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秋から春にかけて、紫野・西陣。

 お久しぶりです。今回は、紫野・西陣の季節の移ろいを綴りたいと思います。京都遊覧記第16回。

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今回訪れる場所にピンを置いた。計10ヶ所の魅力を地域ごとに見ていこう。

1.紫野-大徳寺を訪ねる

 そもそも「紫野」とは、一体どこなのか。「京都観光Navi」によると、「北区南部の船岡山から大徳寺にかけての広い地域の名」だそうだ。それでは、紫野を代表する寺院・大徳寺から紹介しよう。
大徳寺は臨済宗の寺院で、とんちで有名な一休さんに縁ある地として知られている。境内には20以上の塔頭が位置しており、4ヶ所(大仙院、高桐院、瑞峯院、龍源院)で常時拝観ができる(高桐院はご時世により、2022年まで拝観停止予定)。
それでは順番に、塔頭を紹介していこう。

Ⅰ.大仙院

 大仙院はかつてテレビ出演していた名物和尚・尾関宗園が住職を務めていたことでも知られる。現在の住職が丁寧に枯山水の解説をしてくれた。蓬莱山の滝から流れ落ちる水が、大海へ流れ出る姿が表現されているそうだ。写真撮影が禁止されているので、興味を持った方は公式サイトからチェックしてほしい。そして、ぜひ訪れてほしい。

Ⅱ.瑞峯院

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 室町時代の戦国大名・大友宗麟の縁の寺院である。大徳寺は歴史的に、戦国大名が帰依した寺院が多い。

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瑞峯院の枯山水は、大仙院の庭園と同じテーマをモチーフとしている。手前から奥へ進むにつれて、海へと近づいていく。

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重森三玲が作庭を手がけた閑眠庭。7個の石組みが十字架を象っている。また、春に訪れた時は茶室を見学することができた。

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写真の茶室は安勝軒。茶室は基本的に亭主の右側に客が座ることが多い。しかし、安勝軒は亭主の左側に客が座る「逆勝手」という特殊な茶室なのだ。また、大山崎町にある国宝茶室・妙喜庵待庵を再現した「平成待庵」が瑞峯院には位置している。二畳の空間に千利休のプランが詰め込まれている。「平成待庵」を見ることができたので、次は本物を見てみたいと思った。

Ⅲ.龍源院

龍源院は、畠山氏と大友氏が創建に関わっている。大徳寺の塔頭で、最も歴史ある寺院らしい。

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写真奥にある石が蓬莱山を表現している。白い砂で大海原を表現しているこの庭園は、他に全く類を見ない庭園であるらしい。

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日本で一番小さい壺庭(坪庭)らしい。何だか不思議な空間だ。

Ⅳ.興臨院

守護大名・畠山家の菩提寺となっている。秋に期間限定で拝観を受け付けていたので、足を向けた。

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晩秋の頃の写真。

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蓬莱山を表現しているらしい。枯山水といえば、やはり蓬莱山を表現するのだろう。

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近年、流行っている「床もみじ」であろうか。写真から、秋の暮れが伝わってくる。

大徳寺で訪れた4カ所の寺院を紹介した。次に紹介するのは今宮神社だ。

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今宮神社はいろいろと不思議な寺院である。疫病を鎮めるために祭礼が行われたことが、当社の由来となっている。科学の発達していない平安時代、疫病を何か外からやってきた異物が原因であるとか、非業の死を遂げた者の祟りであるとか広く信じられていた。八坂神社や御霊神社も御霊信仰と大きく関わっている。

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徳川綱吉の生母・桂昌院が当社を再興した。彼女は、京都の寺院を数多く再興したことでも知られている。

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今宮神社を訪れたら、必ず食べたいあぶり餅。匂いだけでお腹がいっぱいになる。ここでしか食べられない珍しいお餅、ご賞味いかが?

紫野で最後に訪れた寺院は上品蓮台寺である。

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桜の隠れた名所として知られている。現在は小さな寺院であるが、かつては数倍以上の広い敷地を有していたと考えられている。また、美術史で登場する「絵因果経」(国宝)が所蔵されていることで有名だ。

2.北野-おかめ桜と平野の桜

 北野へ足を向けて、千本釈迦堂を訪れよう。千本釈迦堂には新緑の季節に訪れたことがあるが、春に訪れたのは初めてだ。「おかめ桜」という枝垂れ桜が有名となっている。

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迫力がすごい。ここまで立派な枝垂れ桜を見たことがなかったので、驚いてしまった。花々を支えている中心の大きな幹がずっしりと位置している。一度見たら忘れられない景色だ。
(以前、千本釈迦堂や北野天満宮を訪れた時の京都遊覧記は以下。)

