地域経済を小さく回して大きな波を作る
グローバル経済の行き過ぎから地球環境の汚染や貧富の格差の拡大などいろいろな弊害が大きくなって、その反省から「地域経済の活性化」ということが言われるようになったと思うのですが、近所の商店街がどんどん歯抜けになっていく状況に無力感を感じている人も多いのではないでしょうか。住んでいる街でワクワクする感じを作り出すにはどうすればいいか、これまでいろいろ考えてきたことを書いてみます。
コミュニティスペースと連動する地域SNSを作る
ここ10年ほどの間にスマートフォンの普及が進み、子供や高齢者の方もfacebookやLINEなどのSNSを使う人が増えてきました。この他にもマチマチやジモティなど、地域の情報を扱うサイトも数多くあります。もう一歩踏み込んで実際に会って話をする機会に繋がる仕組みがあるといいですよね。ただ、ネットで知り合った人に実際に会うというのはいろいろ(特に子供は)問題になることが多いです。高齢者も個人情報が漏れて悪い人に騙されるのではないかと心配は絶えません。そこで、実際の顔見知りだけで作る小さなグループを前提にしたSNSを作ってはどうかと思うようになりました。困りごとなどの情報を共有するには個人情報の扱いに細心の注意を払う必要がありますが、丁寧にシステムを設計すればそういった状況にもうまく対応できると思います。実は5年ほど前に高齢者の生活支援に役立つのではないかと「おたすけSNS」というシステムを作ったのですが、当時はまだスマホを使う高齢者が少なくてお蔵入りになってしまいました。それを作ったことでいろいろな知見が得られたので、ここでそれらを活かしたいと思います。
ネットだけでなく顔見知り同士が実際に会って話をする場所も必要ですよね。さまざまな形でコミュニティースペースが作られていますが、安定して運営するのはなかなか難しいです。僕も文京区本郷の事務所を開いてHONGO22515というコミュニティスペースにしていますが、こういう場所の運用を支援する仕組みをネットを使って実現できるのではないかと思っています。
コミュニティスペースというのはお金になるネタが少ないので、家賃を払うのも大変ですが、管理人の人件費などはとてもまかないきれません。そこで、ICカードで開けられる電子キーをドアに付けて「鍵会員」を募ってみることにしました。鍵を渡せる人はある程度信用ができる人に限られますが、SNSのIDと鍵を紐付けて誰がいつ入って出たかを記録し、友人同士でこの情報を共有して「今どこに誰がいるか」が分かるようすると面白いのではないかと思います。
インターネットの商用接続が始まったばかりの頃、地域の情報を扱うサイトを作ろうとstreet.or.jpというドメインを取りました。その後ne.jpが新設されたのでor.jpを手放すという条件で優先で割当をもらい、その流れでstreet.jpも僕が持っています。覚えやすい良いドメイン名だと思っているのですが、なかなかうまく使うことができていません。ここでなんとかして良い仕組みを作りたいと思っています。
減価する地域通貨でベーシックインカムの実験?
