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天官賜福⑱◆(謝憐vs鬼賭坊城主)魔翻訳した感想と考察

◎注意点◎
・翻訳媒体は晋江文学城(簡体字版)であること
・筆者は先にアニメ版を見ていること
・ネタバレ苦手な方は閲覧推奨しません

今回は36~37章あたりに触れていきます。

謝憐と花城が互いに自分自身を賭けの報酬にして勝負をすることになったところから始まります。
知恵比べみたいでちゃんといい勝負だからおもしろかったです。
この部分はアニメ版にはないストーリーでした。



◆謝憐が決めた賭けのルール◆

①花城が賭盅の中に何かを入れる。
入れる物は花城の自由。
②賭盅を謝憐が中を見ず受け取る。
見ることはできないがそれ以外の方法で探るのは可。
③花城が謝憐に賭盅の中身を二択で出題する。
ただし第1~4戦までは【生死】【方円】【明暗】【赤白】のどれかから出題すること。
第5戦目だけはこれに限らず花城が自由に二択を出題する。
④謝憐が当てれば勝ち。間違えれば花城の勝ち。
⑤全5回戦、3勝した方の勝利。

謝憐が手に持っているのが賭盅



賭坊の大広間は前代未聞の大勝負に人も鬼も押し寄せすぎて、密集度は限界を超えており決壊しそうなほどでした。
謝憐は全神経を集中させていたのでギャラリーの多さに気付いていません。そしてまさかこの戦いが天界にもすべて見られていることにも気付いていませんでした。




その頃、天界では小宴が開かれており大小さまざま神官が集まって酒を酌み交わしていました。
天界って飲み会とかあるんですね。大小の神ってことは上天庭の神官だけじゃなく中天庭の神官たちも集まっているんでしょうか。小宴だし大宴会ってほどではないから、集まりたい人だけ集まっておいで~みたいな自由な宴会かもしれないですね。


突然霊文が「皆さん、銀鏡をご覧ください」と言いました。
宴会場にはいくつかの琉璃銀鏡が設置されており、これは宴の余興として外界の様子を映し、楽しむためのものだそうです。
鏡の形をした街頭カメラみたいなものだと思われます。『神の目線』や『神々の遊び』ってこういうのを指すんでしょうね。
裴茗が「何か面白いものが映っているのか?」といちばんに声をかけてたんですけど、裴茗が宴会に参加しているのが解釈一致すぎてちょっと笑ってしまいました。好きそうですもんね、こういう賑やかな宴の場。


銀鏡に映し出されたのは鬼賭坊の中の様子でした。花城と謝憐がちょうど勝負を始める直前のタイミングです。
しかし鬼市には普段外部からの覗き見をさせない結界が張られています。にもかかわらず、先程突然見えるようになったそうです。
なぜ突然見えるようになったのかは記述がありませんでしたが、おそらく花城がわざと天界に見えるように(というより見せるために)結界を解いたのかな?と思います。先に言ってしまいますが、この勝負が終わった瞬間にパッと結界が張られ再び見れなくなるので、そんなことができるのは鬼市の領主である花城だけだと思われます。


すーーんごく驚いたのが、慕情が宴会場に入ってきたこと。
慕情ですよ?慕情が宴会に来ることあるんですか!?裴茗ならわかるけど慕情が来るとは思わなくて心底驚いてしまった。
でももしかすると慕情は銀鏡に映る鬼賭坊が見えたから来ただけかもしれないです。「これはどういうことだ?」って言いながら入ってきたので。
でも宴会場の近くにいないと銀鏡に映っているのも見えないですよね…?それか謝憐がさんざんいじってる通り常に通霊陣に張り付いているから話が聞こえて宴会場まで足を運んだという可能性もあります。玄真将軍て暇なの?


