vol.02 July-Dec My Personal Single Best 9
こんにちは。The Gardenこと三菱マキアートです。
記事を書き始める前に、前回の「2020年上半期シングルランキング」を読んでくださった方々にまずお礼を言いたいです。本当にありがとうございます🙏🏼
そのほかにも、今年の4月30日に投稿した「トラヴィス・スコットの誕生日を祝う記事」がnote編集部が厳選する「#音楽 記事まとめ」に掲載されたこともあり、急なアクセス数上昇に私が一番驚いております。
SNSでのシェアや、記事へのライク及びページのフォローは励みになりますし、もっと頑張ろうと思えます。
今回の記事も、一通り読んでみて何か感想などがあればリアクションお待ちしております。
さて。早速本題に入ろうと思います。
先週に引き続き、本日は「2020年下半期(7-12月)」に発表されたシングル曲(※)をランキング形式で9曲ピックアップしました。(※アルバムリード曲、のちにMVが公開されたものも含む。)
上半期1位のエ◯ネ◯(※ネタバレ防止)と同じように、晴れて1位となった作品については長めに特集を組みました。
(私の好きなアーティストを知っている方から見たら「出来レース」みたいなランキングになってしまっているのですが...笑)
前回同様に、解説も少しずつ入れているので、このランキングの中にもし知らない曲がある方がいらっしゃったら“有益な情報”を得られるかも知れません。むしろ、そうでありたいです。
それでは早速9位から発表していきます。
July-Dec My Personal Single Best 9
9.Slow Grenade(feat.Lauv)
- Ellie Goulding
「2020大統領選も文字通り“Brightest Blue”に」
UK出身ポップシンガー、エリー・ゴールディング4年ぶりのニューアルバム「Brightest Blue」のリードシングルが9位にランクイン!
「Delirium」(デリリウム)以来となるニューアルバムの発表に多くのファンが胸を躍らせました。
エリーの美しい高音のハスキーボイスがクセになり、何度もリピートしたくなる一曲です。
話は少し逸れますが、今年のアメリカ大統領選挙は、次期大統領候補であるジョー・バイデン氏、そして副大統領候補のカマラ・ハリス氏が勝利を確実にしたのはみなさんの記憶にも新しいと思います。
バイデン&ハリス氏の所属政党である「民主党」のイメージカラーは「青」です。
奇しくも、今年発表したエリーのアルバムタイトル「Brightest Blue」も「青」という色をテーマにしていたことから、バイデン&ハリス氏が当確した日にはエリーもうれしそうでした。(笑)
彼女は #BrightestBlue とアルバム名をタグ付けしてSNSでバイデン&ハリス氏をお祝いしていました。完全に便乗です(笑)
何が急にバズってもおかしくない昨今、時事ネタに上手く乗ることも大事なのかも知れません...!
8.Cabin Fever
- Jaden Smith
「新型コロナの影響で長引く“隔離生活”を
テーマにしたラブソング」
「Cabin Fever」については夏頃投稿したこちらの記事に詳しく書いているため手短に。
「Cabin Fever」は、ウィル・スミスの息子でタレント・ラッパーとして活躍するジェイデン・スミスが発表したサマーチューンで、「世間から長い間、隔離された状態で鬱になること」つまり「Cabin Fever」をテーマにした一曲です。
恋に落ちて熱を帯びるような「Fever」と、新型コロナ感染拡大による社会情勢を上手に掛け合わせたリリックにジェイデンのセンスが光ります。
今年はアルバムの発表だけではなく、シューズブランド「New Balance」からシグネチャーシューズ「Vision Racer」もローンチし、多忙を極めたジェイデン。
昨今、「脱炭素社会」や「地球温暖化対策」へ向けた議論がヒートアップするなか、環境に優しいリサイクル素材を使ったジェイデンのスニーカーは大きな注目を集めました。
ジェイデンの環境保護活動はこちらの記事で詳しく紹介されています。
そして、最近のジェイデンといえば、モデルのカーラ・デルビーニュとダブル主演で恋愛映画に挑戦したことも記憶に新しいです。
現在Amazon Prime Video限定で公開されている「Life In A Year」という映画です。
プライベートでは同性愛者のカーラと、「タイラーは僕の恋人さ」発言で“実はゲイなんじゃないか...?”疑惑も浮上したジェイデンの異色コラボに驚いた方も多いのではないでしょうか。
キャスティングしたの誰だよ...笑
みなさんも是非チェックしてみてください...!
