上げ、現在も運営しています。自分の知識と経験を活かして、多くの中小企業に貢献できることに喜びを感じています。

初年度の試行錯誤とその後の成長

 中小企業診断士としての1年目は、新人としてのスタートでした。過去の企業での実績があっても新しい役割には多くを学ぶ必要がありました。元サラリーマンとし て中小企業の社長の大変さを理解しているつもりでしたが、実際にその立場に立ってみると、数字だけでなく社長の視点で真剣に考えることが求められました。2年目からは社長やその企業の管理職とのコミュニケーションを深め、時には雑談を交えながら信頼関係を築くことに重点を置きました。製造業での経験が、こうした話題に対応する強みとなり、工場見学に誘われることも増えました。3年目、4年目には一部の仕事が軌道に乗り始めましたが、全てがうまくいっているわけではありません。特に困難な状況にある企業への支援は、コンサルタントとしての活動とは少し異なり、半分営業のような活動も含まれます。

コンサルタントとしての挑戦と信頼関係構築の重要性

クライアントとの信頼構築と対応方法

 コンサルタントとして活動を始める際、これまでの会社員としての経験が大いに役立つと感じています。企業に属している間に培った空気作りや話題の豊富さは、顧客とのコミュニケーションにも活かせる能力です。会社員時代には企業の看板が助けになっていましたが、コンサルタントとしての活動では、それがないため、自分の知識と経験、人間性で勝負しなければなりません。特に中小企業の経営者は、自分が作り上げてきた会社に対して強い愛着と信念を持っています。そのため、アドバイスをする際には慎重さが求められます。

クライアントとの関係と対応

 私のコンサルタント業務では、固定のクライアントはおらず、リピートの依頼や新規顧客が中心となっています。例えば、補助金申請の手続きなどで継続的なサポートを依頼されることがありますが、長期間のコンサルティング契約は少なく、一番長いもので1年ほどのプロジェクトがほとんどです。多くのクライアントは短期的な支援を求めており、その都度具体的な課題を解決するために私を招いています。
 コンサルタントにとって最も重要なのは、クライアントの話をよく聞くことです。特に製造業の企業を訪問した際には、経営者や管理職、従業員の話に耳を傾けることで、彼らの問題や悩みを理解し、適切なアドバイスを提供することが求められます。この「話を聞く」能力が信頼関係を築く基盤となります。
 訪問の際には、現場の詳細な視察も欠かせません。工場内を見て回り、作業の流れや従業員の働き方を観察することで、表面的なデータだけではわからない問題点を見つけることができます。例えば、生産ラインのボトルネックとなっている部分や、安全対策が不十分な箇所など、現場ならではの課題を発見することができます。ただ、見る時間は少なく、その中で結果を求められ、プレッシャーがかかります。
 さらに、クライアントとの対話を重ねる中で、彼らの抱える課題の本質を見極めることが重要です。経営者が直面している問題は多岐にわたり、単なる資金繰りや売上の低下だけでなく、人材不足や労働環境の改善、さらには市場の変化に対応するための戦略的な転換などが含まれます。これらの課題を総合的に理解し、具体的な解決策を提案するためには、深い対話と信頼関係が不可欠です。
 また、一度解決した問題が再発しないようにするためのフォローアップも重要です。例えば、補助金申請の手続きが完了した後も、その資金がどのように活用されているかを定期的に確認し、必要に応じて追加のアドバイスを行います。このような継続的なサポートが、クライアントの長期的な成長に繋がると考えています。
 私自身の経験からも、クライアントの声をしっかりと聞くことで、より深い理解と的確なサポートが提供できることを実感しています。例えば、ある中小企業の経営者が新しい市場に進出したいと考えている場合、その背景や具体的な課題を詳しく聞くことで、現実的で効果的な戦略を提案することができます。経営者が抱える夢やビジョンを共有し、それを実現するための具体的なステップを一緒に考えることで、信頼関係が深まり、より良い結果を生み出すことができるのです。
 このように、コンサルタントとしての成功は、単に知識や技術だけでなく、クライアントとのコミュニケーション能力や信頼関係の構築に大きく依存しています。クライアントの話をよく聞き、そのニーズに応じた適切なアドバイスを提供することが、コンサルタントとしての本質的な役割であり、それが長期的な信頼と成功に繋がるのです。