銀鏡に映った人物の顔まではよく見えないものの、本尊を知らないとはいえ赤い衣と雰囲気で明らかにそれが血雨探花であることは明らかです。
「この鏡はもう少し近付けないのか?花城がよく見えない!」
「彼は賭けに参加しているのか?いつもは参加しないはずなのに…」
「お前たちはどうしてそんなに血雨探花の習慣に詳しいんだ?」
などといった会話が飛び交っています。普段こっそり鬼市へ遊びに行っている神官が紛れ込んでいますねぇ!


赤い衣の男が血雨探花だとして、では向かい側に座っている白い衣は誰なのか。白い衣の人物が「城主様、どうぞ開始を」と声を掛けます。
慕情と風信は思わず声を揃えて「「太子殿下!?」」と叫びました。
風信も居たの?君も宴会とか参加するタイプなんだ…ふーん…。


慕情は前に立っていた神官たちを全部押し退けて銀鏡の前に立ち「なぜ鬼賭坊へ!?花城と賭けをするなんて正気か!?」と焦ったように言います。
そりゃ驚きますよね。与君山にも半月関にも扶揺が無理やり同行してたのに今回は知らぬ間に鬼市まで行かれてしまったのだから。
今回は君吾から直接『潜入捜査』として行かされてますし、鬼市は法力を制御されてるので通霊陣も使えません。そのせいで常に通霊陣に張り付いている慕情でも情報が入ってこなかったんでしょうね。
風信なんてもっと気の毒ですよ。888万功徳という莫大な借金を肩代わりしてあげたというのに、慕情とともに鬼市行きの補佐候補者の中から真っ先に除外されたんですから。




一方、鬼賭坊では花城が微笑みながら席を立ち、ゆっくりと謝憐に歩み寄りながら「敢えてお尋ねしますが、賭盅の中のものは生きていますか?それとも死んでいますか?」と質問しました。

第1戦
賭盅の中のもの ⇒ 死霊蝶
謝憐の探り方  ⇒ 燃陰符の使用
花城の出題   ⇒ 生か死か
謝憐の答え   ⇒ 死
勝敗      ⇒ 謝憐の勝ち(1勝0敗)

燃陰符とは死魂や陰気に反応して燃える仕組みになっている符です。
死霊蝶はその名の通り死魂のようなものなので、謝憐が賭盅にこの符を近づけると火もないのに符は燃えてしまいました。よってこれは「死んでいるもの」と判断し、正解しています。


花城がちょっと意地悪したなと思ったのは、死霊蝶は死霊ですが動いているので、賭盅の中にいて見えない状態だとまるで生き物がいるかのように感じてしまうこと。
音や気配などで中のものを感じ取ろうとした場合は誤解してしまいそうですが、謝憐は燃陰符という便利グッズを持っていたおかげで正解を引けました。


銀鏡で見ていた神官のひとりが「もし花城が賭盅の中に石を入れていた場合はどうなるんだ?それも死物だが命あるものではないから燃陰符ではわからないのでは?」という疑問を口にしますが、霊文が「天界や鬼界で『生死』と言えば、生き物の生死を指します。だから石は対象外です。それに血雨探花がそんな言葉遊びをするとは思えません」と解説していました。



第2戦
賭盅の中のもの ⇒ 銀の葉
謝憐の探り方  ⇒ 掌力で加熱
花城の出題   ⇒ 赤か白か
謝憐の答え   ⇒ 赤
勝敗      ⇒ 謝憐の勝ち(2勝0敗)

「彼は掌力を使って賭盅の中の物を加熱し高温にしたんだ。どんな物でも熱されて赤くなるだろう。だから赤色と答えれば間違いない」って慕情が軽く鼻を鳴らして得意げに解説してました。かわいいね慕情。
物がそのままの状態じゃなくて熱して色を変えてしまうなんてインチキのようにも見えますが、これは知恵比べの勝負でもあるので、賭盅を開けるまでの間ならそういった小細工もアリなんだと思います。
勝負を始める前に謝憐が妙に自信ありげだったのはこれが理由だと思われます。なんていうか、得意そうですよね太子殿下って。こういうインチキ。