7.HOLY(feat.Chance The Rapper)
- Justin Bieber
「若い世代のアイコンが歌う、
全く新しい“労働讃歌”」
この歌に特段思い入れはないのですが(すみません...)「HOLY」はメロディラインが美しい歌というだけでなく、ミュージック・ビデオのクオリティが高かったので7位にランクインさせました。
シカゴの「ストリーミング世代の申し子」ことChance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)とポップスターのJustin Bieber(ジャスティン・ビーバー)の共作です。
この2人は歳も近く(チャンスは1993年生まれ、ジャスティンは1994年生まれ)、共に敬虔なクリスチャンであることでも有名です。
その上、DJキャレドの「No Brainer」や「I’m The One」などで既にコラボ済みのため、息ぴったりの「HOLY」にも頷けます。
(個人的に、2人ともNBAが好きという点についても好感度が高いです!)
ミュージック・ビデオは作業着姿のジャスティンが泥だらけになって仕事に勤しんでいるところから始まります。
若くして成功し、著名なセレブリティとして名を馳せるジャスティン・ビーバーが、汗水垂らして働く労働者という設定が現実にまずあり得ないシチュエーションなのですが、職場を解雇され路頭に迷い、車で通りかかった軍人に助けられるというMVのストーリーには胸を打たれます。いい話です。
今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、本当に多くの人々が仕事を失い、苦しい生活を送った一年でした。
そんな2020年に疲弊した世界中の方々には是非「HOLY」を聴いてもらい、その疲れを癒し、自分の頑張りを褒めて欲しいものです。
6.Wishing Well
- Juice WRLD
「心の内を素直に書いた切ないリリックが話題に」
先日12月2日に22歳に”なるはずだった“誕生日を迎え、そして6日後に1周忌を迎えたシカゴの若き才能ことJuice WRLD(ジュース・ワールド)。
ジュースが亡くなって1年が経った今でも変わらず、彼を惜しむ声は世界中から後をたちません。
本当に惜しい人を亡くしてしまったと思います。
今年は、4月にリリースされた「Righteous」をきっかけに、彼個人名義の”遺作“がアルバム「Legends Never Die」が7月にリリースされる運びとなりましたね。
”実はまだ生きているのではないか?“と感じさせるほどに「完璧なクオリティ」のまま私たちの元へ届けられた最後にして最期のアルバム。
その中でも特に人気のトラック「Wishing Well」は、ジュースがドラッグを断ち切るべく葛藤する切ないリリックが話題を呼びました。
“If it wasn't for the pills, I wouldn't be here
But if I keep taking these pills, I won't be here.”
-ピルがなかったらここまで来れなかっただろう。
でも、このままピルを摂り続けてたらここにはいないだろう。
ドラッグに助けられ、またドラッグに足をすくわれてしまったジュース・ワールドですが、それだけでなく生前にポジティブなメッセージも多く残しています。
彼がもうこの世にいないことが本当に悔やまれますが、彼のマインドを継承しつつ来年もみんなでいきましょう...!
ちなみに「Wishing Well」の楽曲プロデューサーは、Dr.Luke(ドクター・ルーク/ルーク・ゴットワルド)です。
ルークはMax Martin(マックス・マーティン)やBenny Blanco(ベニー・ブランコ)と並ぶポップ・プロデューサーの重鎮として2000年代初期から現在に至るまでに多くの楽曲を世に送り出して来ました。
ルークのプロデュースした楽曲は記事後半に登場するあの曲もそうです。
この記事を読み続けたらいずれ登場します!