信頼関係の構築と挑戦の提案

 クライアントから見れば、私たちが「使い勝手が良い」と感じられることも大事です。頻繁に訪問することで、クライアントが遠慮なく相談できる環境を作ることができます。面倒くさがらずに対応することで、信頼関係が築けると考えています。ただし、手のかかるクライアントの場合は、コンサルタント側も対応が難しくなることがあります。クライアントとの関係は、双方の努力と理解が求められます。
 クライアントに対しても、挑戦の重要性を伝えることは重要です。しかし、挑戦を勧める際には、社長の意向や会社の財務状況など現状を尊重しながらアドバイスする必要があります。特に創業者は自分のやり方に固執する傾向があるため、アプローチには注意が必要です。新規開拓の提案は優先順位として高めですが、無理に挑戦を押し付けることは避け、まずは現実的なアドバイスを心掛けます。2代目、3代目の社長の場合、新しい取り組みを行いたいという意向が強いことが多いため、そこに新しい視点を提供することが求められます。

雑談の重要性とコミュニケーションの工夫

 3年目に入ると、初対面時には、単に景況や業務の話をするだけではなく、訪問の導入部分で雑談を交えることの重要性を感じました。例えば、「この周辺は住宅が増えていますね」とか「昔はこの辺りは畑だったのですか」といった話をすると、相手もリラックスしやすくなり、会話がスムーズに進むようになります。1年目の頃は、こうした雑談の重要性に気づかず、すぐに本題に入ってしまうことが多かったのですが、2年目以降は意識的に雑談を取り入れるようにしました。
 このアプローチの変更により、クライアントもリラックスして話してくれるようになり、より深い信頼関係を築くことができるようになりました。継続的な成長と柔軟な対応を心がけることで、最初の頃はなかなかうまくいかなかった部分も、経験を積むことで改善されていきました。特に、初対面のクライアントに対してもリラックスした雰囲気を作ることで、円滑にコミュニケーションを取ることができるようになったのは、大きな成長と感じています。これからも、さらにクライアントとの信頼関係を深め、効果的なコンサルティングを提供できるよう努めていきたいと思います。
製造業に特化したコンサルティング
 

業界に特化する

 製造業には他の業界とは異なる特有の問題があります。これらの分野では、技術的な知識や経験が求められる場面が多く、私はその点において自信を持っています。例えば、製造業では生産ラインの効率化や品質管理、コスト削減となります。こうした問題に対して、私は実際の現場で培った知識と経験を基に具体的なアドバイスや改善策を提供することができます。
 一方で、飲食業などの異なる業界では別の知識が必要であるため、自信がありません。たとえば、飲食業ではメニューの考案や接客のアドバイスが求められますが、これは私の専門外です。飲食業における顧客満足度向上のための具体的な方法や、食品衛生管理に関する知識が不足しているため、これらの分野でのコンサルティングは難しいと感じています。
 製造業の経営者には個性が強い方が多く、直接の対話が必要になることが多いです。例えば、ある経営者はZoomでの会議を拒否し、直接の訪問を求めました。また、80歳を超える経営者はメールを使わず、電話とFAXだけで連絡を取り合います。その場合はメールのやり取りができないので、些細な要件でも電話で日程を決め、訪問し打合せを行いました。どのようなコミュニケーション手段を好むかを理解し、それに応じて対応することで、信頼関係を築くことができます。
 製造業の他にも、商店や創業者など多様なクライアントと接する機会があります。例えば、小規模な商店では在庫管理や販売促進の方法に関するアドバイスが求められます。一方、創業者はビジネスプランの策定や資金調達の方法について助言を必要とすることが多いです。それぞれの業界や企業に応じたアプローチが求められますが、基本的なスタンスとしては、まず相手の話をよく聞き、理解することから始めるのが重要です。クライアントの話をじっくりと聞くことで、彼らが抱える課題やニーズを的確に把握することができます。
 クライアントのニーズに応じた適切なアドバイスを提供することが、コンサルタントの役割です。例えば、製造業のクライアントに対しては、効率的な生産管理の仕組みや、品質向上のための具体的な方法を提案することができます。建築業のクライアントに対しては、プロジェクトのスケジュール管理やコスト削減策について具体的なアドバイスを行います。また、商店の経営者には、効果的なマーケティング戦略や顧客管理方法を提案することができます。創業者に対しては、ビジネスプランの策定や資金調達の方法について、具体的なステップを示しながらアドバイスを行います。
 このように、クライアントの多様なニーズに応じた対応を心掛けることで、信頼関係を築き、彼らの経営を支援することができます。製造業やその他の業界において、私の知識と経験を最大限に活かし、具体的な課題解決を目指していきたいと考えています。

