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マシーン日記 21.03.08

長い割に中身がない内容です。考察とかそういうのではなく感想文。言いたいことわーっと書いただけ。
オタクというマシーンである私の日記。


心底楽しみにしている日に不運に見舞われることを自覚している(特にここ数年ひどかった)ので、チケットを手にした日から、ありとあらゆる不運を想定して脳内シミュレーションを行ってきた。楽しみな気持ちをツイートすればそれが不運への振りになりそうな気がして、ロームシアター京都が視界に入るまで異様にソワソワしていた。

まっさらな状態でステージや演者の熱を感じたいから、生の舞台では基本的に予習しない。公式のあらすじも更新された日に読んだら観劇するまであまり読み返さない。とにかく演者と自分の間に他人の感性を挟みたくないという持論のもと、今回も「鎖で繋がれた横山さんを拝める舞台」くらいの前知識で挑んだ。

客席の静かなざわめきに混ざる音響の金属音がミスマッチで面白い。久しぶりに双眼鏡のピントを合わせながら、変わった作りの舞台装置を眺める。
客電が落ち、トランス状態へ誘うような音楽の音量が増す。この時点で「もしかしなくても、かなり狂った舞台かもしれないな」と思った。

事実、狂っていた。
正直 好きか嫌いかで聞かれたら好きとは即答できないストーリー。
幕間時点での感想は「わからない」、終演直後はやや嫌悪感さえあった。なのに観劇後もぐるぐると考えてしまう。多分これ書き終わったあともずっと考えてしまう気がする。

終演直後の嫌悪感の正体は、ミチオ・サチコ・アキトシ・ケイコへの既視感だなと着地した。
小さな町工場に、狂ってる4人。そのひとりひとりに、多かれ少なかれ自分と似てる部分があって、それが暴かれたような感覚。
4人は狂ってるというか、弱い人間の集まりなのかもしれない。社会的にも弱い。自分の欲にも弱い。そんな4人がそれぞれが誰かのマシーンとしての役割を担ってた。だから日記形式のナレーション部分は誰かが固定されてたわけではなかったんだろうなと思ってる。

4人それぞれの弱さに嫌悪感持ちつつ共感できるんだけど、個人的にはミチオが一番わかってしまうからしんどかった。

「コレだから」と自分の足にある鎖を見るミチオは、現状を諦めてるわけでもなく 憤りを感じてるわけでもない。アキトシの監禁下でなら、学歴がなくても内定先で働かなくても許される。監禁されてて仕方がないから。仕方がないから、「コレだから」、現実と向き合うことからも、社会人としての責任からも逃げることができる。
アキトシが一生釈放するつもりがないと聞いても大きく動揺しないのは、その方がミチオにとって好都合だからだと感じた。監禁されることが嬉しいわけではなく、仕方がない現状が延長されることに安堵してるだけ。
就職という人生の大きな節目で、劣等感を抱えながら頑張るよりも、浮かないように頑張るよりも、プレハブ小屋での監禁を「仕方なく」受け入れてしまう方がミチオにとっては楽なのである。
仕方なく受け入れてる体の監禁下で、かつての自分を知る同級生の私生活を夜な夜な盗聴して、彼らよりはマシだと思い込む生活をする。
その心理が、少しわかってしまうから苦しい。自己嫌悪や劣等感で動けないほどどん底にいるとき、ずるずると楽な方へ行ける免罪符を探してしまう。免罪符を手に入れて楽な方に舵を切っても、それがまたさらに自己嫌悪となり、ますます現状から脱することができない。だから他人の不幸を見聞きしたくなる。
ウーッ、身に覚えがありすぎて辛い。そりゃサチコに一緒に逃げようと言われても逃げたくないわ。

ミチオはこの楽な生活をずるずる続けるためにアキトシというマシーンが必要だった。
ミチオにとってのサチコは「仕方ない監禁生活」のトリガーとしてのマシーン。

サチコにとってはアキトシが「主人公でいられるためのマシーン」だったのかもしれない。曖昧な物言いで、決定権を他者に渡して、悲劇のヒロインの完成。

アキトシにとってサチコとミチオは「自分の存在を肯定するためのマシーン」だと思う。6本指だからテレビ放映をカットされたように、弱さを見せるとすぐ消されてしまう立場。町工場の中でなら社長で、サチコの夫で、そしてミチオの支配者として君臨できる。誰にも無視されない。

ケイコはケイコでかなりこじれててすごかったな。ケイコは「あんたのマシーンになる」と言いつつも、ミチオにかなり多くを期待していたようにも思える。
登場すぐのシーンで「教師は生徒の自殺止めようとしても給料に反映されない」みたいなこと話してたから、アンフェアな関係を嫌ってるのはわかる。
もしかしてケイコは夫からきちんと愛されていたのではないかなと。でもインターセックスの自分が夫に還元できるものは少なくて、そんなアンフェアな関係は破棄しようとしたんだろうな。離婚して彼を自由にしてあげようと。
ケイコはミチオのマシーンになると言いながらも、ミチオを自分の人生におけるマシーンに組み込んだんだと思う。愛を貰っても返せないから、マシーンになってあげるよと宣言することで、フェアな関係構築させたかったのかなとか。

考えすぎて混乱してきた。
ここまでがまっさらな状態で受け止めての感想文。
そろそろいろんな方の感想を読んでこよう。


以下ストーリー外の感想
・ダンスシーンのミチオがバチバチに踊ってて一瞬コンサートに来たのかと錯覚した
・カテコの横山さんが客席すべてに視線をやって、お手振りして、短いカテコなのに満足度が高かった こういうところが好きなんだよな オタクやめらんねえな



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