見出し画像

天官賜福⑬◆(神武殿と流刑判決)魔翻訳した感想と考察

◎注意点◎
・翻訳媒体は晋江文学城(簡体字版)であること
・筆者は先にアニメ版を見ていること
・ネタバレ苦手な方は閲覧推奨しません


今回は29~30章あたりに触れていきます。
29章のボリュームがありすぎたので半月の語り(前々回)花城とのお別れ前夜(前回)上天庭に招集かけられた話(今回)で分けてあります。

いつものことですが今回もとても長いのでお時間に余裕のあるときにご覧ください。


◆物語の流れ◆

・上天庭の神武殿へ向かう
・郎千秋登場
・青銅の神武衛兵たちに攻撃される
・郎千秋に助けられる
・霊文と合流
・神武殿到着
・裴茗登場
・裴宿の処罰についての議論
・君吾登場




菩薺観で食べて寝てごろごろしてるだけの日々を過ごしていると霊文から「急ぎ神武殿へ来るように」と連絡が入ります。山海を鎮めたり巡察したり何かと忙しい君吾が帰ってきたそうです。


君吾とは第一武神【君吾】のことで三界最強の武神です。つまり天界のいちばん偉い人でいちばん強い人ってことでした。君吾は神だし神官たちも神ですが、君吾は神官たちにとっても【神様】なんだと思います。格が違いすぎて。
謝憐は君吾のお気に入りだったという記述が度々ありましたが、三度目の飛昇をしてからはまだ一度も君吾に挨拶をしに行ってないのでまずいなぁ怒ってるかなぁ…と思いながら神武殿へ向かいます。
神武殿は君吾の宮殿なので天界でもいちばんいい土地に建ってていちばん大きくていちばん豪華なので、君吾の宮殿というより国会議事堂みたいな印象があります。入口までの階段は100段あるそうですよ。足腰弱い人には地獄。


神武殿へ向かう大通りは『神武大街』といいます。人界にも無数の神武大街が建設されていますがそれらはすべて模倣されたものであり、本物は天界の神武殿へ続くこの大通りなんだそうです。
そういえば上元祭天遊が開催されたのが仙楽国の『神武大街』でしたね。太子が第一武神(君吾)に扮して国の安泰祈願をするのが上元祭天遊なので、仙楽国のあの場も本物を模して建設されていたということです。


相変わらず他の神官たちからは避けられ物理的にも距離を取られている謝憐。飛昇してまだ間もないというのに新進気鋭の勢いある若い神官(裴宿)を引きずり下ろすという所業を行ったこともあり、なおのことドン引きされている様子。
神官たちの気持ちもわからなくないですけどね。会社で例えると『二度もクビになった社員がまたしても復職して、僅か数日の内に若いエリート社員の悪事を暴いて左遷に導いた』と思えばたしかに「こわ…近寄らんとこ…」ってなると思います。


その時、前方に「太子殿下」と呼ばれている青年を見て謝憐は驚いて足を止めました。
彼は【郎千秋(泰華将軍)】という名前で18~19歳くらいの見た目をした東の武神です。その姿は武将らしい殺気を放つようなものではなく、王族ならではの明るく気品のある雰囲気でした。
無邪気であどけなさも感じる彼の笑顔は慕情のような人物が見たら「愚かさが滲み出ている」とでも言いそうだと謝憐は評していましたが、郎千秋に限らず慕情は誰にでも愚かって言うと思いますよ
ここでの「愚か」とは三郎が昔の謝憐を「愚かだけど勇敢だ」と評していたのと同じ意味合いだと思います。慕情の場合は「勇敢だけど愚かだ」の方でしょうけども…。


郎千秋は元々本当に永安国の皇族で、彼の祖先である初代永安国王が仙楽国を滅ぼしたそうです。つまりその初代永安国王と謝憐は顔見知りだったことになります。
ここでは謝憐が「驚いて足を止めた」「前方(郎千秋と侍従)をじっと見つめた」理由がまだ明かされていませんが、原作だとこういう匂わせがあって良いなと思いました。アニメ版だと謝憐の面の皮の厚さが原作の3.5倍増しくらいになっていて感情の動きが非常に読み取りにくいんです。(クレーム)


