#4-開発を司る福富の原点思考や創業期の思い出
ー簡単に自己紹介をお願いします。
福富:207株式会社(以下「207」)でCTOをやらせていただいている福富と申します。元々はバックエンドを実装していて、今は採用からプロジェクトマネジメントをメインにやっていてプラスでプロダクトマネージャーのようなこともやり始めています。
ー大学の時はどんなことを勉強されていたんですか?
福富:だいぶ昔のことですが、僕が大学を卒業したのが2009年で、当時は筑波大学でいわゆる統計的機械翻訳という、今でいうGoogle翻訳的なアルゴリズムの研究をやっていました。統計や自然言語処理は大好物ですね。
ー元々興味を持ったきっかけは何だったんですか?
福富:元々は当時Yahooチャットがとても流行っていて、人工無能というアプリケーションが流行っていたんです。実際には何にもしていないけど会話のようなことを自動生成してチャットに返答してあげると、プログラムが動いて人間が喋っているように見えるというアプリケーションです。それがとても面白くて、もっと精度良く人間が喋っているようなことをコンピューターにさせられないかなと思ったのがきっかけで機械学習に興味を持ちました。統計的機械翻訳というのは、内部的には日本語の単語と英語の単語をどうやって翻訳するかということだけでなく、いかにそれを文章のように構築するかというアルゴリズムが重要なので、その辺が使えるなと思って研究室に入ったという経緯がありました。
ー面白いですね!
言語の違いによって翻訳の難易度は変わるんですか?
福富:変わりますね。研究していたのが10年以上前なので今は変わっているかもしれませんが、特に語順の違いというのが影響が大きくて、例えば日本語と英語は品詞の順番が全然違いますが、一方で日本語と韓国語は語順が近くて、となると日英翻訳は精度が悪いけど同じアルゴリズムで日韓翻訳使ったらとても精度が良い、というようなことはよくありましたね。
ー面白いです!
それを仕事に生かそうという思いや、そのままプロダクトを作ろうという思いはありましたか?
福富:実際学生時代に作っていました。当時文部科学省がやっていた魅力あるなんとかITプロジェクト(うろ覚え)みたいなものがあって、そこで僕は研究室の仲間と一緒に、実際に統計的機械翻訳のシステムや、同じく自然言語処理の技術を使ってクロスワードパズルの自動生成アプリを開発したりしていました。ありがたいことにそこで最優秀賞を頂いて、結構な額の研究資金を頂いたような気がします(笑)
ーさらりと言われていますがとても凄いですね。
そこから207に来る前のキャリアパスはどういう感じでしたか?
福富:僕のキャリアはとても長いのでどこからどこまでお話するかという感じですが(笑)機械学習からの連続性でいうと、そこから大規模なデータを持っている会社に興味があったので、当時流行っていたSNSのデータを扱えたら面白いなと思って新卒で入ったのがmixiさんでした。そこで大きなデータを扱いたいという思いでアドテクを1年半ほどやって、その後R&Dに移動してそこではいわゆるレコメンドエンジン作ったりとか、しっかり機械学習を使うことをやっていました。合計で3年半ほど経った頃にソーシャルゲームのブームがきて、DeNAさんとかGREEさんとかがとても盛り上がっていた頃ですね。アドテクというBiz寄りの領域とBizから一番離れるといっても過言ではないR&Dを両方経験して、両方触れるようなところに行きたいなという思いが出来始めました。その頃にソーシャルゲームをやっている会社はKPIをガンガン追いながら機械学習を使っているというような話を聞いて興味があり、それと一度海外で働きたいなという思いもあったので両取り出来るところないかと探したら、たまたまシンガポールでソーシャルゲーム作りますという案件があったので面白そうだなと思って転職したのが1回目の転職でした。
ーたまたまあったというのは、エージェントさんとの出会いですか?
福富:そうですね、そこはエージェントさんでしたね。
ー海外のビジネスはどうでした?
福富:面白かったですね。
ー同僚も海外の人だったんですか?
福富:そうですね、でも同僚の2割くらいは日本人でした。だから日本人同士だと全然日本語で喋ることもありましたが、基本的に仕様書やミーティングは全部英語という環境ではありましたね。
ーその時は何人くらいの組織で、どういうポジションで働かれていたんですか?
福富:日本と台湾にもブランチがあったので全部合計すると100人超えていたと思いますが、シンガポールだけでいうと30~40人だったと思います。その中で僕が入る前から分析チームを作りましょうという動きがあり、元々いたメンバー2人に対して僕がプラスで追加されたような形でした。社内のBIツールの構築だったりプロデューサーと議論しながらKPIをどうやって設定しましょうかという話をしたりしていました。
ーその時からプロデューサー側にいきたいという思考があったんですか?
