知らない人んち(仮)


#テレ東シナリオコンテスト

第1話 あらすじ 

 アクとキャン、ジェミの3人は、【温泉監視人】

 ジェミが、軍手をはめていた例の空き地から、温泉がわいた。空き地のオーナーから、その温泉が、ほんとうに温泉かどうか……ただのお湯でないかどうか、たしかめるまで、監視してほしいと依頼をされた、

 きいろは、温泉ドロボーに、まちがえられて……

○和室

   物音に、驚くきいろ。

   ジェミが【ピストル】をかまえている。

きいろ「水鉄砲ですね?」

ジェミ「ためしてみる?」

   ピストルの撃鉄を起こす、ジェミ。

きいろ「手をあげます!」

   自分から両手をあげて、降参する、きいろ。

   撮影していたカメラが、落ちる。

ジェミ「温泉は撮れたの?」

きいろ「温泉?!」

ジェミ「しらばっくれるんじゃない!」

   銃口を、きいろに突きつけるジェミ。

ジェミ「あなた。温泉を盗みにきたんでしょ」

きいろ「そんなもの」

ジェミ「そんなもの? 温泉は大事よ。大切よ。宝物よ!」

きいろ「ごめんなさい。足、腰が痛くて、つい……って、そうじゃなく 

 て!」

ジェミ「白状したな! 自分が温泉ドロボーだって」

きいろ「たとえわたしがドロボーだったとしても、温泉なんて盗まない!」

ジェミ「温泉なんて?」

   血相を変えたジェミは、銃口を、きいろのアゴとか、顔中、いろんな

   部位に突きつけて、すごむ。

きいろ「ジェミさんのいうとおり、温泉は大切な宝物! 世界共通の財産で

 す」

ジェミ「わかればいいの」

   やっと銃口をはなすジェミ。温泉には、うるさい。

きいろ「セーフ」

ジェミ「アウト!」

   また、銃口をきいろに突きつけるジェミ。

きいろ「よよいの、よい!」

    と野球拳のように、ジャンケンのグーを出す、きいろ。

ジェミ「なに、それ?」

きいろ「野球拳のグー」

ジェミ「野球拳って、あの、ジャンケンで負けたら、一枚ずつ服を脱いでく

 ゲームのこと?」

きいろ「だったらどうする?」

ジェミ「よよいの、よい! パー!」

   きいろのグーに、ジャンケンのパーで、勝ちにくるジェミ。

きいろ「わたしの勝ちよ! グー。パンチ!」

   ジェミに、グーの(拳の)パンチをくれる、きいろ。

ジェミ「しまった! やられた!」

   おなかにパンチをもらい、ピストルを落とすジェミ。

   きいろは、そのピストルをひろって、逆にジェミに突きつける。

きいろ「フフフフフ。手をあげろ」

ジェミ「ハハハハハ。それは水鉄砲だ!」

きいろ「ズドン」

   問答無用に、引き金を引く、きいろ。 

   ピューと水が出る。

きいろ「ご、ごめんなさい! わたし……」

   水鉄砲を捨てて、ぬれてしまったジェミの服を、自分のハンカチで、

   乾かそうと努力する、きいろ。

ジェミ「ピストルだったら、どうするの?」

きいろ「おなかに穴があいてるわ」

アク「たしかに。あの空き地に、穴があいている」

   いつのまにか、アクがいる。

キャン「穴から温泉がわいている」

   いつのまにか、キャンもいる。

きいろ「穴? 空き地?」

ジェミ「温泉ドロボー! 覚悟しな!」

   ジェミは、ロングスカートの下のストッキングにはさんであった、

   もう一丁の、別の水鉄砲をだして、引き金を引く。

ジェミ「ずどん」

   銃口から、ピューっと水が出て、きいろの服をぬらす。

ジェミ「あやまらないよ。おあいこだから」

きいろ「思いだした!」

      ×   ×   ×

(フラッシュ) きいろとジェミが遭遇した例の空き地。

きいろ「あの……それは今、なにを?」

ジェミ「落としものしちゃって……」

      ×   ×   ×

アク「あそこから、温泉がわいているんです」

きいろ「やっほー!! 家に泊めてくれるだけじゃなくて、【温泉】に入

 れてくれるのね? アクさん。あなたは太っ腹」

アク「ぼくのおなかは、出ていない」

キャン「そんなことより。ジェミは、あの温泉のわき出る穴に、ふたをして

 いたの」

ジェミ「温泉ドロボーに見つからないように。大切な温泉の穴を、わたしは

 土でかくしてた」

きいろ「丸見えだったわ。ジェミさんの、へたくそ」

アク「黙れ! 空き地のオーナーがいま、穴からわき出たお湯を、分析にだ

 している」

キャン「ほんとうに温泉かどうか。ただのお湯じゃないかどうか」

アク「結果が出るまで、監視してほしいと依頼をうけた」

キャン「勝手に温泉を盗むドロボーがいたら、つかまえてほしいって」

アク「ぼくたちは、温泉監視人だ!」

きいろ「温泉監視人? ただ見張ってるだけなんて。ずいぶんヒマなお仕事

 ね。冬は凍えて、たいへんでしょう? 夏は暑いし。あせもができる」