5.HOLIDAY
- Lil Nas X
「ミームを作り、ミームに乗る男が
クリスマスを盛り上げる!」
2019年は”Old Town(=旧市街)“から”GRAMMYs(=グラミー賞)“まで一気に登り詰めたLil Nas X(リル・ナズ・X)。
カントリー・ミュージックの大御所でマイリー・サイラスの父:Billy Ray Cyrus(ビリー・レイ・サイラス)とコラボレーションした「Old Town Road」が大ヒットし、そのまま勢いに乗ってミニアルバム「7」をリリースした昨年...本当に忙しかったと思います。
今年はビッグリリースで話題になると言うよりは、お得意の”インターネット・パーソナリティ“としての立ち位置をうまく活かし、SNSへの動画の投稿や、ハロウィンのニッキー・ミナージュ仮装などでファンに話題を提供してきました。
待ちに待った新曲「Holiday」がリリースされたのは11月13日。
thanksgivingとクリスマスを控え、2020年もももう終わろうかとしているときに、ホリデー・シーズンを盛り上げるべく、彼の最新シングルがようやく世に解き放たれました。
新曲「Holiday」のプロデュースに携わったのは、お馴染みのTake A Daytripです。
敏腕プロデューサーのこの二人組は、Lil Nas Xの代表曲「Panini」のプロデュースや、Juice WRLDの「Legends」更にはトラヴィス・スコットとKid Cudi(キッド・カディ)のユニット「THE SCOTTS」のトラックも手がけています。
そんな敏腕プロデューサーのTake A Daytripがトラックを提供したという”お墨付き“もある「Holiday」。下半期ランキングで5位にランクインしました。
Apple Musicで見ると、この「Holiday」のジャンルは「Pop」になっています。
Popに、Rockに、そしてラッパーとしてhip-hopに新たな風を吹かせるLil Nas X。彼は毎度毎度、「一発屋で終わらない」何かを感じさせて来ます。その不思議な魅力は来年明かされるのでしょうか。
2021年はきっと明るい一年になるに違いありません!
4.FRANCHISE(feat. Young Thug & M.I.A.)
- TRAVIS SCOTT
「トラヴィスが“バスケの神様”
マイケル・ジョーダンの家でやりたい放題?!」
若者を始め、全世界で多くのプレーヤー数を誇るオンラインゲーム「Fortnite」とのコラボレーション、ポピュラーな大衆ファストフード「McDonald‘s」とのコラボメニューの展開、更に家庭用新型ゲーム機「PlayStation5」とジョーダンとのトリプルコラボシューズのローンチなど、今年は音楽活動以外の場所でもアクティブに業界を走り続けたトラヴィス・スコット。
コロナ禍にも関わらず、自身のマーケティングを通じて、世界をポジティブな方向へ導く姿はまさにスーパーヒーローです。
さて、下半期4位にランクインさせたトラヴィス・スコットのシングル「Franchise feat.Young Thug & M.I.A.」についてお話ししましょう。
この曲は、まず盟友Young Thug、そしてM.I.A.が参加しているということだけでもう大変です。
特にM.I.A.は、息の長いフィメール・ラッパーとして2000年代から現在に至るまでに様々なアーティストとコラボレーションしてきました。
奇抜な「Franchise」のアートワークを手がけた芸術家は、かの有名なGeorge Condo(ジョージ・コンド)。
今年、晴れてリリース10周年を迎えた、カニエ・ウェスト不朽の名作「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」のアルバムアートワーク(↓)を手がけたのもジョージ・コンドでした。
ここまで来るといかにこの作品のパワーが強大であるかがいやでも伝わって来ます。
Young Thug、M.I.A.、そしてアートワークにジョージ・コンド。そんな豪華な顔ぶれに飽き足りず、トドメにMVで“バスケットボールの神様”ことマイケル・ジョーダンも登場します。
贅沢なことに、「Franchise」のMVの撮影ロケ地はなんとジョーダンの自宅です!