「経済」というと「お金」によって「モノ」や「サービス」が回っていくことをイメージしがちですが、「お金」に代えられない価値というものもありますよね。そういう価値を含めて循環させることが経済だと僕は思います。ただ、さまざまな価値をお金に置き換えて考えることに慣れすぎてしまってはいないでしょうか。たとえば高齢者を病院に送ったり、子供を幼稚園や学校に迎えに行ったり、そういうご近所の助け合いのようなことがもっとあってもいいはずですが「人様に迷惑をかけてはならぬ」という思い込みが強すぎるのではないかと思います。そこで、地域通貨を使って「お互いさま」の助け合いをしやすい状況が作れないかと考えています。
地域通貨には「現金と交換される」ものと「現金と交換されない」ものがあります。自治体の行政などが発行する「プレミアム商品券」など地元の商店で買い物ができるものは前者で、ポイントカードなど値引きなどの特典があるものは多くの場合後者です。ここでは「現金と交換されない」地域通貨を考えています。このような地域通貨はこれまでも多くの地域で試されていますが、経済に良い影響を及ぼすほどの規模になっているものは多くありません。通貨として流通する量が限られているのが原因だと思われます。
そこで、一定の額を定期的に無償で配布する仕組みを使ってみてはどうかと考えています。地域通貨を電子決済にしてスマホをお財布の代わりに使えば、定期的な配布も簡単に実現できます。「何もしていないのにお金をもらう」というのは変な感じがするかもしれませんが、生活に必要な最低限のお金を政府が支給する「ベーシックインカム」という考え方にも少し通じる部分があると思います。更に、使わなければ自動的に減る「減価する機能」を組み込みます。これはドイツのシルビオ・ゲゼルという人が100年ほど前に「自由貨幣」で提唱した仕組みで「持ったままでは減ってしまうので早く使ってしまおう」という気持ちが働き、結果として景気が良くなるというものです。大恐慌の時期にオーストリアのヴェルグルという街でこの考え方に基づいた地域通貨が発行され、大きな効果があったと伝えられています(その後政府によって禁止され短期間のうちに終了してしまいましたが)。
「持っていても減ってしまうから早く使いたい」地域通貨でお礼をする習慣が地域に根付けば、ちょっとした困りごとで誰かにヘルプをお願いするといったことがしやすくなるのではないでしょうか。更に、地域通貨が商店街での値引きなどに使えるようになれば、「お金を引っ張って回す」ことになり、景気に良い影響をもたらすことになります。商店が受け取った地域通貨で仕入れなどの支払いはできませんが、加盟店が地域通貨を受け入れる規模に応じて何らかのメリットが得られるように工夫することはできると思います。
フリーランスの仕事を作る街のオフィス
地域での活動に時間を使えるのは僕のような自営業をやっている人や子育て中のママ、フリーランスのクリエイターなど、会社勤めで時間を拘束されていない人がほとんどですが、コロナの影響で自宅勤務が増え自由な時間が増えたという人も多いみたいですね。フリーで仕事をする機会というのは、この先いろいろな形で増えていくのではないかと思います。
ただ、機会が増えるといっても、フリーで仕事をしたことのない人にはどのようにすればいいのか分からないことが多々あるかと思います。まずは「どうやって仕事を取ってくるか」ですね。ホームページを見たと企業の担当の方から連絡をもらったり、知り合いの伝手で声がかかったりということが多いのですが、自分がどれだけのスキルを持っているのか相手に伝えられるようにプロフィールを用意しておくことが大事です。仕事を受注したらしたで取り掛かるまでの段取りや実際の作業の進め方、納品時の確認の仕方など、一度でもやったことがあればそれほど難しくはないのですが、やったことが無いと分からなかったり不安なことも多いと思います。
僕は大学を出てすぐに会社を作ったので会社勤めの経験は無いのですが、自分で仕事を取ってきてフリーの人と一緒に仕事をする機会も多かったので、これからフリーで仕事をしようと思っている人とこういった経験を共有できればと思っています。フリーの仕事は基本一人ですることが多いのですが、大きな仕事を共同で受注したり何人かでアイデアを出し合って新しい企画を考えるなど、集まれるコミュニティスペースがあれば仕事の幅も広がるでしょう。
どこから手をつけたらよいのか?
冒頭のタイトル画像は7年前にノートに書きなぐったものを多少丁寧に書き直してみたものです。この7年、試行錯誤を重ねながらいろいろ試してきましたが、一つずつやろうとしてもうまく噛み合う相手がないので空回りばかりでなかなか前に進まないということを繰り返してきました。そこで意を決して「同時に全部やる」と覚悟を決めたのですが、もちろん一人で全部できるわけがありません。この図を見て「ここをやってみたい」「こんなアイデアもある」「なんだか面白そうだな」と感じてくれたそこのあなた!いっしょにやりましょう。今は東京の文京区という地域でやっていますが、地域で使える道具をいろいろ作って、各地で必要に応じて組み合わせができるような、そんな仕組みが作れたらと思っています。この閉塞感を突き抜けて新しい時代を作りましょう。