リーマン・ショックとその影響

 リーマン・ショックが起きた2008年から2009年にかけて、多くの企業が顧客を固定しすぎていたことに気付きました。この時期が一つのターニングポイントとなり、ある企業は自動車産業一辺倒から他の業界への多角化を図る必要性を痛感しました。この教訓を活かし、多くの企業が経営戦略を見直し、多様な顧客を持つことでリスクヘッジを行うようになりました。
 家電業界もこの時期に大きな変動を迎え、特に2000年代から2010年頃までの間に白物家電の需要が激減し、日本の半導体産業も厳しい状況に直面しました。これにより、業界全体が再編成され、現在日本で残っているのは、東芝のメモリ事業をはじめとする一部の企業のみとなっています。このような背景から、企業は単一市場への依存から脱却し、多角化を進めることが生き残りの鍵となりました。

製造業の現状と課題

 製造業は外部環境、特に世界経済や流通の影響を大きく受けやすい産業です。特にコロナ禍以降、部品の調達が難しくなり、製造が滞る問題が頻繁に発生しています。円安の為替変動も大きく影響します。このような状況で経営を立て直すのは非常に困難です。さらに、人材の問題も大きな課題です。求人を出しても応募者が集まらず、生産が追いつかない企業が多いのが現実です。
 特に若い人材が製造業に魅力を感じない現実があります。製造業は労働環境が厳しく、機械油や汚れの多い職場環境が敬遠されがちで、IT関連の仕事に魅力を感じる若者が増えているため、製造業の人気は低下しています。このため、シニア人材を活用する提案も行っていますが、これもなかなか実現しにくい状況です。60代のシニア層でも、製造業への再就職を望む人は少ないのです。
 このような課題に対して、企業は新しい戦略を取り入れる必要があります。例えば、労働環境の改善や、若い人材に魅力を感じてもらえるような職場作りが重要です。また、シニア人材の活用に関しても、再雇用プログラムの充実や、適切な再教育の提供が必要です。さらに、多様な顧客を持つことでリスクヘッジを行い、経営の安定化を図ることが求められます。
 今後、製造業が持続的に成長していくためには、柔軟な経営戦略と労働環境の改善が不可欠です。中小企業診断士として、企業の現状を把握し、適切なアドバイスと支援を提供することで、製造業の再生と発展に貢献していきたいと考えています。

信頼と新たな仕事の機会

 製造業の現場での経験が豊富なことは、クライアントにとって大きな安心感を与えます。他のコンサルタントが現場に詳しくない中で、私の知識と経験が評価され、信頼を得ることができました。現在、産業振興センターから委託されている仕事も、私の現場知識が買われた結果です。これにより、新しい仕事の機会も増え、さらなる成長と信頼構築の循環が生まれています。
 信頼は一朝一夕で築けるものではありません。長期的な関係を築くためには、日々の仕事に真摯に取り組むことが重要です。クライアントの話に耳を傾け、適切なアドバイスを提供することで、徐々に信頼関係が深まります。こうして得られた信頼が、新たな仕事や機会をもたらし、さらなる成長へと繋がるのです。このように、1年目から3年目にかけての試行錯誤と学びを通じて、私は中小企業診断士としてのスキルを磨き、信頼を築いてきました。これからも、クライアントの信頼に応え、さらに多くの企業の支援を行っていきたいと考えています