MVで登場するトラヴィスがプロデュースするお酒「Cacti」(カクティ)は来年3月に発売予定なんだとか..!
次々に大物が飛び出してきてワケが分からなくなり、目が回りそうな勢いを保った「Franchise」は、殺伐とした低音にどっしりと構えたトラヴィスが織りなす空気感が見事にマッチしています。
個人的には、Young Thugの入り方と、M.I.A.が絶妙な間合いを作って終わるところがいい味を出しているのかなと思いました。
“令和のコラボ王”トラヴィス・スコット。
次はどんな企業と楽しいことを考えているのでしょうか。今からとっても楽しみです!
3.Sweet Melody
- Little Mix
「代表曲“DNA”を彷彿とさせる
究極のハーモニーは必聴!」
「Sweet Melody」は、UK発ガールズグループ「Little Mix」が11月6日に発表した6枚目のニューアルバム「Confetti」の先行リリーストラックです。
オーディションの先輩グループOne Direction(ワン・ダイレクション)や、かつてCamila Cabello(カミラ・カベロ)が所属していたアメリカのガールズグループ・Fifth Harmony(フィフスハーモニー)らが相次いで活動休止する中で、Little Mixは今年7月にデビュー9周年を迎えました。
今でも、立ち止まることなく精力的な活動をしており、世界中のファンに勇気を与えて続けています。
「Sweet Melody」はアルバム「Confetti」の3番目を飾る重要なピースのひとつです。
彼女たちの代表曲である「DNA」を彷彿とさせるような美しくも力強いハーモニーが魅力と言えるでしょう。
彼女たちは、デビューしたてのティーネイジャーだった頃から既に成熟したアーティストでした。
しかし、デビューから9年経った今でもその魅力は健在。個々のヴォーカルにも更に磨きがかかり、常に進化を感じさせてくれます。
そして先日、LMのメンバーのひとりで、一際ゴージャスな魅力を持つジェシー・ネルソンがメンタルヘルスと向き合い、問題を克服するためにグループを離れることを発表しました。
メンバーは前向きな方向で合意し、グループは3人となりました。
以前からパニック障害などを抱え、メンタルヘルスと向き合いながらも両立して活動を続けてきたジェシー。彼女に夢や希望、勇気やパワーをもらった方は本当に多いです。まずはお疲れ様と声をかけたいです。
ジェシー9年間本当にありがとう!
グループを離れるジェシーをねぎらいの「Confetti(紙吹雪)」で温かく見送りたいものです。
2.Entrepreneur(feat.Jay-Z)
- Pharrell Williams
「黒人の起業家(=Entrepreneur)たちへ
リスペクトを込めたファレルの新曲」
残念なことに東京オリンピックが延期となってしまった2020年ですが、そんな今年を象徴する出来事と言えばみなさんは何を思い浮かべますか?
