
『小林誠さんとタコ戦車』
デザイナーの小林誠さんに初めて会ったのはボクがまだ二十代。と言っても限りなく三十路に近い二十八歳の頃だったと思います。 安彦良和さんの映画『ヴィナス戦記』の助監督をやっていたときのこと。敵側のメカデザインをお願いすることになって有名な高円寺純情商店街にほど近い小林さんの仕事場に伺うことになりました。
八百屋さんや肉屋さんなどを横目に商店街を歩いてまもなくの所に仕事場はありました。
外階段を上がった軒下に両手を広げたくらいの大きな空自F104戦闘機の自作ガレージ模型がピアノ線でつり下げてあるのに目を奪われ、中に入るとびっしりと数え切れないガレージ模型の山にさらにビックリ。本当にすごいです。
初めてお会いする小林誠さんは舞い上がっているこんなボクにも穏やかに接してくれて素人の質問にも丁寧に答えてくれました。
映画用に小林さんが作ってくれた敵側の超重量級戦車『タコ』は重さを支えるための四本のキャタピラと上部に複数の砲塔を装備する個性的でかっこいいデザインでした。 構造が複雑でシンメトリーなデザインではないところがアニメーター泣かせ。当時はまだ若手のアニメーターだった川元利浩さんが『タコ』の模型を机に置いて、建物を踏みつぶしていくアクションを懸命に書いていたことが思い出されます。
小林さんとはその後『青の6号』で再会して、
『ラスエグ』で初めて監督とデザイナーとして仕事をご一緒することになりました。
ラスエグでは主にギルド側のデザインを担当して、ちょっと不思議さを漂わせる素敵なデザインを沢山作ってくれました。その中でも個人的に気に入っているデザインは、巨大な海洋生物を思わせるギルド戦艦とギルドの立ち会い船のコクピット。
ギルド戦艦は真っ赤なマエストロ・デルフィーネの座乗艦が最高です。