経営危機からV字回復へ、成功企業の特徴と支援の課題

経営危機に直面した企業の支援

 今、私が関わっているコンサルタント業務の一つは、まさに経営危機に直面している企業の支援です。その企業は赤字続きで債務超過になっており、通常であれば銀行が融資を拒むところです。しかし、コロナ禍でのゼロゼロ融資(無利子無担保融資)の制度を利用して、銀行が資金を提供していました。これはニュースや記事でよく目にする事態が、現実に起きていることを実感させられます。
 問題は、返済の見通しが立たない企業が融資を受けてしまったことです。当時の社長が病弱だったため、銀行側が融資を決定したのかもしれません。現在、その社長は退任し別の人に交代していますが、結果的に借金が増え、返済の段階で問題が顕在化しています。
 ゼロゼロ融資が返済時期に入り、実際に返せなくなる企業が増えているのです。これは当時、銀行のノルマのようになっていた面もあり、国からの強い指示があったことが背景にあります。中小企業救済のために、本当に困っている企業が融資を受けるべきでしたが、実際には困っていない企業にも融資を行ったケースが多くありました。

実際の企業の状況と対策

 企業の現状は非常に多様であり、その対応策も一様ではありません。例えば、ある企業は業績が好調で、1000万円の融資を受けたものの、その資金を使うことなく、昨年返済を完了させました。このような企業にとっては、資金繰りの問題はなく、特段の問題も発生していません。しかし、このようなケースは稀であり、実際には多くの企業が資金繰りに苦しんでいます。
 本当に資金繰りに困っている企業こそが融資を受けるべきですが、現実には資金に余裕のある企業にまで融資が行われている状況があります。例えば、金融機関の営業ノルマや、政府の政策による一律の融資制度などが背景にあります。これにより、本来ならば資金支援が必要な企業が、適切なタイミングで融資を受けられないという問題が生じています。こうした不均衡が生じることで、経営危機に直面している企業がさらに追い詰められることになります。

V字回復を遂げる企業の特徴

 中小企業の中でも、V字回復を遂げる企業や、調子がぐっと伸びてくる企業も存在します。例えば、先日訪問した中小企業はその一例でした。工場内は4S(整理、整頓、清掃、清潔)が徹底されており、極めてきれいになっていました。従業員に活気があり、新しい機械も導入されて多くの機械が稼働していました。品質の高さが伺えました。業績は増収増益が続いており、経営者が長い時間をかけて、努力してきたことがみてとれました。
 昨年の中頃から今年にかけて、中小製造業の景気は業界によって異なりますが、全体的にはやや低迷している印象があります。しかし、その中でもうまく回復している企業も存在します。
 製造業の20社を訪問すると、業績が良いと感じるのは5、6社程度で、横ばいの企業も同じくらいの数です。つまり、業績が悪いと答える企業は約半数にのぼります。この印象はあくまで私の感覚ですが、電気、機械、金属、ゴム、樹脂、食品などさまざまな製造業にわたります。
 昨年の3月決算では、自動車メーカーが史上最高益を出したと報道されていましたが、中小企業の実態はそれほど良くないという感じです。全体的な見通しもあまり良くないのが現状です。

