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アドベントリレー小説 21日目

「アドベントリレー小説」とは、25人の筆者がリレー形式で
1つの小説を紡いでいく企画です。
ここまでの物語と企画の詳細は↓から
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『緋色のヒーロー』#21


「俺は、主人公になりたかったんだ。こんな平凡でつまらない人生なんか……」

そう呟くのは、どこにでもいる、気弱そうなサラリーマン。髪はボサッとしていて、服装はだらしなくて、歩き方にも無力さが滲み出ている。
そして、そんな彼を街中の人は存在ごと消してしまっているかのように通り過ぎていく。

いつの日かの夜、上司にこっ酷く叱られて自宅へ帰る途中、彼は目の前の電子広告板を眺めていた。

──いつか小説の主人公になりたい、と思ったこと、ありませんか? そんなあなたに朗報です! 『緋色のヒーロープロジェクト』では、主人公としての体験を五感を通して二日間味わうことが出来ます! 現在ベータ版のテストプレイヤーを募集しています。興味のある方はこちらの……

心の中で炎が燃えるようだった。


……


「……ヒロシ。もう気付いているんじゃないか?」

タイチはそう言って俺を睨みつける。口調は嘲笑っているかのようで腹立たしい。

「気付いているって何がだよ。俺にはさっぱり分かんねえよ」

「そうか。なら俺から教えてあげようか」

おかしかった。タイチの声が、全身から聞こえるような感覚だった。

お前はループなんかしていない。妄想なんだよ。

そんなわけ……だって実際俺は19931回も繰り返して……

それじゃあ質問。ちひろが炎に包まれて消えたのはいつだっけ?

1999年だろ? 青い雪が降って、ちひろが炎に包まれたあの日……は2019年。いや、違う。違う!

無理もないね。違う記憶同士をパッチワークのように繋ぎ合わせているのだから。

俺は山下ひろし緋色のヒーローで隕石の落下を防いだ結果青い雪に曝露してしまってそしてちひろが消えてしまって助けるために繰り返して繰り返して繰り返してやっとカナコを仲間に入れてそしてドレスがカナコで燃えるのがガスマスクでちひろがちひろで俺が主人公で主人公で主人公で主人公で……


主人公だよな……


#21 終

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