神官のひとりが「でも、もし中に白い紙が入っていたらどうする?そんなものは熱に耐えられないから赤くはならないだろう」と言いましたが、それにも慕情が「むしろ軽くて薄いものなら簡単だ。掌力で燃やしてしまえば、中には何も残らない。そうなればこの局は無効だろう」と答えてました。
中に物が残っていてこそ『赤か白か』の質問が成り立っているので、燃えて消えてしまうようなものを花城なら入れないということです。


花城は銀でできた葉を入れていたので、葉は加熱されて真っ赤になっていたそうです。
謝憐が「城主にお答えします。この物は赤です」と答えて賭盅を開けた瞬間は中からほかほかの白い煙が立ち昇りました。勇気ある小鬼が指でチョンと触ってみると賭盅は熱すぎてすぐに手を引っ込めるほどだったのに、謝憐は涼しい顔で持っていたので手の皮どうなってんの?と思わざるを得ない。


掌力っていうのは解説はありませんでしたが法力ということでいいと思います。『法力を競う勝負』みたいな記述はあったので。
謝憐は『呪枷により法力が封じられている』というのが前提なので、てっきり法力ゼロかと思ってしまいますがゼロではないみたいです。
通霊陣を使うにも法力が必要ですがそこに関しては誰かから借りることもなく通霊しているので、僅かな量ならあるみたいです。本当に僅かなので途中で通霊が途切れることもしばしばあります。



第3戦
賭盅の中のもの ⇒ ふたつのサイコロ
謝憐の探り方  ⇒ 掌力で高速回転させる
花城の出題   ⇒ 丸か四角か
謝憐の答え   ⇒ 丸
勝敗      ⇒ 謝憐の負け(2勝1敗)

謝憐が提示した、花城が出題する二択ルールの【方円】に該当します。あまり聞き馴染みのない言葉ですが四角形(方)と円形(円)という意味らしいです。


謝憐が丸だと答えると再び掌力を使って細工をします。賭盅の中では硬いサイコロが大きな音を立て激しくぶつかり合うことで角を削り丸い形へと変えていました。
しかし謝憐の背後に立った花城が笑みを浮かべながらわずかに身をかがめて、左手を賭盅に添えて「そう?兄さんは本当にそう確信してるの?」と問います。
謝憐もしっかり目を合わせて「私は確信しています」と答えましたが、ふたりの手が添えられた賭盅からは先程よりも大きな振動が起こっていました。

掌力バトルだ~~~~!!!!


お互い見つめ合って手元は見ちゃいないけど賭盅の中はとんでもないことになっています。サイコロを高速回転させて角を削ろうとする謝憐と、サイコロの動きを止めようとする花城。これじゃインチキできないじゃん!
こうなると謝憐の分が悪くなってきます。このまま力を衝突させ続けたらサイコロどころか賭盅が割れてしまいますし、何より我慢比べに持ち込めば鬼王に勝てるはずもありません。


第3戦も天庭での解説役は慕情でした。風信は謝憐がサイコロを回転させたあたりで謝憐の勝ちを確信するという盛大な負けフラグを立ててくれました。


サイコロがぶつかり合う音は次第に弱まり、謝憐は「この勝負は私の負けです」と諦めました。花城も手を放し「兄さん、ありがとう」と微笑みます。
この「ありがとう」は『勝負を続けさせてくれてありがとう』という意味かなと思います。謝憐の3連勝であっさり終わったらおもしろくないですし、鬼市の主がそんな無様な負け方するわけにもいきません。天庭にも見られてますし。
賭盅の蓋を開けると歪な形になってしまったサイコロだった物。でこぼことした形にはなってるので『円』ではなく『方』ということで花城の勝ちです。