侍従は他の神官同様に謝憐を見て顔色を悪くしましたが、謝憐が「こんにちは、太子殿下」と微笑むと、郎千秋はあまり世間のことに関心がないらしく元気いっぱいに「こんにちは!」と返してくれました。いい子だ…。
でもそのままわけもわからず侍従に背中をぐいぐい押されて強制的に退散させられました。



直後、長戟(槍とバトルアックスが融合したような武器)を持った兵士が隊列を組んで近付いてきたので謝憐は道を譲ります。
その兵士は神官や人ではなく古めかしい青銅でできており、衛兵たちは巡回中のようで整然とした隊列を組み足並みを揃え、威厳のある姿で歩いていました。この衛兵は神武大帝(君吾)の護衛である神武衛です。


・・・何これ知らない!!アニメ版にこんなのなかった!!何これ!!
私がイメージしたのはポケモンのゴルーグみたいなやつです。

ポケモンのゴルーグ


かなり年季が入っているので君吾が君臨している期間(約2000年)と同じくらいの年月使われ続けているのかもしれないです。どんな方法で青銅の衛兵を動かしているのかは現時点では謎です。これも神通力とやらなのか、それとも君吾の莫大な法力なのか。
というかなぜ人(神官)ではなくこんなものを衛兵にしているの?という疑問もあって、少し予想していることもあるのですが今はまだ触れるべき段階じゃない気がするのでもうしばらく温めておきます。


謝憐が初めて飛昇した約800年前にもこの衛兵たちは居ましたが、その時はまだこれほど錆びついてはいなかったとのこと。愚か者時代の謝憐は当時サンドバッグにしていたそうです。
しかし衛兵たちはもう彼が謝憐だと判別できませんでした。ひとつは『宮殿を持っていない』こと、もうひとつは『法力がない』ことが理由でした。
天界に自分の宮殿を持つには数十万の功徳が必要で、土地も重要だそうです。私たちの住む人界と同じですね。家を買うには家だけじゃなく土地も必要だし、土地次第で値段も大きく変わります。


・・・あれっ?

888万功徳を請求してきた宮殿がありませんでしたっけ?

数十万の功徳から建てられるけど888万功徳って…

風信の宮殿て大豪邸じゃないですか〜~~!!!!


すごい!すごいぞ風信!!さすが大人気の巨陽神!!
おそらく風信は武神トップ3くらいの位置に居そうなんですよね。1位が君吾で2位が裴茗なのは作中でも明らかにされてるので確実なんですが、裴茗の宮観は約9000あるのに対し風信は約8000、慕情は約7000だそうです。風信と慕情の実力はほぼ互角だそうですけれども。
となるとやっぱり実質ナンバー3が風信の可能性高いと思います。宮観が多ければ多いほど貰える功徳が増えるので風信はとてもお金持ちなんですね。


話を戻します。
宮殿もないし法力もないしなんだこいつは!怪しい!と衛兵に囲まれてしまった謝憐。なんなら長戟で攻撃されます。
ただでさえ借金があるので衛兵を傷つけたり壊したりしたらまた借金が膨れ上がるのではないかと心配で反撃できずにいたところ、助けに入ってくれたのは先程去ったはずの郎千秋でした。囲まれているのが見えて戻ってきてくれたそうです。衛兵たちは郎千秋を認識すると深々頭を下げ、また隊列を組んで去っていきました。
礼を言う謝憐に「どういたしまして!あなたも神武殿へ行くのでしょう?急がないと遅れますよ!じゃあお先に!」と爽やかに駆けていく郎千秋。


衛兵たちは仮にも君吾の兵士なので力は強大なはずです。それを人形のように軽々と謝憐から引き離し、腕で首を抱え込んで絞め上げたそうなのでいかにも武神!てかんじでいいなと思いました。
たぶん彼は、もし囲まれていたのが風信でも慕情でも助けに入ったんでしょうね。自分でなんとかできるかどうかは関係なくて困ってそうだったから助けようと思っただけなんだろうな。まさに『太子殿下』の風格を感じます。なんとなく愚か者時代の謝憐に似ている気もしなくない。

そんな光景を見たもんで、まわりの小神官たちは「同じ太子殿下でも天地の差だな」とまたヒソヒソ話す気がないヒソヒソ話を始めます。
次に現れて助けてくれたのは霊文でした。霊文は天界で最も地位の高い文神です。
「あなたたちの殿の公文はすべて処理し終えたのですか?こんなところで油を売るとはよほど暇なのでしょうね」と冷ややかに言って現れると小神官たちは顔面蒼白になりながら慌てて散っていきました。