新型コロナ感染拡大やアメリカ大統領選挙の次に思い浮かぶのは、やはりBlack Lives Matter(ブラック・ライヴズ・マター)」運動ではないでしょうか。
今年に限ったことで言えば、
・2月23日にジョージア州グリン郡で、マラソン中に白人の父子により射殺された黒人男性のAhmaud Arbery(アーマウッド・アルベリー)さん
・3月13日にケンタッキー州ルイスビルで白人の警察官の襲撃により命を落としたBreonna Taylor(ブレオナ・テイラー)さん
・5月25日にミネソタ州ミネアポリスで警察官の不当な暴行により亡くなったGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)さん
の事件をきっかけに、全米各地・全世界でBLM運動が活発化しました。
特に、ジョージ・フロイド氏の死後、BLM運動の熱は最高潮に達しました。また、8月にウィスコンシン州ケノーシャで黒人男性のJacob Blake(ジェイコブ・ブレイク)氏が警察官による不当な暴行により亡くなると、NBAチームのバックスが試合をストライキしました。
これらの事件は、多くの人々に社会にはびこる黒人差別を考える機会を与えたに違いありません。
アメリカでは、制度的人種差別(Institutional RacismまたはSystemic Racism)が根深く残り、生まれながらにして白人である方が将来的に成功を手にしやすい社会も実際に存在します。
この「Entrepreneur」と題されたファレル・ウィリアムズの楽曲は、文字通り“Entrepreneur=起業家”それも黒人の起業家にフォーカスした曲で、価値ある成功を手にした黒人たちがミュージック・ビデオに数多く登場します。
ビデオを見て気になった方が居たら、その黒人の起業家の方が実際にどんな活動を行なっているのか是非調べてみてください。
新型コロナウイルス感染拡大が落ち着いて、アメリカに行く機会があれば彼・彼女らが起こしたビジネスを大いに利用したいと思います。
1.ROCKSTAR(feat.Roddy Ricch)[BLM Remix]
- DaBaby
「白人の警察官による不当な暴力への抗議」
お待ちかねの下半期パーソナル・ランキング第1位の発表です。今年はやはりこの男とこの曲なしでは語れないでしょう。
DaBaby feat. Roddy Ricchの「ROCKSTAR」<BLM Remix>が1位にランクインしました!
2020年4月17日に自身3枚目のスタジオ・アルバム
「BLAME IT ON BABY」をリリースしたダベイビー。
とりわけそのアルバムの中でも、ー「The Box」とデビューアルバム「Please Excuse Me For Being Antisocial」のヒットで勢いに乗るーRoddy Ricch(ロディ・リッチ)を客演に迎えた「ROCKSTAR」は大ヒットし、ビルボードHOT100チャートで7週連続1位を獲得(それも自身初のHOT100首位獲得)するなどして混沌のコロナ禍でも成功を収めました。
海外エンタメに疎い私の母親でさえ「この曲はラジオで聴いた」と話していたくらいなので(笑)相当です。
文字通りDaBabyの代名詞的ヒット曲となった「ROCKSTAR」。
こちらの記事で取り上げたように、全米でBLM運動が歴史的にヒートアップし、抗議運動がかの有名なワシントン大行進に並ぶ規模に発展する中、それに乗る形で、「警察官への抗議文」とも取れるヴァースが冒頭に新たに追加された「ROCKSTAR feat.Roddy Ricch [BLM Remix]」が6月12日にリリースされました。
そして、この“ROCKSTAR[BLM Remix]”は最終的に、8月4日にリリースされた「BLAME IT ON BABY」のデラックス盤「BLAME IT ON BABY(Deluxe)」でトリを飾りました。
「リアルに描かれた“等身大の黒人男性”像」
「ROCKSTAR」オリジナル版、及び、警察官による黒人への不当な暴力への抗議をテーマにした「ROCKSTAR(BLM Remix)」が大きな注目を集め、高く評価された理由に“リアルさ”や“等身大の黒人男性の描写”が人々の共感を生んだことが挙げられます。
まず、2020 BET Awardsでの「ROCKSTAR」パフォーマンスは誰もが目を見張るようなクオリティです。
警察官の膝で首を押さえつけられたジョージ・フロイド氏の映像を彷彿とさせる、ダベイビーの体を張った演技は本当に素晴らしいです。
マイクを握る彼の周囲には若い少年少女が立っています。青年たちが、白人の警察官による黒人への不当な暴行や、白人によって命を落とした犠牲者
の名前がプリントされたTシャツを着ているところも注目すべきポイントです。
次に、11月9日に開催されたヨーロッパの音楽の祭典2020 MTV EMAsでのパフォーマンス映像を振り返りましょう。「ROCKSTAR」「BLIND」「PRACTICE」を披露しました。(※これらはいずれも「BLAME IT ON BABY(Deluxe)」に収録されている楽曲で、“BLIND”はあのDrルークがプロデュースしています。)
