クジラの骨 //221006 四行小説
「クジラの骨が浮いている」
隣の君が指さした先には、夕暮れの光を受けた雲が暮れつつある空に浮いていた。赤みがかったオレンジと白が斑になった筋雲は確かにクジラの骨のようで、右から左へと空を大きく占めている。
骨の後ろには淡く光る円があり、何の光かと目を凝らせば雲の裏でしめやかに輝く月らしい。
「なら、あれは?」
聞けば、そんなことも分からないのか? とでも言うように目を開き、呆れたように笑いながら言葉を吐いた。
「伴侶のいる証に決まっているだろう」
雲の加減で、丸い光は輪のようにも見える。あれは結婚指輪だったのかと、空を仰ぎ秋風を頬に浴びた。
空のクジラは伴侶と共に夜を待つ。