コンサルティングの現場での課題発見と実効性のある提案

 実際のコンサルティングの現場では、限られた時間で現場を視察し、課題を発見することが求められます。例えば、現場が外国人労働者で埋め尽くされている場合や、作業環境が悪い場合など、訪問前の予想とは異なる現実に直面することもあります。外国人労働者が多い現場では、言語の壁や文化の違いによるコミュニケーションの問題が生じやすく、適切な指示が伝わらなかったり、誤解が生じたりするリスクがあります。また、作業環境が悪い場合には、労働者の安全や健康に直結する問題が発生しやすく、生産性の低下や労働災害の発生リスクが高まります。
 こうした状況でも、全体像を把握し、企業にとって有益な提案を行うことが重要です。コンサルタントとして実効性のある提案を行うためには、まず現場の詳細な状況を理解し、どの課題が最も優先されるべきかを見極めることが不可欠です。例えば、作業環境の改善が急務である場合には、安全対策や労働条件の見直しを提案することが重要です。一方で、コミュニケーションの改善が必要である場合には、外国人労働者に対する教育プログラムの導入や、通訳の配置、コミュニケーションツールの整備などを検討することが求められます。
 コンサルティングの現場では、限られた時間の中で現場の状況を詳細に把握し、実効性のある提案を行うことが求められます。予算の制約や企業の現実に即した提案を行うためには、現場視察や経営陣とのコミュニケーションが重要です。また、短期的な対策だけでなく、長期的な成長を視野に入れた提案を行うことで、企業の持続的な成長を支援することができます。これからも、企業の実情に寄り添いながら、具体的かつ現実的な支援を提供していきたいと考えています。

経営改善の挑戦とフォローアップの重要性

 企業の経営が悪化する原因として、経営者が財務データを軽視して経営していることが挙げられます。例えば、決算書は税理士に任せて理解せず、売上と利益だけを把握している経営者もおります。また、受け身の営業活動をしている企業も問題です。今までの取引先だけに頼り、積極的に新規顧客を開拓しない企業は、売上が下がってもどうすることもできず、経営が悪化する傾向にあります。このような企業は、長期間放置されていた問題を急に解決しようとしても、すぐには成果を上げることはできません。営業努力を怠らず、継続的に新しい顧客を開拓することが重要です。経営者が最も行うべき最優先事項です。
 提案を行った後、その企業がどうなったかを確認するフォローアップも重要です。本来であれば、提案後の企業の進捗を追跡し、必要に応じてさらなる支援を行うことが理想的です。現場の改善支援がメインだったため、その後のフォローアップが行われない場合もありますが、企業の継続的な支援も重要な課題です。コンサルタントとしての提案がどのように実行され、その結果がどうなったかを追跡し、さらなる改善策を提供することが求められます。

安定する企業の共通点と成長の道のり

 企業の特徴については様々ですが、特定の主要顧客に依存している企業、例えば3社だけと取引している企業は、うまくいかなくなることが多いです。一方で、顧客を分散させている企業、例えば自動車関連でA社、航空関連でB社、医療関連でC社といったように、10社程度の顧客を抱えている企業の方が安定しています。どこかが悪くても、どこかが良いといった具合にバランスを取ることができるのです。急にV字回復する企業はあまり見かけませんが、徐々に業績を改善していく企業は多いです。継続的に努力している企業は、やはり業績が良い傾向にあります。製造業において、突然大きく業績を改善するのは難しいかもしれませんが、少しずつ改善していくことが現実的な道のりです。

企業の強みを見つけるコンサルティングの役割と現実

 コンサルティングを通じて、企業の強みを発見することも重要な役割です。時には企業自身が気づいていない強みを見つけることができます。例えば、非常に綺麗な工場環境や、従業員が生き生きと働いている環境は、その企業の大きな強みです。こうした強みを見つけ、それを活かす提案を行うことで、企業の成長を支援します。コンサルティングの仕事は、企業の課題を発見し、現実的な解決策を提供することにあります。全体像を把握し、優先順位をつけることの重要性を理解し、企業の強みを見つけ出すことで、企業の成長を支援します。
 中小企業のコンサルティングは、大企業相手のコンサルティングとは異なり、より現実的で泥臭い仕事が求められます。中小企業の経営者との人間関係を築き、現実的な提案を行うことが、コンサルタントとしての成功の鍵となります。こうした現実に基づいたアプローチが、中小企業診断士としてのやりがいを感じる部分でもあります。中小企業診断士としての経験を活かし、今後も多くの企業を支援し続けていきます。