このパフォーマンスは一連のストーリーになっており、ダベイビーがランボルギーニの車内から白人の警察官に無理矢理連れ出され、羽交い締めになって連行されるところから始まります。
その後「BLIND」のパフォーマンスでは法廷闘争の場面があり、最後の「PRACTICE」で法廷の前で記者会見を行うというような内容です。
自由に身動きが取れない状態で「ROCKSTAR」のリリックを刻む表情は演技とは思えないほどリアルです。
彼が、過去に発表したミュージック・ビデオの中には「ROCKSTAR」のようなシリアスものではなく、「Suge」や、最近で言うと客演で参加した24KGoldnの「Coco」の様にちょっと笑えるようなコミカルな描写のものも多くあるのですが、やはり緊迫したシーンを描いた作品は息を飲むようなリアルさがあります。
ダベイビーには、2018年にノースカロライナ州ハンタービルのスーパー「Walmart(ウォルマート)」で銃撃事件に遭った過去があります。
その日、家族と共にウォルマートに訪れていたダベイビーは、19歳の少年に突然銃を向けられ妻を誘拐されそうになり、隠し持っていた銃で応戦・少年を射殺させてしまいました。
彼のこういった実生活での出来事が、リリックやミュージック・ビデオでの演技のリアルさを引き立てているのかもしれません。
そして「ROCKSTAR」では、この事件について触れられている部分があります。
“She know what I do, she know 'fore I run from a nigga, I'ma pull it out and shoot (Boom)
PTSD, I'm always waking up in cold sweats like I got the flu
My daughter a G, she saw me kill a nigga in front of her before the age of two.”
(俺のママは)俺のことを分かってる。(俺が)俺のことを追いかけてきたヤツを撃ち殺したことも。
PTSD(=トラウマ)になったよ。いつも風邪みたいに冷や汗をかいて目覚めるんだ。
俺の娘も立派なギャングスタだな。
俺がヤツを殺すのを2歳で目撃したんだから。
合衆国憲法の修正第2条には、アメリカ国民に銃を持つ権利を保障する条文があります。
州によって法律は様々ですが、身の安全を確保し、自分や家族を守るために銃の保有・携行を認めている州も少なくありません。
「黒人だから」という人種差別的かつ身勝手な理由で突然襲撃されるリスクを考えると、銃を携行することは決して悪いことではないのでは、と私は考えます。
「本物のロックスターって誰?」
更に「ROCKSTAR」を深掘りしていきましょう。
この曲で言うところの「ROCKSTAR」は“Have You Ever Met A Real Nigga Rockstar?”と歌われているように、”Real Nigga Rockstar” 即ち“リアルでガチな黒人のロックスター”を指しています。
一般的に「ロックスター」と聞くと、ギターを掻き鳴らしてロックミュージックを奏で歌う無骨でクールなミュージシャンを想像しますよね。
しかし、この曲では「ROCKSTAR」と言う言葉が、“ギターを持たない代わりに、お守りとして銃を隠し持っている黒人”を意味する言葉として使われています。
コーラスの初めのフレーズで、“Brand New Lamborghini, Fuck A Cop Car”(=真新しいランボルギーニ、パトカーなんてクソだよ)と言っている部分でも、この曲でいうところの「ROCKSTAR」像を見てとれますね。
(前述したファレルの「Entrepreneur」と似た話にはなりますが)
つまり、「ROCKSTAR」を簡単にまとめると、
“社会的に決して高い地位にいる訳ではない・黒人として産まれた”ダベイビーが、恵まれない環境の中でも努力を積み重ねてラッパーとして成功することで、(普通の黒人男性だった彼が)「本物のロックスター」になったよ、みたいな曲です。
一般的な「ロックスター」でいうところのギターを“銃”に見立て、「黒人でありながらも価値ある成功を手にした象徴」として曲中で登場するのが“ランボルギーニ”と言うわけです。
Want anything we good at and we cherish it
Now we all fed up and niggas comin' back for everything
Rockstars, nigga, just watch the news, they burnin' cop cars, nigga
Kill another nigga, break the law, then call us outlaws, nigga
What happened? Want us to keep it peaceful
Shoulda seen them hatin' bitches face when I bought that Lamborghini (SethInTheKitchen)
Throw up my middle finger, police can't catch me.
