利口だけど不器用な主人公 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)
2763人の犠牲と共にNYに住む大勢の人が大切な何かを失った9.11
アスペルガー症候群の兆候のある利口だけど不器用な主人公もまた、唯一自分を対等に扱ってくれる父をWTCの崩壊で亡くしていた
父は生前、少年のトリセツ代わりの名刺を作り、聴き込みと称しいろいろな人の話を聞いてまわる調査研究という経験をさせていました。
父の死から一年後、遺品の中から1本の鍵を見つけることから父を辿る調査研究が始まります。
飛ぶもの、叫ぶ人、泣く人、走る人、見上げる人など崩壊を連想させるモノゴトが嫌いになり公共交通機関は「知らない人に粉々にされる」という恐怖に囚われている少年の移動手段は徒歩。
少年の言動には全て理由があり、目標に向かっての行動は真っ直ぐ。折り合いつけたり妥協は絶対にできないので、空の棺の葬儀で父を片付けてしまった母や親族とは距離ができていました。
いろいろなブラックさんと面会していく少年だったが父と同じ癖をもつ物言えぬ父の父が調査に同行することにより地下鉄や橋など苦手なものを少しずつ乗り越えていく。
その過程で少年を動かしていたものは父を失った悲しみではなく父の最後の電話に怖くてどうしても出れなかったという罪悪感と後悔によるものだとわかる。
最終的に鍵は少年の期待していた答えには導いてはくれないものの、思いがけずもらった許しの言葉や、母もまた自分を理解し、見守り、愛してくれていることに気づき父の死を少し乗り越え、関わった他者の人生にも興味をもつようになった。
この映画ではアスペルガー症候群を利口だけど不器用な人と表現していたのがとても印象的で、こちらが向き合って理解を諦めなければ自閉症の人とも対等な関係を気づけるのかなと思いました。
自分の価値観だけでは理解できないことも、先入観を持たずに接すればそこにはその人なりの理由がある。
NYはブロンクス、マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、スタテンアイランドという5つの自治区に分かれているということも知り、それぞれの地域が舞台の映画があればその違いも今後見ていきたいと思います。
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