現場力と理論を融合する中小企業診断士の真髄

中小企業診断士の役割と対応スタイル

 コンサルタントとしての役割は、業績が悪い企業や売り上げが伸び悩んでいる企業、利益が出ていない企業の現状を分析し、そのための対応策や施策を提案することです。具体的には、優先順位を決めた上で提案を行い、企業の業績が上向く兆しを見出すことが求められます。
 しかし、提案を実行するかどうかは企業次第です。例えば、関西の企業を支援した際、品質問題に焦点を当てて不良率の改善策をいくつか提案しましたが、実際にどれだけ実行されたかは不透明です。売り上げが増えたという話は聞きましたが、提案が実行された結果なのかは分かりません。
 提案した10項目のうち、2つか3つは実行されたかもしれませんが、最も重要な部分が実行されたかどうかは確認できていません。このように、コンサルタントとしての提案が実行されたかどうかを追跡することは難しいことが多いです。

中小企業診断士の現場での役割とその重要性

 中小企業診断士の役割は、企業の経営改善をサポートすることです。その一環として、顧問契約やスポット対応の依頼を受けることが多いです。例えば、金融機関からの依頼で「焦げつきを避けたいので助けてほしい」といったケースがあり、短期間で数回の訪問で終わることもあります。こうした依頼が多い理由の一つは、企業が長期的なコンサルティング契約を結ぶことが少ないからです。
 一方で、長期的な顧問契約を結んでいる診断士も存在しますが、その数は限られています。特に財務的な問題については、通常は税理士が対応しますが、税理士は具体的な改善提案をすることが少ないため、企業が自ら動ける場合は顧問コンサルタントが不要なこともあります。企業によっては、税理士や社労士と連携しつつ、中小企業診断士を活用することで、補助金申請や特定の課題解決に取り組むことが効果的です。
 企業の規模が小さい場合、特に5人から30〜40人規模の企業では、新しいことに挑戦するための人材やリソースが限られているため、中小企業診断士の支援が特に重要です。しかし、50人以上の規模の企業になると、人材も充実しており、内部でさまざまな試みを行っています。そのため、コンサルタントの必要性は低くなる傾向があります。
 本当にコンサルタントを必要とするのは、5人から20人程度の小規模企業です。こうした企業は、財政的な体力が不足しているため、コンサルタントを雇うための資金がないのが実情です。このため、保証協会や金融機関を通じた支援が重要となります。これにより、企業は負担ゼロで支援を受けることができ、経営の立て直しに向けた計画を実行することが可能です。
 実際には、財政的に困窮している企業だけでなく、計画を立て直す必要がある企業も支援を求めています。支援メニューや回数については、県や状況によって異なり、ばらつきがあります。
 中小企業診断士としての業務を通じて、企業の課題を発見し、現実的な解決策を提供することが求められます。全体像を把握し、優先順位をつけることの重要性を理解し、企業の強みを見つけ出すことで、企業の成長を支援することが可能です。診断士としての経験を活かし、多くの企業を支援し続けることが目標です。
 このように、中小企業診断士の役割は多岐にわたり、企業の規模や状況に応じた柔軟な対応が求められます。企業の成長を支援し、経営の改善を図るために、診断士としてのスキルを磨き続けることが重要です。今後も、企業のニーズに応え、効果的な支援を提供していくことを目指しています。

中小企業診断士の役割と対応スタイル

 中小企業診断士の業務には、スポット的な依頼が多いのが特徴です。限られた回数の訪問やコンサルティングで成果を上げるためには、1回1回の訪問を非常に大事にし、最大限の成果を引き出すことが求められます。私の場合、年齢もあり、年金を受給しているため、がむしゃらに仕事を取って数をこなすというよりも、受けた仕事に対して丁寧に対応することを心掛けています。もちろん効率よく進めることも意識していますが、それが絶対要件ではありません。依頼があれば現地に赴き、しっかりと対話を重ねることが多いです。このように自分に縛りを設けず、柔軟に対応しています。
 一方で、若い世代、特に30代や40代のコンサルタントは、家族を支える責任もあり、効率を重視する傾向があります。無駄なことを避け、できるだけ効率的に仕事を進めることが求められています。
 企業での経験があるからこそ、コンサルタントとしての活動に活かせる部分は多いです。例えば、どのような話題を避けるべきか、どのように話を進めるべきかといった感覚は、日常の業務での経験から学んだものです。コンサルタントとしての仕事は、企業の管理職としての仕事とは大きく異なります。特に1人で活動することの大変さは大きいです。自分の培ってきた経験や知識、人間性をフルに活かして、経営者との信頼関係を築いていくことが求められます。