続いて、平野神社へ。平野神社の桜は夜桜として古くから親しまれている。

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境内全域に桜が咲いていた。桜それぞれに個性があり、違った形の桜が楽しめる。

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濃い桃色の方が個人的には好きかもしれない。

3.西陣

 最後のエリア紹介。狭いエリアに5つのスポットが集中している。さらに、1つ1つが語り尽くせない魅力を持っている。ぜひとも、訪れてほしいエリアだ。それでは、紹介していこう。

Ⅰ.水火天満宮

平安時代、京の町が水害に見舞われた時、道真の祟りであると民衆は恐れていた。これを鎮めるため、比叡山の僧が祈祷をしたことが当社の創建の由来とされている。水害や火災を鎮めたことから、「水火」天満宮というわけだ。

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こちらの枝垂れ桜も見応えがある。

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京で水害が起こった時、怨霊の姿となって道真が座っていたとされる登天石だ。こうやって京都を旅していると、怨霊や御霊信仰にまつわる神社が本当に多い。京都の裏の一面を時々、感じるのだ。

Ⅱ.妙蓮寺

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日蓮の弟子・日像によって開かれた寺院。春の特別公開で、長谷川等伯の傑作と名高い「鉾杉図」を鑑賞することができた(以下のリンクで鑑賞できます)。幾何学模様にも見える絵画から、杉の迫力が直で伝わってくる。安土桃山時代の雄大で迫力ある画風に圧倒されていた。

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歴史ある妙蓮寺椿。冬に訪れたので、丁度良いタイミングで写真が撮れた。

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「十六羅漢の石庭」と呼ばれている。釈迦の弟子で特に優れた弟子を十六羅漢と呼ぶそうだ。16個の石がそれぞれの弟子を表現しているという。それぞれの石にそれなりの大きさがあるので、石庭が小さく見えるほどだ。

Ⅲ.本法寺

鍋かむり上人こと、日親が開祖。江戸時代に本阿弥家の支援を受けて、現在に至る。

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江戸時代の芸術家・本阿弥光悦が手がけた巴の庭。築山を3つ並べて巴紋を表現しようとしているらしい。しかし、なかなか気づくことが難しい。

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寺宝が展示されている建物は意外に現代的。京都三大涅槃図の1つ、「佛涅槃図」は縦10m、横6mに及ぶ巨大涅槃図なのだ。本法寺を拠点に活躍した長谷川等伯の人生を懸けた傑作を、ぜひ確かめてみてほしい。
※通常公開時には複製ですが、毎年春に期間限定で真筆を見ることができます。

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春には桜が咲いていました。

Ⅳ.妙覺寺

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聞き覚えのある方も多いのではないだろうか。昨年放送されていた大河ドラマ『麒麟がくる』で織田信長が頻繁に宿所として利用されていたあの妙覺寺である。信長が妙覺寺で18回宿泊したことが記録に残っている。そして、あの有名な本能寺は3回しか宿泊していないのだ。信長が当寺を定宿としていたことを裏付ける証拠だ。

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日蓮宗の寺院の庭園は特に明確な形があるわけではないらしい。当寺は紅葉を植えただけの庭園となっている。紅葉がじゅうたんのように広がっている。自然をそのままにしたような庭園、心が落ち着く空間だ。

Ⅴ.妙顕寺

最後の紹介となる妙顕寺は意外と知られていない寺院。それでいて、私だけの空間に留めておきたい気持ちもあり、人に教えたくない魅力を併せもった寺院である。

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先ほどから、「妙」がつく寺院が多いと感じた方もいるのではないだろうか。妙蓮寺、妙覺寺、妙顕寺はいずれも、日蓮宗の寺院なのだ。豊臣秀吉は当寺を要塞のように改造していた。

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京都最初の日蓮宗の寺院らしい。伽藍もかなり広い。最初の写真に戻っていただけると確認することができると思うが、本法寺、妙蓮寺、妙覺寺、妙顕寺はいずれも、集中して位置している。周辺が寺ノ内通と呼ばれており、秀吉の京都大改造の時に、一斉に多くの寺院が通沿いに移動させられたからだ。

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松の迫力がすごい。

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妙顕寺は歴史ある寺院であるが、現代アートと融合した空間があることで注目を集めている。常に、アートの内容は変化しており、これは晩秋の頃の作品。

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春には同じ空間に、「○窓借景プロジェクト」(2枚目の写真)という作品が展示されていた。奥にある○窓には扇風機のようなものが回転しており、映像を映し出している。現代アートとの融合を図る妙顕寺は斬新で面白い。

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桜が咲いていた。

それでは、また。


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