福富:当時は無かった気がします。数字と戯れることがひたすら楽しかったので(笑)それでいうと昔から一貫した思考としてあると思うのは、複雑なものをシンプルな数理的にモデル化するようなことが好きかもしれないです。
ーとても共感します!僕もカオスというパズルを解いた後の快感がたまらなく気持ち良くてカオスな状況が好きなんですが、フレームワークを作ったりあるいはデータを使ったりみんなが納得できるアウトプットを出すようなことは良いですよね。
福富:とても分かります。本当そうですよね。「こういう風に表現したらシンプルに書けるな」というようなことが凄く好きです。
ーその時から色々な人と認識をすり合わせるような、社内調整やセッションなどは結構ありましたか?それともひたすらコードを書いていくような感じでしたか?
福富:それでいうと両方やっていました。あとは当時社内の分析チームというものはシンガポールにしかなかったので、台北や日本に度々出張に行ってデータの使い方などについてコンサルをしていたので、そういう意味では関わる方の幅広さはあったように思いますね。
ー今世の中はリモートが周流ですが、遠いところの人と意思疎通を図るという意味でのリモートという中で、気を付けていたことや意識していたことはありますか?
福富:今どこまで出来ているかは分からないですが、当時気を付けていたことでいうと言葉を丁寧に使うということは気を付けていました。なんとなくで意味がずれている単語を使わない、出来るだけ解像度が高く伝わるような言葉を選ぶということはとても気を付けていたような気がします。
ーそれによって1回で終わるものを何回もコミュニケーションをしなければいけないと無駄ですよね。
福富:だからあとは、同じことを表す時は出来るだけ同じ単語を使うこともそうですね。
ーそういう細部のこだわりは大事ですね。
そこからどういう経緯で207にJoinすることになりましたか?
福富:紆余曲折あるので間は省きますが(笑)東京でしっかり仕事をしてシンガポールに行って海外で働く経験もして、その後プロダクトをゼロから作るという新規事業責任者の担当などもさせて頂きましたが、一通りやった一番最後に一度地元に帰って地元密着の会社で仕事してみたらどうなるかなと思い、しばらく石川県で働いていました。それが1年半ほどです。そこで、一周回ってやっぱりゼロイチのフェーズを経験してみたいなというところに立ち返ったタイミングで、今の会社の代表である高柳からお声掛け頂きました。ちなみに高柳とはその更に2年ほど前に元々Yentaで出会っていて、フルリモートで高柳が持っている案件をお手伝いしたことがあり、その縁から「そろそろ207の事業をスピード感持って進めて行きたいから東京に来ないか」というお誘いを頂いて、面白そうだなと思って入ったということがきっかけでしたね。
ーその時は一人目のエンジニアという感じだったんですか?
福富:厳密にいうとすでにゼロイチのプロダクトをある程度作ってくださっていた方はいらっしゃっていて、途中からJoinしたという形です。
ー一桁番目の社員番号という規模でエンジニアとして入っていくキャリアは難しさなどありましたか?
福富:どうでしょうね(笑)それでいうとあまり感じなかった気がします。
ー結構すぐ馴染めましたか?
福富:そうですね。すぐに馴染めたような気がしますね。なんででしょうね(笑)
ー207の会社の雰囲気ですかね。僕もそうですが、ある程度大きな規模の会社ばかりにいてベンチャーに入らせていただくと、環境が全然違うので好奇心で入っていくけど上手く馴染めない期間が結構あったので、そういう観点でお聞きしましたが、すぐ馴染めたのであれば凄いですね。
福富:それはやはり207のメンバーがみんなオープンマインドでウェルカムな方が多かったということが大きかったと思います。僕が頑張ったというよりは、207のメンバーがそういう意味では素晴らしかったという感じです。
ーいいメンバーですね。
一桁番目で入るということは共同創業に近いマインドなのかと思うのですが、自分の人生という観点でリスク・リターンや定性・定量などを含めて何か評価していましたか?
福富:こういうのって普通考えますよね(笑)
ー(笑)
福富:僕は最近あまりリスクやリターンを考えずに生きているんですが(笑)だからそれでいうと、僕が何かを判断する時は楽しそうかどうかということが唯一の判断基準ですね。そういう意味ではリスク・リターン関係なく楽しそうだから入ったというのが純度100%の当時の考えかなという気がします。
ーその楽しさはどの辺から感じましたか?