霊文は前々からずっと謝憐に対して偏見なく接してくれますよね。借金返済のために功徳を集められそうな任務をくれたし、なんなら無神経な物言いをする神官たちから守ったり庇ったりもしてくれます。
今回君吾からどんな罰を受けるか…と少し不安がる謝憐にも「帝君があなたにそんなことするはずありませんよ」と励ましてくれました。
何か謝憐に恩でもあるんでしょうか?それとも公平な目を持っているだけなのか。そのあたりも今後明かされていくんですかね。



神武殿に着くと他の神官たちは先に全員揃っていたようで、中央には枷に繋がれ跪いている裴宿の姿がありました。
中央奥の玉座には君吾が座っており、どうやら謝憐を待っていた様子。
君吾の瞳は深淵のように真っ黒という記述があったのですがアニメ版だとそんなことはなかったので少し驚きました。

全然黒くない


「裴宿の処罰について意見が割れているが、お前はどう思う?」と問われ注目を浴びる謝憐ですが、堂々と「直接凡人(人間)に降格させるべきです」と言いました。つまり重い罰を希望するという意味です。
でもこれは謝憐自身が心から望んでいるわけではありません。この場において「意見が割れている」というのは、多数が大神官である裴茗に気を遣い軽度な処罰を望んでいるということです。ならばここで謝憐が重罰を希望すれば、君吾が間を取って適切な処罰を与えることができ、各方面の意見を十分考慮したことになるという計算のもとでの発言でした。


すると背後から「異議あり。この件には疑問が残る」と声がします。その者は剣を手にしながら神武殿に入り、謝憐の前を通り過ぎる時は視線を送り口元を少し持ち上げました。外見は26~27歳で品格があり、顔立ちは女性に好かれそうな華やかさで一目で風流な人物だとわかります。
彼こそが噂の大神官であり天界ナンバー2の武神、裴茗でした。

ぺいみん!!!!!!


最近の謝憐はいろいろな巻物を読んで天界の著名な神官たちの伝説を勉強しているそうで、その中でも特に明光将軍(裴茗)は良い話も悪い話も盛り沢山だったそうです。
勉強するっていってもここ最近でそんな時間があったのは三郎が菩薺観を去った後くらいだと思います。…てことはもしかして、謝憐は食べて寝てごろごろしてるだけじゃなかったってこと…?ごろごろしながら巻物読んでたんだろうけど…でも勉強してたんだね…ごめんね謝憐…。


裴茗は生前から勇猛な戦士ですが、それ以上に多くの逸話が残されているのはやはり女性関係です。
歓楽街が大好きだった裴茗。ある時は千金を投じて名妓を救い妻に迎えて身を固めたとか、既婚者の愛人として現場で取り押さえられたとか、飛昇後も神官から女鬼まで手を出さない女はいないとか。
霊文からも「首元に剣を突きつけられながらでも女を口説く男」みたいな評価をされてましたね。ただ本当にめちゃくちゃモテるので、数撃ちゃ当たる戦法だったわけじゃなくて百発百中といっていいほど女を抱けたんだと思います。まさか霊文は違うよね…?


戦場でも恋愛でも大勝利をおさめ続けた裴茗を、多くのライバルや同僚が「花柳病(いわゆる性病)で死ねばいいのに」と呪いましたが、裴茗は奇妙なほどに丈夫でどんな女性と遊んでも病気になったことは一度もありませんでした。むしろ死なないどころか飛昇して誰よりも長生きしてしまいます。
宣姫が「呪ってやる!!」と大暴れしてた時に裴宿が「裴将軍がいちばん恐れないものは呪い」と言っていたのはこれが由来だったんですね。
戦場で裴茗が敗北していよいよ死ぬって時にまわりは「やったぜ!今度こそ死ぬんだ!よっしゃー!!」って思ってたのに、その瞬間に飛昇してしまったから呪っていた者たちは怒りすぎてぶっ倒れたとか。
いくらなんでもおもしろすぎますこの男。