第4戦
賭盅の中のもの ⇒ 灯(火をつけられるもの)
謝憐の探り方  ⇒ 掌力で火をつける
花城の出題   ⇒ 明か暗か
謝憐の答え   ⇒ 明
勝敗      ⇒ 謝憐の負け(2勝2敗)

【明暗】の勝負では中身がなんであれ、火をつけてしまえば炎が揺らめくので【明】と答えるだけでよいことから、一見いちばん簡単そうな二択でした。
しかし花城はにっこり笑いながら「兄さん、この勝負また負けだよ」と言います。
あまり納得いってない謝憐は賭盅を開けて確認しますが、中の灯にはしっかりと火がついています。困惑しながら「灯火は【明】であるはず。城主が私の負けと判断した理由はなんですか?」と尋ねました。


すると花城が指を鳴らし、その瞬間賭坊内の無数の灯が次々と火を灯し始めました。光は瞬く間に広がり賭坊の外、さらには鬼市全体までもが昼間のように明るくなり、夜空を照らし出します。
この絶景ともいえる灯の前では謝憐の手元にある小さな炎は【明】とはいえません。
花城が微笑みながら「兄さん。この判定、納得してもらえるかな?」と聞くと、謝憐は周囲を見回し微笑んで「千灯が照らす光景は美しさに尽きない。心から納得です」と返しました。

おもしろい!!


この勝負ってあくまで賭盅を開けた時にどうなっているかなんですよね。
賭盅の蓋を開けなければ中は暗闇なので謝憐の灯した火は【明】になったと思いますが、明るい場所で見ればロウソク1本くらいの火はまったく明るくないです。私も趣味でキャンドルとか使いますが電気ばちばちつけた部屋だと火がついてること忘れそうなくらい存在感じないですもん。
しかも花城の魅せ方がいいですね。賭坊内の普通の灯りだけで「これが【明】だよ」とか言われても「ま、まぁ【明】ですね…」くらいの反応になりそうなものですが、鬼市ごと【明】にしてしまえば誰が見たって文句ないです。


これが鬼市の主ですか。さすがにかっこよすぎました。
芳心持ってきてバラバラにされちゃった『黒衣の男』にも見せてあげたかったな。君が喧嘩売った相手はこの人だよって。ところであんた誰だったのよ。



第5戦◎(最終戦)
賭盅の中のもの ⇒ 一輪の紅い花
謝憐の探り方  ⇒ 燃陰符の使用
花城の出題   ⇒ 生か死か
謝憐の答え   ⇒ 死
勝敗      ⇒ 謝憐の負け(2勝3敗)

第5戦目だけは花城が自由に二択を出題できるので、もしこれが『苦いか甘いか』といったような質問であればお手上げです。
しかし花城が出した質問は【生死】でした。


【生死】は第1戦でやったのになぜまた出題してきたのか少し戸惑う謝憐ですが、1戦目で霊文が解説していた通り天界や鬼界で言う【生死】は生き物のことしか指さないので燃陰符を使えばわかることです。
謝憐は再び燃陰符を取り出し賭盅に近付けると符は燃えませんでした。符は【死】に対し燃える仕組みです。


あとは【生】と答えるだけですが、謝憐は花城をじっと見つめてしばらく考え込んでいます。
花城は相変わらず笑みを浮かべていますがその笑みには邪気を帯びたものが浮かんでおり、お互い無言で見つめ合っていましたがやがて花城の方から「どうしたの兄さん。まだ答えは言わないのかな?」と切り出しました。


謝憐はしばらく黙っていましたがようやく口を開きます。彼が出した答えは【】でした。


燃陰符は燃えなかったのだから中に入っているものは【生】のはずなのに、なぜ【死】と答えたのか困惑する観戦者たち。まさか言い間違いではないだろうかという心配までされます。
「兄さん、悔いはない?」と花城が念のため確認してくれましたが、謝憐はゆっくりと頷きました。花城が低く笑いながら片手で賭盅を開けると、中にあったのは【】。一輪の美しく咲き誇る紅い花でした。
負けても謝憐には少しの悔いもなく、ただ笑って「花の下で死のうとも、心はなお香る」と言いました。
(多分ですけど、800年前に謝憐が「身在無間、心在桃源(身は地獄にあろうとも心は天国にある)」という言葉を残した時と似たような意味のセリフかなと思います)