福富:色々丁度良かった気がします。当時の僕の興味の方向性というところだったり、あるいはそれまでの自分の経験が活かせそうというところだったりもそうですね。例えば207の事業領域って結構トレンディだと思うんです。僕のイメージでいうと2010年くらいから2020年にかけてweb2.0と言い始められてからインターネット領域のブラッシュアップがどんどん進みきって、そろそろリアルの方にそこで得た知見を生かしていきましょうかというところが次からの10年かなと思っていたので、物流業界をDXするというテーマは正にそこにドンピシャだったということが理由として一つありました。あと僕は207に入る前にベガコーポレーションさんのお世話になっていて、僕はベガコーポレーションさんが大好きだったんですが、そこの雰囲気と207の社風がすごく似ていたように思います。もしかしたら高柳が福岡の出身ということが関係あるのかもしれませんが(笑)ご縁があってベガコーポレーションさんから出資を頂いているというのも面白いですよね。そういった色々なファクターが、自分が行くべきだと言っているのような気がしたのかもしれないですね。
ー凄く良いですね。
創業期に印象に残っている成功体験や失敗体験、泥臭いことして楽しかった思い出は何かありますか?
福富:楽しかったことでいうと、そもそも一番最初に入った時に207が住む部屋を用意してくださっていて、エンジニアが僕ともう一人若月という者がいて一緒に共同生活をしていました。その時オフィスに住んでいたので、オフィスのホワイトボードを改良したり照明から音楽が鳴るようにしたりオフィスを色々ハックしたことが結構面白かったなという思い出がありますね(笑)
ー中々出来ない経験をしていますね(笑)
福富:そうですね、とても楽しんでいましたね。あとは当時流行っていたバレットプルーフコーヒーをみんなで作って毎朝飲んだりしていました(笑)
ー大学の寮みたいですね。
福富:正にそうですね。
ー失敗体験はどうですか?
福富:先にもう一つ成功体験でいうと、最近実際に配送業務を経験したのですが、そこでとてもプロダクトを使ってくださっているユーザーさんや、あるいは必要とされているUXに関する解像度が上がったのでとても良かったなということがあった一方で、もうちょっと早くやっておけば良かったなということが今感じている失敗かもしれないですね。
ー確かに。僕も207にJoinさせていただいて1週間以内くらいに配送員という現場をどうしても体験したくて、代表の高柳さんにお願いしてやらせてもらった覚えがあります。あれはとても勉強になりますね。
福富:あれをやる前とやる後で全然見え方が変わるような気がしますね。
ー本当に大事ですよね。
今個人として何かチャレンジはありますか?
福富:ここ数年はエンジニア的な事ばかりやっていたのが、最近はいわゆるプロダクトマネージャー的な領域に踏み込み始めているのでそこのキャッチアップや、どうやって上手く回るように出来るかという所は一つチャレンジかなとは思っています。あととても個人的な話でいうと、健康状態が不安定なので(笑)そこをなんとかコンスタントにパフォーマンスを出せるような状態にもって行きたいとはずっと考えていますね。
ー健康状態は何かモニタリングしているんですか?
福富:最近Oura Ringを購入しまして、僕のslackのプロフィールに毎日のOura Ringのスコアが載っています(笑)
ーあれ面白いです!
そこまでオープンにしてくださるんですね。
福富:そうです(笑)だから僕のパフォーマンスは今これだけですよっていうことが全社員にBe openになっていますね(笑)
ー福富さんって好奇心旺盛ですよね。
福富:Tasukuさん程ではないですけどね(笑)
ーとんでもないです(笑)
207という会社のCTOとしてのご自分のミッションをどういう風に捉えられているかについてお聞かせいただけますか?
福富:正直改めて考えることはそんなにありませんでしたが、強いて言うなら会社がやろうとしている事業の方向性やあるべきプロダクトの姿、あとはメンバーの得意領域や苦手領域というあらゆるものの解像度を上げて、事業が行くべき方向性へのスループットを最大化するためにどうやってそこの配線を繋ぎなおせばいいか、というようなところが僕の仕事なのかなと思ってはいます。
ーたくさん挙げていただいた中で、優先順位をつけて直近でどういうところにフォーカスしようとお考えですか?
福富:今は解像度を上げることにとてもフォーカスしていると思います。プロダクトでいうとAnalyticsのデータ、イベントをたくさん仕込んでどこでモニタリングするかという話をしたり、あとは1on1を続けて新しく入ったメンバーの得意領域はどこかを見極めて、どの領域ををお願いしたら早く済むかというところの肌感を持つことだったり、そういう点をしっかりとやっている感覚はあります。
ー開発チームで個別に1on1をしっかりやるというのは、僕が見てきた限りの他の会社組織などではもあまり無いかと思うのですが、こだわられているポイントですか?
福富:そうですね。207のチームの構成的に業務委託の方やスポットの方が多いので、余計に必要性を感じているということはあるかもしれないですね。あとフルリモートということもあるので、中々きちんと時間を取ってお話をする機会を作らないと汲み取れないところがかなり出てくるなという実感があったので、そこは重点的にやっていると思います。
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