軽い気持ちでユートラ文化祭に出店したらクラフトビールとコミュニティにまじめに向き合うことになった。
「そんな仕掛けになっていたんですね!?」
クラフトビールを片手にブースに遊びに来てくれた男性は、このクラフトビールを振舞うだけの私を見てそう目を輝かせていた。
この日は、ビジネスSNSのユートラストが開催するコミュニティの文化祭が南青山の緑をテーマにした野外施設で開かれ、わたしたち"クラフトビールでつながる会"も出展コミュニティのひとつとして参加していた。
ユートラストはビジネスSNSで情報交換や同僚や以前の職場の人達の様子がうかがえるため、私もそこそこにユーザだった。
昔からクラフトビールが好きだった私はこのユートラストにコミュニティを作れる機能があると知った時に「みんなでビールを飲みたいし、その時間を誰かとつながるキッカケにしたい」と思い。軽い気持ちでコミュニティを立ち上げたことが文化祭に参加することにつながっていた。
準備
はじめにユートラストの人から一つのメッセージが届いた「文化祭をやるのでコミュニティで出店してみませんか?」という話だった。
大人になってから文化祭に誘われることは無かったので、私はとても心躍らせながらYESの返信をした。
ただ喜んでばかりはいられなかった。その後に詳細を聞いていく中で難しさも感じた。
一つ目はクラフトビールの調達。クラフトビールは飲んでばかりで仕入れができるようなコネクションが無かった。
ビジネスSNSのユートラならつながりがあるかなと思い「もしかしてクラフトビールに関連する会社でお知り合いはいませんか?」と担当の人に聞いてみるとなんと社内で大学時代の友人がクラフトビールの醸造所を立ち上げていたということで紹介をしてもらうことになった。
紹介してもらったのは国内でも特にIPAの人気が高いクラフトビールの醸造所、愛媛のDD4Dさんだった。
紹介ということもあり、クラフトビールの仕入れに協力してくださることになった。
また'クラフトビールでつながる会'の月1飲み会で出会った人の中にもクラフトビールの定期配送事業に関わる人がおり、サービスの紹介代わりにビールをいくつか提供してもらえることにもなった。
皆さん本当にご協力ありがとうございます。
こうして仕入れに関する課題はクリアしたものの文化祭のレギュレーションが次の課題として現れた。
当日は販売ではなく、提供ができるという形だった。仕入れのための資金は用意してくれたが'ただ配る'ようになることは許せなかった。
これはコミュニティたるものこうあるべきという像が自分の中にあったからだ。
そもそもコミュニティとは、コミュニティに貢献してくれる人が居て始めて成り立つと考えている。
'ビールを単に配る'ことは'ビールを単に受け取る'人を増やすだけの行為でそれはコミュニティにとって自分だけ得する人を増やすことと同じだからだ。
例えば、身近に想像しやすいコミュニティで"飲食店のレビュー"がある。レビューを書く人、見る人で成り立つ最も原始的なコミュニティに感じるが見る人だけでは成り立たないのは想像しやすいと思う。本当に増えて欲しいのは書く人、コミュニティに何かを与えてくれる人だからだ。
このことが直観的にコミュニティとは正反対の方向に向かう気がした。
今回の提供のみというレギュレーションが単に来た人にくばるだけでは受益者を増やしてしまうという事実に苦悩した。
また最終的にはクラフトビールの量の確保も必要だった。偶発的にクラフトビールのブルワリーとのつながりを作ることができたが、丁寧に作られたビールを大量に仕入れるほどの余裕はなく350mmの缶で200本ほどの仕入れになった。
ユートラストからは来場者数の予想から提供数は400を見込むように言われたためこの課題も残っていた。
どうしようか、このことを考えながら風呂に浸かる日々が続いた。
悩みに悩んだ末にある案が浮かんび、そこで用意したのが
"自己紹介ゲーム"
だった。
私たちのブースに来てくれた人を初対面同士でマッチングさせてもらいこのゲームを実施してもらった
3つトピックを互いに自己紹介し合ってもらい、最後にクイズとしてこの3点を振り返ってもらうようにした。
そしてお互いが仲良くなったことを祝して2人で1缶のクラフトビールを分け合ってもらった。そのまま飲み終わるまで会話が続くことを願って。
このゲーミフィケーションのお陰で来場者には少なくともコミュニティを知ってもらうことや"クラフトビールでつながる"の体現者になってもらった。
これが私たちコミュニティが来場者から受け取るものでそのお返しに仲良くなった二人に分け合ってもらう形でビールを渡してギブアンドテイク、価値の交換として単にビールを受け取るだけの状態から脱した。
また提供量を倍に増やすために1缶を二人で分けるというストーリーを自然に実現することもできた。
当日
リハーサルや運用の練習ですらしている時間も無かったので当日に実施してみるかどうなるか緊張した。
実際に取り組んで見るとうまくいった面もあった。初対面にも関わらずビールを飲み合って仲良くなる姿がブースのカウンター越しに見ることができた。
ゲームを全員に実施することは叶わなかったが参加してくれた人の多くが楽しんでくれている様子だった。
単にビールをお渡しするだけになった人にもユートラストのアプリ上のコミュニティに参加してもらうなど、アクションの代わりとして提供した。
2日開催だったが提供の量をみつつ、最終的には用意したクラフトビールすべてがちょうどいきわたるような形で250名ほどの人においしいクラフトビールを届けることができた。
コミュニティが主体で自分たちの好きなものを他の人にこんなにも布教できる機会はとても貴重で今後同じような体験ができるかわからないが、今回の準備から当日にわたって実施したことがわたしにとってすべてのコミュニティとの向き合う上での大きな財産になった。
これからもビールを起点に人と人がつながるそんなコミュニティを続けて行きたい。