(アイツらは)俺たちが得意で大切にしているものならなんでも欲しがるんだ。
心底うんざりするよ。黒人たちは全てを取り返そうとしてる。
俺たちはロックスター。ニュース見てろよ、パトカー燃やしてんだろ。
また黒人を殺して法を犯したのに、俺たちはアウトロー呼ばわり。どうなってんだよ。
俺たちをおとなしくさせたいんだ。俺がランボルギーニを買った時のクソどもの悔しそうな顔といったら...
中指を立ててやる。警察には捕まらねえよ。
ダベイビーの力のこもった「BLM Remix」の警察への抗議を綴ったヴァースには心を動かされますし、何回聴いても本当にカッコいいです。
「ひとりの黒人男性」として産まれ、根深いレイシズムが残る理不尽な社会を目の当たりにしながらも、ラッパーとしてコンスタントに作品のリリースを続けることで価値ある成功を手にしたダベイビー。その姿はまさに「本物のROCKSTAR」です。
先日公開されたXXL Magazineのインタビューで、「Billion Dollar Baby Entertainment はホットなレーベルになるに違いないね。5年後にはラッパーを引退して、スーパースター育成にも力を注ぎたい。」と話していたのも印象的でした。
これからも、リアルな描写で、等身大の黒人男性としてありのままの姿をラップし、ヒットを飛ばす彼の背中にブラック・コミュニティの未来を託したいなと思いました。
来年以降も、彼の更なる活躍に期待します。
Postscript-あとがき-
今回の記事の余りのボリュームに、みなさんも読んでいてだいぶ疲弊してしまったのではないでしょうか。
ここまでついて来て下さった方には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
貴重な時間を割いて、今まさにこの記事を読んでくださっている方へお礼を言わせて頂きます。
本当にありがとうございます🙏🏼
ダベイビーの「ROCKSTAR」を上半期ランキングに入れなかった理由は、「BLAME IT ON BABY」のデラックス盤がリリースされたのが8月だと言うことも踏まえています。
「ROCKSTAR」はオリジナル版を上半期ランキングに入れる予定だったのですが、上半期ランキングの1位はエミネムで既に決定していたので、じゃあ深掘りするならBLMバージョンも出たし、時事ネタを織り交ぜながら下半期の1位にして長編で組むか...という感じで。
決して「ダベイビーが好きだから贔屓目を使って、無理矢理理由をつけて下半期1位にブチこんだ」と言うわけではありませんよ!(笑)
本note「THE GARDEN KEEPS SECRETS」の最終的な目標は、音楽や海外セレブニュースと社会を結びつけることで、世界がより良いものになる為にみなさんが考え、小さな一歩を踏み出せるような話題を提供することです。
海外セレブニュースや、アメリカのhip-hopシーンと「社会問題」は切っても切り離せない関係にあります。
カオスな社会情勢の中で、海外セレブやラッパー、更にNBAをはじめとするスポーツ選手たちが何を考え、どんな行動をして社会を導いていくかを最前線で見つめていきながら、こういった記事を書いてみなさんに届けていくつもりです。
なんだか「音楽まとめ」記事にも関わらず、最後にちょっとお堅い感じになってしまいました。
硬さこそ、このnoteの魅力なのかもしれません...!
2021年も前を向きながら、このカオスの海を泳ぎ切りましょう。
今年のnoteはこれで終わってしまうのでしょうか..?
もしかしたらもう一本記事があるかも。
と言うことで、長丁場になってしまいましたのであとがきも上手くまとまったここで締めたいと思います。感想やシェアなどはお好きにどうぞ..!
それではまたnoteでお会いしましょう。
御賽銭箱はこちらです。(笑)