てか裴茗さん奥さんいらっしゃったんですかぁ!?束縛嫌いだしのらりくらりとあらゆる女に手を出すため身は固めないんだと思ってました。
人界に転がってる巻物は嘘も真実もごちゃまぜだからどこまで本当かわかりませんけども。仮に結婚してたとしても相変わらず女性に手出しまくってるのは事実なので、裴茗にとっては結婚が女遊びをやめる理由にはならないみたいですね。


多くの恋愛物語が裴茗をモデルに書かれていて、民間では『桃花を授ける神』としても崇められているらしいです。いわば恋愛成就の神様ってやつです。
天界の神官たちの間でも『明光将軍とすれ違うだけで恋愛運が上がる』と思っている者もいて、幅広い道でもわざわざ裴茗のそばを通りたがるそうです。
神官たちも恋とかするんですね。神官同士でするんでしょうか?


裴茗の人物紹介の記述でいちばんおもしろかったのは【無実なのに『巨陽』という不名誉なあだ名を得た風信より遥かに幸運な男】という一文です。
裴茗は己の行動がしっかり基となってるのに風信は本当に何もしてないですからね。とんでもない事故に遭った後遺症が数百年続いている男、あまりにも可哀想で大好きです。



お上品に先にしっかり挨拶はしておく裴茗ですが、すぐに切り替えて本題に入ります。彼の言い分としては、

・まだ暴かれてない真相があるのでは?
・血雨探花に惑わされたのでは?
・半月国師も呼んでもう一度尋問するべき

ということです。風師(男性の姿)がちょくちょく「何が言いたいんだ?他の者に罪をなすりつけたいのでは?」と口を挟んで謝憐の味方になり援護してくれていました。謝憐は彼が風師だとわかっていませんが。


私は裴茗が本気で他の者に罪をなすりつけようとしているようには思いませんでした。裴茗は裴宿を無罪だとは思ってないはずです。証拠が揃ってる上に自白もしてますし。
ただ「裴茗はプライドが高いから卑怯な真似はしない」という花城の言葉を信じるとすれば、無罪にしたいわけではなく少しでも処罰を軽くするためにあらゆる可能性を提示しているに過ぎないのかなと。卑怯な真似をしないと言ってくれた花城のことは巻き込んでますけどねぇ!


特に半月国師の供述があれば何かが変わる可能性あると思うんです。
菩薺観で半月が謝憐に話してくれた内容は風師や天界の人たちは知りません。裴宿自身も話してないと思います。生贄を捧げたことは半月のためだった可能性があることがわかれば情状酌量の余地が…………ないか…?ないかもしれない…わからない…どんな理由であれなんの罪もない人間の命をたくさん奪ってしまったことに変わりはないもんな…だめかも…ごめんね裴宿、どうしようもないわ…。


ここでは裴宿の様子が『中央で枷に繋がれて跪いている』という情報以外なにもなかったです。発言も一切ありませんでした。
アニメ版だと裴茗が「半月国師を召喚するべき」と言った途端、裴宿が「私は惑わされていません!往生際は悪くない、捕まった以上処分は受け入れます。失望させました…」と謝罪して、「半月国師にたぶらかされたか!黙っていろ!」と裴茗に小声で叱られて蹴られそうになるシーンがあります。体罰ぅ!?って結構驚いた記憶。


この事件の裏には血雨探花が潜んでいるのでは?という可能性を裴茗が提示する際に、花城と実際に罪人抗で戦った裴宿の分身(阿昭)を出してくるんですけど『阿昭の死体』となってて少し驚いてしまいました。いつの間にお亡くなりに?
たしかに花城と戦って全身血まみれのボロボロにはなったけど、風師に連行されたときは意識もあったし命に別条があるようには思えませんでした。所詮分身だし聞きたいことは本尊に聞けるので分身の役目は終わらせられたのでしょうか…。
死体を出したとき他の神官たちは「ひっ…!」って反応だったし、神武殿に血を流すのはやめるようにと霊文も嫌そうに言っていたので、阿昭を死体にしたのは上天庭のルールなどではなく裴茗の独断ぽいかんじがします。もしかすると拷問にかけたのかもしれないですね。将軍はやっぱり甘くないということか…。