実務と理論を融合するコンサルタントの理想像

 私は、単なるアドバイザーではなく、実務にも積極的に関わるコンサルタントでありたいと思っています。図面を書くのが難しい場合には自分が書き、生産工程で困りごとがあれば実際に検討するなど、具体的な支援を行います。このような実務的なアプローチは、他の診断士とは異なる強みであると考えています。プレーヤーとしても活動しながらコンサルティングを行うことで、クライアントにとってより実践的で役に立つ支援を提供します。多くのコンサルタントが口で言うだけで手を出さない中で、私は手を出すことも辞さない姿勢を持っています。これは、クライアントにとっての最善を追求するためのアプローチです。
企業での経験があるからこそ、コンサルタントとしての活動に活かせる部分は多いです。例えば、どのような話題を避けるべきか、どのように話を進めるべきかといった感覚は、日常の業務での経験から学んだものです。コンサルタントとしての仕事は、企業の管理職としての仕事とは大きく異なります。特に1人で活動することの大変さは大きいです。自分の培ってきた経験や知識、人間性をフルに活かして、経営者との信頼関係を築いていくことが求められます。このように、実務とコンサルティングの両方をこなすことができるコンサルタントを理想とし、その信念を持って日々の業務に取り組んでいます。

多様な顧客と現代経営に挑む中小企業診断士の理想像

経営の重要性と現代の経営戦略

 成功する企業は、多様な顧客を持つことでリスクヘッジを行っています。3社だけの取引先に依存するのではなく、10社、15社と顧客を増やすことで、業績の浮き沈みに耐えられる体制を作ります。これにより、どこかの取引先が調子を崩しても、他の取引先でカバーできるため、安定した経営が可能になります。このようなポートフォリオを築くことは、経営者の力量に大きく依存しています。
 かつての高度経済成長期には「物を作れば売れる」時代であり、単一製品の大量生産が主流でした。しかし、現代は多品種少量生産の時代となり、経営の考え方も大きく変わりました。製造業では、少量生産に対応できる機械や生産ライン、人材が求められます。経営者はこの変化に適応し、時代に合った経営戦略を取り入れることが不可欠です。中小企業診断士として、時代に合った経営戦略をクライアントに提案し、実行をサポートすることで、多くの企業が業績を改善し、元気を取り戻せるように日々努力しています。
 コンサルティングの現場で感じる変化の中で、バブル時代を引きずっている経営者にあまり出会ったことがありません。そのような経営者はすでに淘汰されているようです。バブル崩壊から約30年が経ち、リーマン・ショックも大きな転機となりました。
地域別の産業動向にも目を向けると、特に東京の西側、例えば八王子、青梅などの地域では、かつて大企業が多くの工場が稼働していました。近年では、物流倉庫が増えていますが、それでも中小企業は依然として残っており、さまざまな顧客を開拓して生き残りを図っています。コンサルティングを通じて感じるのは、時代の変化に対応し、積極的に新たな事業領域を開拓する経営者のたくましさです。過去の成功体験に固執せず、柔軟に戦略を見直す姿勢が求められています。
 このように、企業が多様な顧客を持ち、時代に合った経営戦略を取り入れることで、安定した成長を続けるための支援を中小企業診断士として提供することが重要です。

