アイソトープの医療応用
医薬品は、古くは19世紀にアヘンやキニーネなどの植物由来薬の研究から進展し、アスピリンなどの有益な化合物の誕生に繋がった。生物学や薬学の研究が盛んになった20世紀はあらゆる治療領域において多くの低分子化合物が治療薬として開発された。また、バイオ医薬品は、ホルモン類のほかに21世紀に入って抗体を応用するバイオテクノロジーが当たり前になり、世界中の患者が恩恵を受けている。さらに近年、治療用の放射性医薬品が新たな抗がん剤として世界で脚光を浴びている。放射線の癌治療への応用といえば外照射である。そして体内に放射性同位元素(アイソトープ:RI)を投与する治療法として、1940年代から放射性ヨウ素がバセドウ病の治療に使用されてきた。また、放射性医薬品は診断用としても現在広く使用されている。そして近年、欧米では治療用放射性医薬品が研究開発されており、診断用放射性医薬品を用いた可視化された腫瘍診断とともに用いることで、より精密な医療、個別化医療の実現につながると考えられている。