罪人抗に血雨探花が居たことを謝憐がはぐらかすので、阿昭の傷口が湾刀厄命につけられたものだと証明するため花城と戦闘経験のある風信と慕情に見てもらうことになったんですけど、謝憐が三度目の飛昇後にふたりと顔を合わせたのは実はここが初めてでした。
通霊陣で既に会話はしてたので私は勘違いしてたんですが、あれはあくまで通信なので顔を合わせるわけじゃなく声だけの交流だったんですね。本当は違うけどこれが一応800年ぶりの再会ということになりますが今は余計な発言ができないので、3人はこのとき無言で顔を合わせて気まずい空気が漂っていたそうです。


このとき謝憐がふたりを見て抱いた印象は、

風信は記憶通りの姿で、相変わらず背が高く、姿勢はまっすぐで、眉間にかすかな皺を寄せ、何かに苛立っているように見えたが実際にはそうではない。

慕情は少し変わった印象を受けた。以前と同様に顔は白く繊細であったが、薄い唇は固く結び、まぶたを伏せ、冷淡な様子だった。

とのことです。ふたりとも美男子だが一見して取っ付きにくそうな顔をしているという失礼な感想もありました。
一応身長は風信も慕情も188cmで変わらないはずなんですが、風信だけ背が高いという印象を抱かれていますね。なんとなくわかる。
慕情は謝憐の飛昇時いちばん最初に話しかけたとき誰だか認識してもらえなかったことがありましたよね。「だって昔の彼とは雰囲気が違いすぎて…!」と謝憐は必死に言い訳していましたが、とぼけてたわけではなく本当に慕情が変わったみたいです。昔は穏やかで今みたいな冷たさはなかったらしい。


風信と慕情は裴茗の問いにすぐには答えませんでしたが、重い沈黙後に一度互いに目を合わせてから「奴だ」「湾刀厄命だ」と答えました。
その一言ずつしか答えなかったのはふたりの優しさかもしれないですね。なんなら同じベッドで寝てたぞ!!南風と扶揺からそう報告されている!とまで言ってやることもできたのに、傷口はたしかに奴がつけたもので間違いないけどそれしか自分たちにわかることはありませんよ~って顔をしてくれました。
厄命だと答える前にふたりが一度目を合わせたのは、自分はそれしか答えるつもりないけどお前もそうか?という確認の目配せだったんだと思います。
普段顔を合わせれば喧嘩しかしないのにこういう時は言葉交わさずとも目だけで会話できるんだもんなぁ。


罪人抗に血雨探花が居たことが証明されてしまったのであまり良い状況ではありませんが、半命関事件に彼が無関係であることは謝憐が誰よりもよくわかっています。このままよからぬ疑いを向けられたまま引き下がるわけにはいきません。
自分と彼が同行していたのは事実でもこの問題に血雨探花は無関係であり、証拠もなく『絶境鬼王だから』とありもしない罪を押し付けるのは間違っている。同じく無実である半月国師を召喚することにも反対だと毅然とした態度で言い切る謝憐には裴茗も意外に思ったのか少し驚いていました。



ここで君吾が「もうよい」と終わらせます。
証拠は十分揃っているので裴宿は200年の流刑に処されることになりました。謝憐の思惑通り、君吾は間を取った判決を下したということです。
流刑は追放とはまた違うみたいですね。あくまで一時的な降格なので今後の振る舞い次第では神官として復職することが可能だそうです。ただ200年ともなるとその間に【小裴将軍】を人々が忘れてしまうだろうから、人々に忘れられると神は存在できないので復職なんて不可能に近いんじゃないかなぁ…という状況みたい。


でもそれって一時的でも凡人(人間)に戻るってことでしょ?凡人は200年も寿命なくない…?という疑問があります。
【追放】は復職不可で凡人に戻されることだと思うんですよね。再び飛昇するというイレギュラーが起こらない限りは。そんなイレギュラー起こしたのは後にも先にも謝憐しか居ないと思うのでやっぱり復職不可と思っていいと思います。
【流刑】は刑期を終えたときにどれだけ徳を積んだか次第で復職可能ということでしょうが、刑期中は凡人に戻されるっぽいです。


神官も寿命がないわけではないとどこかで読みました。祀ってくれる人が多ければ多いほど見た目の若々しさを保てるそうです。ということは信徒が少なければ凡人よりは老けるスピードが遅くとも一応老いてはいくわけで。
つまり流刑になった後も信徒が残ってる内は若いままでいられるけど、信徒がいなくなった時に老け始めてやがて寿命が尽きる。……ってことですか?
でもそれって凡人じゃなくて神官でも同じことでは?「凡人に戻される」の意味が難しい!どゆことー!