経営者としての挑戦とコンサルタントの役割

 事務所を構えると経営者としての側面も出てきます。若い方々は生活がかかっているため、無駄な仕事を避け、営業に力を入れる必要があります。経営と仕事の兼ね合いについて、やり方も変わってきます。私も新しい仕事を探し、募集があれば手を挙げますが、お金を稼ぐというよりは新しいことに挑戦したいという気持ちが強いです。
 診断士になった時、昔書いていた設計図を思い出し、3D CADを覚えました。経営支援で訪れた企業で、検査装置に問題があり、カメラで写真を撮って拡大し、NG品をはじく検査システムを提案しました。社長からその提案を実現して欲しいという依頼を受け、図面を描ける私とIoTに強い仲間と協力し、検査装置の設計、製作に取り組みました。このように、年に1~2回設計の仕事も依頼されることがあります。中小企業診断士で図面が描ける人はおらず、それが一つの武器となります。図面の技術は製造業において大きなプラスになります。いろいろなことに挑戦することが動機となり、製造業の業務知識としても役立っています。これが経営支援においても有利に働くと感じています。
中小企業のコンサルティングは、大企業相手のコンサルティングとは異なり、より現実的で泥臭い仕事が求められます。中小企業の経営者との人間関係を築き、現実的な提案を行うことが、コンサルタントとしての成功の鍵となります。この過程で得た知識と経験をもとに、今後も多くの企業を支援していきたいと考えています。
 経営コンサルタントの役割は、企業の課題を発見し、それに対する解決策を提供することにあります。私が課題を発見する方法についてお話します。どうしても特定の問題に焦点を当てがちになる人もいるかもしれませんが、私はまず全体像を見ることを意識しています。これによって、企業の問題を包括的に理解し、適切な解決策を見つけることができるのです。
 全体像を把握することは、財務データや社長との会話からヒントを得ることができます。例えば、社長が特定の問題を強調していても、実際には別の問題の方が優先順位が高いこともあります。全体像を捉えることで、こうした見落とされがちな課題を発見することができます。これは、私が会社員時代に培った経験から学んだ重要なスキルです。
 このように、経営者としての挑戦とコンサルタントとしての実務経験を活かし、企業の課題を的確に発見し、解決策を提供することで、多くの中小企業を支援していきたいと考えています。

コンサルタントとしてのやりがいと理想像

 コンサルタント、特に中小企業診断士としてのやりがいは、企業の問題を解決し、その成果が目に見える形で現れることにあります。初回の訪問でいきなり「あなたの工場は汚いです」と指摘するのは難しいですが、何度か訪問を重ねることで信頼関係を築き、徐々に問題点を指摘し、改善を提案することが求められます。例えば、先週訪れた企業では4回目の訪問でやっと新しい提案をすることができました。これは、経営者との信頼関係を築きながら、少しずつ改善の方向性を示していくプロセスの一環です。
 経営は単なる財務管理だけでなく、製品開発、労務管理、人事教育など、様々な要素が絡み合っています。そのため、トータルで経営を見ていくことが重要です。特に人材の問題は大きな課題です。人がいなければ製品を作ることもできず、外部に依頼すると利益が流出してしまいます。こうした問題を解決するためには、財務管理や新規顧客開拓と同様に、人材確保と育成が不可欠です。
 中小企業診断士としての目標は、自分の経験と知識を活かし、中小企業の困りごとを解決することです。その結果、企業の業績が少しでも向上すれば、それが大きなやりがいとなります。業界全体の改善は難しいかもしれませんが、自分が関わった企業が成長する手助けができれば十分です。大きな哲学や思想はなくても、実務を通じて企業の発展に寄与することが目的です。
 私は単なるアドバイザーとしてではなく、実務にも積極的に関わるコンサルタントでありたいと思っています。例えば、図面を書くのが難しい場合には自分が書く、生産工程での困りごとがあれば実際に検討するなど、具体的な支援を行います。このような実務的なアプローチは、他の診断士とは異なる強みであると考えています。
 プレーヤーとしても活動しながらコンサルティングを行うことで、クライアントにとってより実践的で役に立つ支援が提供できるのです。多くのコンサルタントが口で言うだけで手を出さない中で、私は手を出すことも辞さない姿勢を持っています。これは、クライアントにとっての最善を追求するためのアプローチです。
 このように、私の理想は、コンサルティングと実務の両方をこなすことができるコンサルタントであることです。これがクライアントにとっても、自分自身にとっても最良の方法であり、その信念を持って日々の業務に取り組んでいます。これからも、多くの企業の支援を通じて、彼らの成長と成功をサポートしていくことを目指しています。


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