エステ荘の噴水
リストはイケメンで、情熱的な演奏をすることで有名であるし、リストの演奏を聴いた女性が何人も失神して倒れるという話があるほど物凄い人気ぶりを博していた。けれど、いつまでも順風満帆とはいかず、愛する子供を2人も亡くすという不幸を経験し、非難の嵐を受け、地位も追われ、最愛の妻との間にも横槍をいれられます。権力からの圧力もあり精神的にもボロボロとなった晩年に聖職者となるのです。絶望し孤独で空っぽな諦念のなかでエステ荘の噴水を書きました。噴水の光の中に見た、最後の希望。意味のあるものではなく、和音のきらめきを楽しむこと。リストよ、貴方もただきらめくだけの光をぼうっと眺めたことがあったのですね。
本当に傷ついた人は、意味を求めるよりもまず意味のない美しいものになによりも癒されるでしょう。心そのものを癒してくれるのは、そういうものだと痛く染み入るでしょう。