No.39
ダンスレッスンがいつもより早く終わった
4月初旬の過ごしやすい気温で、いつものように明日のお昼ご飯をコンビニで買って、家に帰ろうと車を出すところで
『あ、いこう』と思い立った
前の日まで能登で一週間仮設住宅を建てきた
現地での悲惨な状況を目の当たりにして、感傷にひたるとか、悲しみにくれるという感情は全く湧いてこなかった
ただただ、『平凡な日常がこんなことになるのか』と思わされた
やっぱりダンスができない日々にうんざりだ
そういう気持ちも表現できないのなら、何かで誤魔化されそうで嫌だった
そんなこともあって、このまま行こうと思った
風俗に
すごく可愛い子がきてくれた。
少し不安そうに、はじめまして。という彼女と目が合った、こちらが笑いかけるとすぐに和んでくれた
その子は花粉症と黄砂で喉の調子が悪くて声がかすれていた。今日生理だからさわれないけど大丈夫?私乳首がどうしてもダメで、私のこと知ってるお兄さんなら大丈夫なんだけど、お兄さん初めてだから、、、と言う
あぁ、それもあって少し不安そうに入ってきたのかと納得した
自分は責められるのが好きで、触るのは興味がないからちょうどよかった
自分はネガティブポジティブなんだと話す彼女
考えてることはずっと暗いけど、そこから少し前向きなことを考えられる性格だと言いたいらしい
『お兄さんはずっと笑ってて明るいね、太陽みたいでまぶしい。自分は一日一笑という言葉が好きなんだよね
だからどんなに嫌なことがあっても笑うの大事にしてる。お兄さん見習わなきゃ』
自分が思ってたのは一日一生の方だったけれど、そんなことどうでもよかった
昔お世話になっている人から教えてもらって大事にしてる言葉に
自笑行為というのがある
自傷ではなく自分を笑うの自笑
やることやったら、あとは自分を笑えばいい
笑うしかないよ、だってそうじゃない?と伝えると
知性に憧れを抱く少女のような顔になった
社長の叡智
あの時叱られたことが無駄になっていなかったと思った
本当にちっぽけでどうしようもない男だと毎日思いながら仕事していた自分が報われたと思った
服を脱ぐと、こんな綺麗な体を見たことがない
私は人の骨格を見るのが好き、お兄さんの体の骨格はめっちゃ綺麗、本当に体が綺麗
自分の体が一番綺麗だという自惚れをやめろと、叱っていただいたことが鮮明に思い出された
どこまで行ってもキモい自己愛で埋め尽くされている自分に嫌悪していた、おれは本当に障害者なんだ。お前みたいなキモい奴は素手でトイレ掃除しまくれよ
そのキモい体張って擦り切れて死んでけよバカが
と自分に言い聞かせながら駅のトイレコンビニのトイレを掃除しまくっていたこと、無駄ではなかった
報われたと思った
あれから4年ほど経つのだろう
本当に綺麗な子だった。こんなところで体張って生きて、なんとか自分を保っている子たちがたくさんいるんだ
満たしてあげたい
なんとかしてあげたい、この歳で何にもない自分が悔しい
この子にまた会いたい
そう思う三十代半ばの俺
残酷すぎで清々しい気持ちになる
No39番
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