花は呼吸をしているので【生】なんですね。花といえば謝憐。花冠武神であり彼自身も花が好きです。
これは私の想像ですが、もし謝憐が勝ったら花城はこの一輪の花をプレゼントするつもりだったのかもしれないと思いました。
でも謝憐は負けてしまった。しかも、わざと。


なぜ【死】と答えたかに関しては、もう少し後のストーリーで記述があったのですが先に今ここで明かしちゃいますね。
燃陰符を使えば生死を見極めることは可能であり、実際に符は燃えなかったので中に入っていたものは【生】で間違いありませんでした。ですがもし【生】と答えた場合、その場で中のものを殺して確かめるという方法が生まれてしまいます。
謝憐は花城がそんな方法を取るとは思っていません。ですが賭坊内に居た者たちはどうでしょう。たとえ中にいたものがウサギや小鬼、はたまた人間であったとしても彼らならお構いなしに喜んで『殺して確かめよう』と言うはずです。
そういった賭けのやり方を彼らが覚えてしまわないように謝憐は【死】と答えることで『殺して確かめる』という発想を彼らに生ませないようにしたのでした。


花城はこの場ではいつも通りな振る舞いでしたが実は内心モヤモヤしてたらしいです。
あとで別の場所でこのとき使われた一輪の花を取り出して見せて「兄さんはわざと勝ちを譲ってくれたと思っているけど、俺に誤解があるかな?まさか俺がこの花を駄目にするとでも?」と真剣に問い詰めてたので、自分が(兄さんの大好きな)花を潰したり燃やしたりするような奴だと思われているのだとしたらめちゃくちゃ嫌だったんでしょうね。
ていうか花城て問い詰めるにしても言葉選びがすごく上手だなと思いました。こういう時ってつい喧嘩腰になったり「俺のことそういう奴だと思ってたってこと?」って聞いちゃいがちだと思うんですけど、「俺に誤解があるかな?」と付け加えることによってちゃんと反論の余地を与えているし、「わざと負けてくれた」ではなく「わざと勝ちを譲ってくれた」と言うところもすごくいいなと思います。



賭坊の観戦者たちは最後に何かしらの大逆転があるのではないかと期待していたので溜め息をつきます。
銀鏡で観戦してた天界の神官たちも「どうして負けたんだ?勝てるはずだったのに!」と悔しそうに嘆いていましたが、そのときブツッと中継が切れてしまいます。鬼市には再び結界が張られました。




「兄さん。五局三勝、俺の勝ちだ」
「うん、その通りだ」
「だから兄さんには少し付き合ってもらうしかないね」

すると賭坊の人混みの中から鬼の面をつけた男が出てきます。まわりの鬼たちから【下弦月使】と言われていました。
下弦月使は謝憐に対してすぐに身をかがめて礼をします。彼が案内をする場所までついていくことになりました。

二歩ほど進んだところで謝憐は振り返り、「君は来ないの?」と花城に尋ねます。
謝憐はこの勝負の前に「城主に一晩お付き合いいただきたい」という非常に誤解されかねないセリフを吐いてしまったため、今のセリフもまるで片時も花城と離れたくないかのような、あるいは夜を急かしているような言葉に聞こえてしまい傍らの女鬼たちはくすくすと笑います。
謝憐自身もそのことに気付き、思わず顔を赤くして自分を地面に叩きつけたい気持ちになりました。
厚顔無恥はどうしたんですかね太子殿下ぁ!


花城は笑って「兄さんには【極楽坊】で少し待っててもらうね、すぐに行くから」と言いました。

さんらぁん!!!!!!


