映画「夜の来訪者」ヒアリングで真実を見極める方法

「先程若い女性が自殺し、女性の部屋にはあなたとかかわりのある遺言が残されていた。」突然来訪した刑事は、婚約パーティーを祝っていた家族を一人一人問い詰める(結末が面白い映画のため見ていない方はネタバレ注意)。刑事から女性の写真を見せられた家族の心の中にはそれぞれに思い当たる女性が…

「夜の来訪者」は、ミステリーのようであってはっとさせられる映画である。刑事の質問に心当たりを感じた家族は、質問に動揺し、他の家族の疑いの視線を晴らすため、あるいは自己弁護、贖罪のため、しなくてもよい自らの行いの自白をする。

刑事は、若い女性の死亡の捜査を理由に、地位でもって他人を黙らせる上流階級の家族全員を質問の場に立ち会わせる。

そして、一人ずつに写真を見せ、若い女性の当時の偽名を明かしてその家族とのかかわりを順番に問い詰めていく。家族たちは最悪の結果に追い詰めたのは自分ではなかったと弁解したい気持ちもあって、自分の行動を弁解し、それ以降の女性とかかわりをもった家族を非難する。刑事のこれらのヒアリング手順は、緻密に計算されたものだったと最後に判明する。

引き出す側の視点から

権力を利用、関係者間の情報と利害の分断、一番重い結果をほのめかしつつそれより軽い結果を白状させる

家族側の視点から 

①信じている前提事実はあっているのか疑い確認すること、⓶前提事実が真実でなかった場合に変わるものと変わらないものを見分ける力

刑事が聞くべきことを終えて立ち去った後、家族は、再捜査の恐怖におびえる。

①その中で、経営者である家族達は、刑事が身分証を示さなかったこと、記録をとっていなかったこと、家族のそれぞれが見せられた写真が同じ人物かわからないこと、ひいては女性の自殺という事実を冷静に疑ってかかり、前提事実が違うことを確認して、安心し喜びあう。

②経営者でない家族は、喜ぶ家族を傍目に、前提事実が変わったとしても変わらない事実の方に注目し行動を起こそうとする。

①だけではなく②も必要だということを実感させられる結末であった。