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大学教員のしょぼい愚痴

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40 「先生、年収いくらですか?」

40 「先生、年収いくらですか?」

飲み会で学生から年収を聞かれた。

はぐらかすが、しつこい。
年俸制なのか。手当はあるのか。1千万円を超えるのか超えないのか。
あの手この手でヒントを得ようと質問を挟んでくる。

かつて勤めていた教育困難校でも、一人だけこの質問をしてきた学生がいた。
それでもしつこくは聞いてこなかったものだ。

それなりの大学に移ったはずなのに、またこれか。
前任校では一度も聞かれなかった。もし聞く学生がいればま

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39 知らない星で息ができない

39 知らない星で息ができない

大学を異動してから、まったく言語がわからず、酸素もない星に来たかのようだ。

職務に関する説明がないことが辛い。いきなり「これを決めてください」「この委員をしてください」「人を探してください」「ほかの先生との業務を仕切ってください」と指示が飛んでくるが、なにも説明がない。
どの会議には出る必要があり、どれはないのか。入試を作れと言われても様式と過去問はどこにあるのか。ほかの先生の連絡先は。教員、職

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36 まだ死にたくない

36 まだ死にたくない

過労死しそうだ。休みがない。
土日は入試や外部組織の委員や出張で潰れている。自宅が仕事の合間に帰る給水所みたいな位置付けになってくる。

現在の大学は仕事量が多いのもあるが、予定が急に入ってくるのがきつい。2週間後の土曜日に出勤してくれとか、今日ハンコを押すために大学に来てくれとか。
子供、老人、病人のように一人で置いていけない家族がいたら成り立たない。
今の学生はメールを見る習慣がないのでLIN

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33 老兵の背中を見ない

33 老兵の背中を見ない

恩師を「老害」と感じるようになってしまい、そんなことを誰かに言えるはずもなく、悩みに悩んで始めたnote。
この恩師も最近は連絡をよこさなくなり、共通の知人に「若い人は忙しい。みんな冷たくなって寂しい」とこぼしていたらしい。自分もその一人かと思うと胸が痛くなる。

しかしもう連絡は取りたくない。先生が悪いのではない。多分どういう接し方をされても、こちらの受け取り方が悪いから関係は悪化する一方だろう

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30 もう無理かもしれない

30 もう無理かもしれない

現在勤めている大学に違和感があるのは、教員が学生を招いた飲み会の幹事をすること。学部も大学院も。
自分のゼミの学生となら、それも仕事の一部だと思うので頑張る。
しかし学科単位や研究科単位で、所属教員と学生を招いた飲み会をたびたび開かなければならない。それもフォーマルな店ではなく普通の居酒屋で。

特に疑問なのは、新入生のための親睦会を開き、教員の日程を合わせ、学生の出欠を取り、ケータリングを頼み、

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29 教育困難大学の思い出

29 教育困難大学の思い出

前回「老いて学生への受容度が上がった」と書いたが、間違っていた。単に大学を異動したおかげで教員にとって扱いやすい学生に囲まれるようになっただけなのかもしれない。
かつて勤めていた教育困難校にも尊敬すべき学生はいたが、悩まされ、驚かされることの方が多かった。

・志望大学は通学距離で決める
「家から近いからこの大学にした」という学生が多かった。偏差値や学費は理由にならない。

・基本的に学校は嫌な場

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10 大学業界も人不足

10 大学業界も人不足

大学教員は目指しても簡単になれる職業ではなく、100人の博士がいても消えていく人がほとんどだと聞いてきた。
しかし、専任教員の公募をしても思ったより人が集まらないし、非常勤講師を見つけることさえ難しいと感じている。

大学が教育歴のある人を重んじ、初めて教えようという人を歓迎しないからこそ、非常勤の担い手がいない。
また大学院生の絶対数が減り、割に合わない非常勤講師でもやる、どんな遠方の大学でも行

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13  研究費はもういらない

13  研究費はもういらない

みんな自分の研究に役立つ手足がほしい。だから目下の者を研究費獲得のチームに入れる。
これまで私も多くの声をかけていただき、ありがたいと思っていた。

しかしやってみて気づくのだ。
みんな手を動かさない。発表しない。論文書かない。
偉い先生ほど忙しいので仕方ないところもある。
そうすると下っ端の自分にお鉢が回ってくる。一応お金もらってやりましたよというアリバイめいた仕事のため大した業績にならない。本

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15 授業準備は永遠

新しく担当する講義があると生活が一変する。
教えようとする内容の何倍も論文を読むことになるので、自分の勉強になり楽しくはある。しかし精神的余裕は全くない。いくら準備しても、すぐ次の授業がやってくる。回し車に乗せられたねずみの心境だ。

若い頃、偉い先生が学会で論拠のない発表をするのが不思議だった。院生が同じ発表をしたら叩かれるだろうに、大先生なので誰も咎めない。代わりに質問も一つも出ない。

授業

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16 誰にも会いたいと思わなくなった

16 誰にも会いたいと思わなくなった

新しい大学に来てから死にたいという気持ちがぶり返した。最近はマシになってきて仕事のために死ぬなんて馬鹿馬鹿しい、また公募戦士に戻るか別の仕事に就けばよいと考えるようになった。

しかし依然として人に会いたいと思えない。友達にも家族にももちろん老害研究者にも会いたくないし、尊敬している研究者にさえいまいち会いたいと思えなくなってしまった。
忙殺されて時間がないというのは確かに理由の一つだが、それより

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19 辞めた先生になにを言われても

SNSで教員論を発信している教員が実はすでに退職しているとわかると「あーあ」と思ってしまう。

たしかに続けられないくらいの辛い思いをした人だからこそ退職に至り、わざわざネットで教員論を書きもするのだろう。自然なことだ。
しかし、なにを書かれてもあなたはもう当事者ではない、もうここから出たのではないかと思ってしまう。

辞めた先生に励まされてもなんとも思わない。10年担任やったとか言われても、でも

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5 研究っぽいことがしたいだけ

5 研究っぽいことがしたいだけ

招待講演や招待報告をすると、終わった後で「この学会に入ってくれ」「研究チームに入ってくれ」と言われる。他の業界同様、学問の世界も人不足。パイの奪い合いが起きている。

その会を維持するためにメンバーになってくれというのはわかるが、不思議なのは入会とセットで報告(発表)も求めてくることだ。そんなに集まって研究したいなら自分で報告したらどうかと思うが、誰もしたがらない。

「ぜひahoさんに研究会に入

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3 研究者に金を払ってくれるのは誰か

3 研究者に金を払ってくれるのは誰か

大学教員として、次のような仕事をしている。

金をもらえる校務>金をもらえる講義>
(大学にノルマを課されている)

金にならない学生対応>金にならない学会活動>金にならないマスコミ対応>
(やってもやらなくても給与に影響しない)

金にならない自分の研究
(誰にも求められてない)

一番やりたい自分の研究は、金にならないし管理もされていない。だから金になる仕事よりも後回しにせざるをえず、「こんな

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4 学会辞めたい

4 学会辞めたい

周囲にへーこらし、いらないアドバイスをありがたがるのに疲れた。
学会運営でタダ働きさせられたり時間を潰されたりするのにも疲れた。

切れ目なく委員を頼まれるようになったが、今年こそ断ろうと思う。
もう自分のことは死んだと思ってほしい。
書きたい論文を書いたら、この世界から足を洗いたい。大学を辞めたい。

公募戦士としてはラッキーな思いをしてきたのでドヤ顔でその経験を披露しておきたい。それで仏恥義理

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