裴茗は納得しきれず長いこと沈黙しましたが、最後は諦めたようです。
ただ血雨探花が接触してきたことは事実なので別件として「太子殿下が邪悪なものに騙されぬようご注意ください」と言い残し、君吾もすぐに調査することを約束しました。


ぞろぞろと退殿していく神官たち。謝憐だけ残るよう言われます。
風信は一度謝憐を見つめますが、謝憐が気付いて微笑むと少し驚いた顔をして去っていきました。可愛い奴~!
慕情は目を逸らして胸を張りながら目の前を通っていったそうです。慕情らしい~!
謝憐が最初に慕情の頭に鐘落としたり風信の宮殿破壊した時とまったく同じですね。まだ謝憐とどんな顔で会えばいいのかわからず優柔不断な風信と、とっくに覚悟決めてあえて堂々とする慕情。


郎千秋は寝ててまったく話を聞いていなかったそうです。謝憐に起こされてようやく退殿します。
……あの、郎千秋って永安国の太子ですよね?そして裴宿は永安国民でしたよね??時代は違えど一応愛すべき国民になるのでは…?全然関心なくてちょっと驚きました。
謝憐も寝起きの郎千秋に「重要な話でもなかったから大丈夫、もう解散ですよ」とにこやかに伝えます。

いや重要でしょうが!!

人ひとりの命運を決める重要な審議だったのに何言ってんですか!裴宿のことをなんだと思ってんのよ!
こんな人に「追放されるべき」とか言われたらそりゃ裴茗も必死になって首の皮繋ごうとするわ!
ひどすぎて笑っちゃいまいた。


裴茗は風師(師青玄)には「兄君のためにも勝手はやめないか?お前のせいで小裴は200年の流刑だ」と苦言を呈しますが、風師は「兄の名前を出したって私は怖くなんかない!小裴将軍は自業自得だから私のせいでもない!」と言い返して走って出ていってしまいます。
裴茗は風師のことを子供だと思って接しているような様子。水師と裴茗は仲が良いから自然と裴茗も年上目線になっちゃうんでしょうね。実際年上ですし。
謝憐もその流れでなにか皮肉を言われるのではないかと身構えましたが意外にも裴茗は何も言いませんでした。多分そこが三郎の言ってた「卑怯な真似はしない」だったのかもしれないですね。正々堂々と表で勝負はするけど裏でネチネチ攻撃することはしないっていう。



謝憐と君吾以外だれもいなくなった神武殿。

君吾に跪こうとすると止められて「過ちを認めるのか?」と問われたので「はい帝君、仙楽は間違っていました。二度としません」と答えます。
「では何が間違っていたのか聞かせてもらおう」と問う君吾に、謝憐はこう答えました。


「跪いたこと……」

筆者の心
君吾の心


「まったく、お前の厚かましさは……ますます増しているな!昔はお前に間違いを認めさせるのは天に昇るほど難しかったというのに…今では誰から学んだんだ?」と呆れる君吾。

「他にもたくさん覚えました。お暇な時にご覧に入れてみせますよ」と無邪気に言うと「胸で石を砕くようなことはしなくていい」と釘を刺されます。
あのわけのわからない芸はご存知なんですね。


審議のときの君吾は誰もが跪き何者も寄せ付けないようなオーラを放っていましたが、このときはだいぶ柔らかい雰囲気に変わっていたので本当に謝憐のことがお気に入りで特別扱いしているようです。
飛昇後挨拶に来なかったことも他の神官なら罰していたとのこと。
そもそも君吾だって出かけてて今日久しぶりに帰ってきたんじゃなかったの?と私は思ってしまいましたが。

800年前に追放したときも時折連絡を入れるように言っておいたのに謝憐は一度も君吾に連絡しなかったそうです。
報連相が一切できない人じゃん。挨拶もしないし連絡もしないし、会社で例えるとさすが二度もクビになった男と言わざるを得ません。



すみません、気づけばまた10000文字くらいになってしまったので続きはまた次回に!

いいなと思ったら応援しよう!