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インスピレーションから物語が始まる。 ④
③からの続きになります。
一つの物語として…。
2回目のコンサートは、彼女にとって色んな想いが散りばめられたものだった。
それぞれのソロ曲にもグループ曲にも、彼らからの想いが伝わってくるものだった。
ただそれはリアルさとは程遠い感じのものだったのではないかと彼女は思っていた。
リアルじゃないから、そこに浸れる…そんな感じを受け取っていた。
でもあとになって気付く事もあった、それは好意を寄せてる彼の肉体的変化。
彼はすごく男性性が増した肉体美へと変化していた…その当時の彼女にはそれが何故なのか全く分かるはずもなく、まして彼自身もそのことを知ることはなかったであろう。
その当時の彼女も、自分が女性性が増しているのに気づいてはいなかったから…。
それを彼女が知ることになるのは、一番傍にいた旦那さんからのある一言であった。
そして彼女にとって、コンサートの記憶と共に残っているのが、そのコンサートを待つ間過ごした時間でもあった。
この時は、前回より人混みをもっと避ける為に近くの海辺で時間を過ごしていた。
その時までは人はまばらで、何人かの人が砂浜に棒みたいなもので字を書いてるぐらいだった。
彼女はそれを気に止めることもなく、一人貝殻をひろったりして過ごした。
なので、その光景をのちにラジオで聞く事になるとは思ってもいなかった。
彼女にとって、いつの時もこれが最後かもという想いを抱えながらこういうものに参加していた。それほど彼女は、自分と周りとのバランスをとるのに苦労をしていたのだ。
そんな中、彼女の素性を知りたいのか…彼からファンクラブへ入って欲しいというようなものを感じ出していた。
それまでの彼女はそういうファンクラブのようなものに入ったことがなかったのだ。
彼女は少なからず戸惑いを感じながらも入会することにした。
そのあとも、目には見えないような関係性を彼と続けていた。
ネット上で書き込む場所は変わっても、何故か必ず繋がりあっていった。
彼女が入会して初めて自分名義でコンサートに行ったのは、好意を持つ彼の初めてのソロコンサートだった。
このコンサートが開かれる前にも色んなことがあったのを彼女は今も覚えている。
何故か、彼が何かをやろうとすると必ず横から茶々が入る。
その当時も、昔のスキャンダル的な事が表だったりして…彼女も内心穏やかではなかったが、自分が彼のことを知る前のことでもあるし、それをとやかく言える立場でない事は彼女も分かっていた。
そしてもう一つ、このソロコンサートが開かれるちょっと前に、彼がソロで出演してた番組のロケが彼女が住む場所の近くであったことも彼女は知っていた。
そしてその後すぐ、その番組が急に終わってしまった事も、彼女の中では色々と思うところがあった。
こういった事は、その後も何度も形を変えて繰り返された。
だから、彼女は常にある不信感を持ち続ける事になっていった。
後に、曲解という言葉を彼が使ったことがあったが、曲解だったかどうか…それは、彼自身が考えることだと彼女はそう思っていた。
そんな想いを抱えながらの初めてのソロコンサートは、タイトル通りに二つの愛が表現されていた。
バーチャルとリアルの狭間にいるからこそできる構成なのかなと、そんな複雑な想いもありつつ、初めての壮大なソロコンサートを楽しく過ごしたのも確かだった。
そしてそこに込められた想いも彼女はちゃんと受け取っていた。
コンサートが終わり会場を出た瞬間メッセージが更新されたりと、そんな多くの想いを受け止めながら帰路についたことを彼女は周りの光景と共に今も覚えている。
コレは現実なのか?
そこから、長い問いを彼女はずっと繰り返す事になる…。
バーチャルとリアルの狭間で揺れ動くのは、彼女も一緒だった。
ソロコンが終わってまた半年が経った頃、今度はグループの記念コンサートがあった。
そこに行き着くまでも、色々ありながらやっとそこへと辿り着いた感じだった。
さすがに彼女も、これが最後と心に決めて参加を決意していた。
二枚チケットを申し込みして、両日取れてはいたけど、行ったのは1日だけで…いつも以上に無理をして出かけた事を彼女は覚えている。
それが何故だったのか?それは彼女の記憶には無い…何かに逆らって家を出た事だけは確かであった…だから、1日しか参加出来なかった。
彼女にとっては、その1日だけが唯一行けた日だったのだ。
コンサートの内容は作品として残ってはいても、あの場所で彼女が経験した事は誰も知らないはず。。。
彼女はアンコール曲が始まる前に席を立った。
それは、その場にいるとよくないように感じたからだ…でも、すぐに会場をあとにした訳ではなく、階段の隙間から中の様子を見ていた。
彼女が出たのを確認したのか、その誕生日が一緒のもう一人の彼が上着を脱ぎ捨て、それまでとはまるで別人のように元気に歌いだしたのだ。
その光景を見て、もうこれで最後だと確信を胸に会場からロビーへと出た。
側にスタッフの人もいたので、その場に長くいる事が出来なかったのも事実だったが…。
ラストの二人の歌声が響く中を彼女はロビーから外へと走り抜けた…まるで映画のワンシーンみたいだなと、ふと思ったりしながら。。。
外に出ると、まだ人の列もない臨時バスが止まっていた。
そのバスは席も空いていた…走り出したバスの車窓からの景色は涙目でよく見えなかったけど、周りにそれが分からないようにと彼女はずっと外を眺めていた。
次回へと続く…。