待ってるんじゃなくて待たせるんですね…あえて待たせるのか……えっちだ…
【極楽坊】とは花城のお休み処だそうです。花城の家という解釈でいいと思いますが、花城的には『帰る場所』というより『休む場所』って感覚らしいです。
小鬼たちが言うにはそこには今まで誰も入れてもらったことがないんですって。
謝憐と青玄と千秋が探ろうとしていた『鬼市の主の屋敷』がここですね。





極楽坊へ案内する下弦月使の後ろをついていく謝憐。
賑やかな鬼市の中心地からは離れたそうなので、鬼市はどこもかしこもお祭り騒ぎしてるわけじゃなく町みたいになってるのかもしれないですね。いちばん目玉な鬼賭坊がある繁華街エリアもあれば、お休み処にするのに相応しい静かなエリアもあるってことか。


下弦月使は驚くほど存在感が薄いらしく、次第に彼が歩くたび闇に溶け込んでいくような気がして謝憐は見失わないよう距離を詰めながら歩いていたそうです。
実際に「殿下、到着しました」と言われて謝憐が顔を上げた瞬間にはもう居なくなってました。
…これ別に下弦月使が急いで退散したわけじゃなくただ存在感薄くて消えたと思われてただけだったらちょっとおもしろいですね。
下弦月使の後ろを歩いていたときに謝憐は、彼の手首にとても見覚えのあるものを見つけます。呪枷です。呪枷は罪を背負った神官にはめられるものなので、下弦月使は鬼の面で顔を隠していますが元神官であることだけ判明しました。
………判明したのはそれだけです。なんせ存在感が薄くて…。



謝憐が連れてこられたのは湖の前でした。
湖面では鬼火が追いかけっこをしていて、水辺には華麗で妖艶な赤い高楼。【極楽坊】です。

極楽坊の内部



中に入ると大広間には赤い絨毯が敷かれ、女鬼たちが真っ白な素足で自由に回り続けており、それぞれが謝憐の前を通るたびに挑発的な視線を送ってきます。
この女鬼たちは身を売っていた女性が死後放置され、その死体が化けたものです。生前は人のために歌い舞っていましたが、死後はようやく自分のために踊れるようになったのでこうして自由に回っているそう。
しかし天井の琉璃鏡には彼女たちの真の姿が映し出されていて、ボロボロの衣をまとい乱れた髪をした骸骨でした。

居るじゃん!!


極楽坊には誰も入れてもらったことがないって小鬼たちが言ってませんでした!?嘘つき!!居るじゃん!それもたくさん!しかも全部女!!!!
いやまぁ冷静に考えたらそりゃ居るはずなんですよね…花城のお世話をする人が。こんな巨大な建物を花城が自分ですべて清掃するとも思えません。お風呂磨いたりベッドメイキングしたり餃子とか包んでる花城を想像できますか?私はできない。
菩薺観では張り切って庭掃除してくれてたけど、あれは自分のためじゃなくて神様のおうちを綺麗にするためだから…。


大広間の奥には長い寝椅子がひとつあり、十数人が横になれるほどの大きさです。しかしそこに座っているのはただひとり。花城です。
数多の美しい女たちが彼の前で歌い踊っていましたがまったく興味なさそうで一切見ていませんでした。

先に来てたんですか?


すぐ行くから少し待っててねって言ってたのに…。結果的に花城の方が先に着いて待ってたみたいですね。
極楽坊は鬼市の中心地から外れているので謝憐はそこそこ歩いたんじゃないかなと思うんですが、その距離なのに先に着いたってことは縮地千里を使って来たのかなと思います。
なぜいっしょに移動しなかったのか、ここに来る前になんの用事があったのかが気になりました。




今回はここまでとします。

結構なハイペースで更新してるつもりなんですけど、それでもまだ37章あたりなので247章まで語り終わるのに何ヶ月かかるのかさっぱりわかりません。

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