ジェミ「温泉監視人は、時給1000円の高給とりよ」

アク「人の土地にわいている温泉を盗む、ふらちなドロボーは、【好きにし

 て、かまわない】とも、いわれている。背中が寒くなっただろう?」

ジェミ「真相を知られたからには、生かしちゃ返せない。きいろさん。

 よよいの、よい! パー」

きいろ「グー」

   ジェミは野球拳の(ジャンケンの)パーを出す。

   きいろはグーを出す。

   きいろのグー(拳)をかわしたジェミの平手(パー)が、きいろの

   ほっぺたをはたく。 

   今度はジェミのパーが、きいろのグーに勝ったのだ。

   目をまわす、きいろ。


○リビングダイニング(夜)

   目を覚ます、きいろ。しばられている。

   テーブルで、アクとキャンが、晩ごはんを食べている。

きいろ「おなかすいた」

アク「きいろさんは、ご自分の立場がわかっていないようだ」

キャン「温泉ドロボーのくせに。太いやつだ」

アク「わたしは太くありません。このとおり!」

   しばられたまま立って、ポーズを決める、きいろ。

きいろ「スタイル抜群」

キャン「梅干し1コ。あげようか」

きいろ「いりません! 2コにしてください」

アク「ハハ」

キャン「あんた。かわいくないよ」

きいろ「キャンさんより、ずっと可愛い」

アク「ハハハハハ」

キャン「なに笑ってるの?」

アク「ごめん。キャン」

きいろ「ハハハハ。仲のいい2人ですね。もしかして? つきあってる?」

アク「いい度胸をしてるじゃないか。きいろさん」

   ポケットからピストルを出す、アク。

きいろ「また水鉄砲? つくづくオモチャが好きなのね?」

キャン「ためしてみる?」

   キャンも、ピストルを出して、撃鉄を起こす。

   2丁のピストルに狙われる、きいろ。

きいろ「わたしにも、おぼえがあるわ。幼稚園の年少さんのころは、あなた

 たちに負けないくらい、水鉄砲が大好きで、となりのケンちゃんに、打っ

 て、打って、打ちまくった。となりのケンちゃん、びしょぬれよ」

アク「そんなことは聞いてない」

きいろ「ケンちゃんは剣道1級だった。わかる? 剣道一段じゃなくて、

 剣道1級。それでも、わたしに、かなわなかった! ケンちゃんの負け」

キャン「刀がなかったから。ケンちゃんは、水鉄砲に負けたのよ」

アク「刀じゃない。竹刀だろ!」

   部屋の隅から、剣道の竹刀をとって、びゅん、びゅんと打ち下ろす

   アク。

きいろ「ケンちゃんは、柔道も1級だったわ」

アク「柔道1級?」

   剣道の竹刀を、捨てるアク。

きいろ「どんな強い人も、飛び道具には勝てないわ」

アク「だからぼくは、水鉄砲愛好家! いや、ピストルマニアになったん

 だ!」

   再び、ピストルをかまえるアク。きいろに銃口をむける。

アク「おとなしく白状しろ」

きいろ「なにを?」

キャン「わたしは【温泉ドロボーです】って。警察へ自首するの」

アク「自首すれば、罪は軽くなる」

キャン「刑法第42条1項。罪を犯した者が、捜査機関に、発覚する前に

 自首したときは、その刑を軽減することができる」

きいろ「わたしが警察に行って、いいのかな? この家、あなたたちの家

 じゃないよね」

キャン「だったら、どうなの?」

きいろ「刑法130条。正当な理由がないのに、人の住居に侵入した【住宅

 侵入罪】で、タイホする!」

キャン「わたしたちは、温泉監視人。温泉ドロボーを取り締まるという、

 大切な役目をもってるわ」

きいろ「温泉監視人が、水鉄砲で遊んで、いいのかな?」

アク「これが水鉄砲かどうか」

キャン「ためしてみる?」

   キッチンから野菜のキャベツをとってきて、アクに投げ渡すキャン。

キャン「アク!」

アク「よしきた! キャン!」

   アクは、キャベツに銃口をあてて、きいろにむける。

アク「ピストルの銃口にキャベツをあてて、引き金を引くと、どうなる?」

きいろ「キャベツに穴があく。まっ黒な穴」

キャン「そうよ。身の固くしまったキャベツが、ピストルの音を吸収して、

 発射音を小さくするの」

きいろ「まさか! キャベツがサイレンサーの役目を果たすなんて! 聞い

 たことがない」

アク「今が旬の冬キャベツは、柔らかい春キャベツと違って、葉っぱの巻き

 がかたくて、肉厚よ。発砲音がしても、近所の人に、殺人事件を気づかれ

 ないですむ」

きいろ「そのとおり!」

アク「そら。ピストルの銃口と、キャベツと、きいろさんの心臓が、一直線

 に結ばれた」…………

                       (2話につづく)


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