一杯のカプチーノ
8年程前にイギリスへ行った。
(以前の記事で書いたイギリスの田舎町ではなく、この旅の目的地は首都、ロンドン。)
この旅では何日か予定がない日があった。
予定がないというのも、現地にいる友達に会う、映画館で映画を観る、うろうろ歩く、ショッピングする、という手持ちの札を全て出し尽くした状況であったからだ。
という訳で、一人でうろうろするのは手持ち無沙汰であまり得意ではないが、それしか選択肢がなかったのである。
今思えば、博物館や美術館へ行ったり、日帰りツアーに参加したり、少し遠くの街まで電車に乗ってみたりと、することがいくらでも思い付くのだが。当時の自分では、時間を潰すにはカフェくらいしか入る勇気がなかったのである。
こんな状況を踏まえ、時間潰しにキングスクロス駅(確か)の近くのカフェに入った。
8月後半で日本はまだ夏で蒸し暑いというのに、こちらは既に肌寒かった。日本から持っていったのは半袖ばかりで、数日前にこれまた時間潰しに入ったZARAで購入した、おニューの真っ白なセーターを着込んで、何回やってもドキドキする、海外での注文に挑んだ。
ドアを開けお店に入り、カプチーノを注文する。
自分「キャナイハブアカプチーノ?」
女性店員さん「・・・? a cup of tea?」
自分「あ、ノー。カップティーノ」
店員さん、困惑の表情。
自分「あ〜、アイウォント、カップチィィーノッ!」
店員さん「You want a cup of tea...?」
自分「あぁ〜、、イエス...」
それでも僅かな望みを抱いて、店員さんから手渡されたホットのカップを手にし、席に着く。
一口飲んでみると、分かってはいたが、やはりそれは紅茶であった。
イギリスといえば紅茶のイメージはあるが、私は少し肌寒いイギリスで、カプチーノが飲みたかった。好んで紅茶は飲まない性分で、ただ時間潰しのために、遠く離れた異国の地でふわっと泡の乗ったミルク入りの温かいコーヒーが飲みたかった、それだけだったのだ。。
以後の道中でカプチーノを注文することは二度となく、「カフェラテ」などの言いやすい物しか頼めなくなったのは、言うまでもない。