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形而上の旅、いとも優雅なる中世の小宇宙

デ・キリコ展@東京都美術館→内藤コレクション写本展@西洋美術館。
この規模の企画展のハシゴはしない主義なのですが、西洋美の企画展示が無料で見れる日があったので、思い切って1日上野で遊びました。広場でやってたパキスタンのフェス?でムガル帝国の宮廷舞踊も観たし、みはしであんみつも食った。上野満喫デー。
会期終わる前に書きたかったけどどっちも終わっちゃった。時がたつのは早いね。

デ・キリコ展 形而上の旅

キリコは、シュルレアリストに多大な影響を与えた謎多き画家…と思ってたんだけど結構イメージ変わったな…。いや、多大な影響を与えたのは確かなんだけど、そのシュルレアリストと修復不可能なほどに溝を深めたり、「形而上絵画の創始者」の地位に拘ったり、モランディに喧嘩売ったりしてて人間くさい感じだった。年表もしっかり埋まってるし、本人はそんなに謎めいた存在でもないのかもしれない。

ということで、シュルレアリスムとキリコの関係を改めてちょっと調べてみたんですけど、雑に書くとこんな感じっぽい。

  • キリコが形而上絵画を描きはじめる

  • キリコの形而上絵画から多大な影響を受けつつシュルレアリスムが台頭する

  • キリコからするとシュルレアリスムは「解釈違い!」「パクり!」て感じでむしろ批判・非難の対象。自身もシュルレアリストを名乗ってはいない

  • 後にキリコが古典的な表現に回帰したことにより、シュルレアリストも「キリコオワコン」みたいになる

  • 修復不可能な溝…!

みたいな?
調べたというかChat-GPTさんに聞いたので、ウソまじってるかもしれませんが。

展示はテーマ別の章立てになっており、時系列は多少前後する構成。作品数としてはマヌカンが多い。イタリア広場の絵は少なく、個人的にはマヌカンよりイタリア広場のほうが好きなので少し残念だったが、晩年の作品が集められた最後の部屋は良かったな~。

チラシより。最後の部屋は、この真ん中の部屋の中で小舟こいでるみたいな自由な絵が多い。(ちなみにトップ画像はこの絵をAIに再現してもらおうと試みたものです。)


あと「神秘的な水浴」シリーズも良かった。
あまり「神秘的」には見えないので、「謎めいた」って訳したほうがよかったのでは?とか言いたくなるが、ジャン・コクトーの著書『神話』のために制作された版画連作ということなので、「神秘的」で正しいのだろう。
訳で言うと、「形而上」もなかなか難しいよね、メタフィジカル。原題はイタリア語なんでしょうけども。

内藤コレクション 写本 — いとも優雅なる中世の小宇宙


続けてもう一本。

印刷技術が登場する以前の、人の手で写して作られた本(のページ)のコレクション展示。本の内容は、聖書とかミサ聖歌集とか詩篇集とかほぼキリスト教関連。

イベント中だったためかビンゴカードが配布されていた。展示中の写本のどこかに登場する絵が並んでおり、見つけたら開けるというルールらしい。賞品などは特にないのですが、真剣に取り組んだところ結構楽しんでしまった。

作品数が多い上にどれも似ていると言えば似ているので、案外難しい。のだが、裏面にタイトルが書かれていてそれがほどよいヒントとなっており、全部見つける頃には、内藤コレクションの写本にどういう種類のものがあるのかという理解が少し深まっている…。よくできてるな!

キャプションを読み込んでつぶさに見るほどの時間はなかったので、そういう意味でもちょうど良かった。

西洋美の企画展示としては渋めの部類だと思うのですが、これがあれば大人に連れてこられちゃった子供も楽しめそう。

全部開くまで頑張ってしまった(もはやビンゴではない。)


実物を近くで見ると、文字の装飾も絵もかなり細かいんですよね。文字を人力で書き写す時点で大変なのに、それにとどまらず物凄い手間と労力がかけられていることがわかる。…わかるんですけどね。
現代人の感覚からすると、文字部分と絵や装飾の部分が混然一体となりすぎてて(いやさすがに読みにくいだろ…)と突っ込みたくなる。し、文字部分が装飾にガンガン侵食されているサマに(何だろ、何かに似てるんだよな…あ、わかった、みっちり落書きされてる教科書だ…)と思ったことは黙っておきます。



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