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はじまり
こんにちは。ちかと申します。
お付き合いをすることになった。あまりの急展開に、私も驚いてる。
1度目のデートの日、数日後にもう一度会おうと約束して、その2回目のデート。
夜ご飯も食べ終わり、帰るのが惜しくて、雨の中だけど、公園へ夜景見に行かない?と言ったのは私だった。
雨の中ではさしものカップルも行かないだろうちょっと辺鄙な公園へ向かったせいで、本当に誰もいないベンチのそば。口数が少なかったり反応が悪かったりするのは、雨の中歩かせて疲れさせてしまったからかな、と反省していた私が「そろそろ帰る?」なんて呑気に言ったとき。返事がなくて、ん?と思って、彼がいる方を見たら近くに寄ってきて。
他に誰もいないのに肩がぶつかって、「あのね」と上擦った声で言われたとき、私はなんて能天気だったんだろうって思った。
「あのね、ちかに今日言おうと思っていたことがあって」
緊張しているのがありありと伝わってきて、友達でいようと心がけていた私があまりの展開に上手く切り替えられなくて、「ガンバレ」と野次を飛ばしたりなんかして、
頭のどこかで冷静に「わたしのばかやろう!空気読めてなったのか!」と自分をサンドバックにして、
「一緒にでかけて、この前もすごくたのしくて。これからも一緒にいられたらいいなと思って。ちかのことがすきです。つきあってくれませんか。」
なんて返事したかは曖昧。告白も、正直曖昧。
うん、私でよければ。って言った気もするし、「ほんとに言ってる?」とも言った気がする。
いいの?よかった、と笑った彼のてをぎゅ、とにぎって、「緊張した、今日ずっと言おうと思ってて」なんてかわいいことを言うので、「気づいてなくてごめん、頑張ってくれてありがとう」って伝えたの、憧れだった彼が途端に可愛く見えて、隣にそっと降りてきてくれたみたいで。
緊張してて、たぶん本当にちょっと泣いてて、それがあまりにも愛おしくて、ああ、勇気出してくれたんだなあって、それがわかって心臓がぎゅうってなった。
本当に信じられなくてぽわぽわしたまま、手を繋いで歩いて帰った。手を繋いだ時に「指細」っていうから、なんか男の子だなあって思って緊張した。そういうの弱いみたいだ。
帰り道もそこそこ長かったので、いつから?とか、どういうところが?とか、質問攻めしちゃった。
私のどんなところが、と聞いた時、ちゃんと言語化出来てるわけじゃないけど、と前置いてくれて、それでもちゃんと伝えてくれた。話していて楽しかったから、よく褒めてくれてそれが自信に繋がったから、ちゃんと見てて分かってくれてるなと思ったから、あまり大きな声で言えることじゃないかもしれないけど賢いから、あとしっかりしてるから。そう思ってくれていたのか…ということが多すぎて(私の事賢いと思ってたんだ)とか(しっかりしてると思ってたんだ)とか信じきれてない部分もあるけど、そう思ってくれたのが私が尊敬してやまない君であるということが何より嬉しくて。
とにかく、ずっと信じられなくて、本当に好きなのかと思って、私が大事にしてあげないと、と強く思った。彼が幸せになって欲しいと思ってしていたこと、ちゃんと刺さっていて、それを喜んでいてくれたなら、これからもずっとそうしてあげたいって思う。
趣味が合うからね、それが楽しいよね。って言ったら、本当にそうだね。と肯定してくれて、前に好きだった女の子とのデートも「ご飯に行っただけ。告白しようとは思わなかった」って言ってくれて。私とのデートは楽しくて、告白しようって思ってくれてたんだなあって、なんか、ほんと、しあわせだ。
わたしはすぐに所謂「蛙化」というものになりかける。その理由は相手を悪く思うゆえと言うより、「こんな私を好きでいる憧れの人が解釈違い」という捻れた認識によるもので、「わたしなんかを好きになるなんて」という気持ちが強くなってしまう。今回もそうなるのが恐ろしくて、特に尊敬していた彼が隣に居てくれるのが、まるで羽を失って上から落ちてきてしまったみたいで心苦しくてじわじわと気持ちを整理出来ていなかった。
でも、そんなのはお付き合いをし始めたたった数日だけで、次にデートした帰りには、彼の下心のない純粋な優しさと笑顔で胸がいっぱいになった。もしも私のことを例え恋愛的に好きじゃなくなっても酷くしないと信じられるから、安心してそばにいられる。弱気だけど私にとっては大きな一歩で、好きの気持ちで相手を邪推することなくそばにいられる気がした。
手を繋ぐと、トキメキと同時にふわふわとした幸福感に包まれて、本当に安心して落ち着く。もう帰るのが名残惜しくなって、1週間会えないことが、もう寂しく感じていて、なんだか弱くなってしまったなあ。
どこかのタイミングで寂しいってちゃんと伝えたい。でも、彼が睡眠が足りていないと言っていて、それが確実に私もひとつの原因なので、電話は控えたくて、なんか本当に、ずっとずっと難しい。
本当は毎日ちょっとでも顔が見たい、なんて言ったら困らせるよね。私、確実にあなたのことを大好きになっています。
これが幸せなんだろうな。いままでみたいな雑念も一切なく、貴方だけがよく見える恋。できるだけ長くそばにいたい。