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植物のバックアップ //220223四行小説
台所に置いていたベンジャミンが枯れかけてるからバックアップを取った。ベンジャミンとは観葉植物のことだ。コーヒーの木に似て茎は木肌のようで葉は斑入りのポトスに近い。そいつがどうしてか急に葉を落としつつある。水は一昨日あげたはずだし、冬だから虫が付いていることも考えにくい。恐らく根詰まりだろうかと予想を立てつつ、一思いにまだ綺麗な葉が三枚ほど付けた状態で茎を切った。三本ほどそれを作り、適当なコップに水を張り入れる。これで一応バックアップ処理は完了。成功かどうかは未来に乞うご期待。
それから二週間、鉢植えのベンジャミンは更に葉を落として、対するバックアップはうまくいったようで新しい根が生えていた。大本の鉢の何が悪かったのか分からなかったから、水はけのいい鉢と違う土を用意してバックアップを植えてしまう。葉の一枚も無くなった、見るも無残で寒冷地で凍った針葉樹林のような鉢をどうにかせねばなるまい。今から生き返るかは定かではないが、出来る対処はしておくに限る。
ひとまず鉢からベンジャミンを抜こうとするも抜きにくい。土を掻き、茎を揺らしてなんとか出てきたそれは根がしっかりと張り巡らされていた。やっぱり根詰まりだ。死んで真っ黒の根も多い。土は濡れているのに、根が多い中心の方は乾燥気味だった。うまく水を飲めなかったらしい。株を分け、死んだ根をちぎり生きた根は優しく洗う。根まで死んでないなら可能性はある。たぶん。
ひとまず余分な物をとってすっきりさせたベンジャミンを水に挿す。生きているなら、またそのうち根が出て葉を繁らすだろう。
葉の無い茎は茶色くて、どう見ても葉緑素は無い。水がこの貧相な茎に何をもたらすのだろう。私にはこの程度のことしか出来ないのに、彼はまだ生きようと頑張れるのだろうか。
植物のバックアップとパソコンのデータバックアップの違うところは、完全なイコールではなくあくまで二アリーイコールだということだろうか。遺伝子は同じだが、個体は違う。だから元気な葉の鉢とひょろひょろした茎を見比べて、安堵と申し訳なさに苛まれ頼む生きてくれと願わずにはいられない。