15 授業準備は永遠

新しく担当する講義があると生活が一変する。
教えようとする内容の何倍も論文を読むことになるので、自分の勉強になり楽しくはある。しかし精神的余裕は全くない。いくら準備しても、すぐ次の授業がやってくる。回し車に乗せられたねずみの心境だ。

若い頃、偉い先生が学会で論拠のない発表をするのが不思議だった。院生が同じ発表をしたら叩かれるだろうに、大先生なので誰も咎めない。代わりに質問も一つも出ない。

授業をしていると、学会発表よりもはるかに無責任にものを言えてしまうことに驚く。そんな半熟の知識に対し、学生は感心して見せたり頷いたりする。
すると、まだ本格的には固まっていない結論がまるで事実であるかのように思えてきてしまう。こうやって大御所の論拠なき主張が作られるのか。

恐怖を感じ、思わず学会に行きたくなる。叩いてほしい。しかし無限の授業準備があり行けない。