アルバム全曲レビュー #3 U/NiziU Part2
アルバム全曲レビュー、『U』(NiziU)編の後半です。今回はPoppin' Shakin'からNeed Uまでの後半6曲について解説していきます。前半6曲のレビューをまだご覧になっていない方は、そちらを先に読むことをおすすめします↓
前回同様かなりの分量になるとは思いますが、マニアックな話が好きな方はぜひお付き合い頂ければ幸いです。
地平線の向こう側へ
Poppin' Shakin'
NiziUの2ndシングルの表題曲として、ちょうど一年前の2/20に先行配信されたのがPoppin' Shakin'。実は音源が公開されたのはTake a pictureより先。MVよりも音源が先に公開された珍しい例で、MVの再生回数は公開から10か月経った現在で5400万回に迫っている。
曲調はTake a pictureと比較して「可愛い」系に寄せてきており、日本のアイドルらしいコンセプトとなっている。MVも様々な色を使っておりカラフルで、見ていて飽きない。
もう一つ曲調に関して言えるのが、「洋楽っぽい」ということ。洋楽によく見られるような、電子的なサウンドをふんだんに使った「EDM系」の曲に仕上がっていると感じるのは私だけだろうか。特にサビや"La la la…"の部分ではメロディに合わせてシンセの音が鳴っていて気持ちがいい。個人的には、"Boom Boom Boom"のようにボーカルのエフェクトも取り入れて、ゴリゴリのEDMにアレンジしても良かったのではないかと感じている(←EDM好き)。
個人的な願望はともかく、この洋楽っぽいアレンジによってタイアップの「NiziU LAB」の世界観にもマッチした、近未来的な楽曲に仕上がっているといえる。
実はコード進行にも「洋楽っぽさ」を感じさせる要因が隠されている。基本的にはE→C#m→A(1→6→4)となっているが、最後のAに秘密がある。大抵の曲ではコード進行の最後は終了感を出すために1または6(ここではEまたはC#m)を持ってくるが、この曲では不安定な4(A)が用いられる。敢えて不安定なコードを後ろに持ってくるこの手法は洋楽でよく見られ、ビートルズの"Let it be"が代表例である。JPOPやKPOPでも全く見られない訳ではなく、スピッツの"チェリー"やTWICEの"Like a Fool"にも出てくる。これらの曲のコード進行を見ればわかる通り、ほとんど1→5→6→4という流れの中で用いられる手法である。
歌割りに関して特徴的なのが、まずリマのパート。例に漏れずこの曲でもリマがトップバッターを担当しているが、最後の"Ah always we need U!"もリマのパートだ。リマが歌い出しを担当する曲のうち最後も担当するのはこの曲しかないため、「リマに始まりリマに終わる」唯一の曲であるといえる。
そしてやはり無視できないのが、マユカのサビ。1番はマコ・リク、2番はマコ・マヤ、3番はリク・マユカという変化球なサビの歌割りとなっており、現時点でマユカがサビを担当する唯一の曲となっている(合いの手を除く)。今年もたくさんの新曲がリリースされると思うが、再びマユカのサビが聞けることを願っている。
ちなみにミイヒを除いた8人でポピシェキを披露したNiziU LAB中のVRコンテンツ「NiziU"超接近"シアター」では、Bメロのミイヒのパートをマユカが担当している。このマユカの透き通った綺麗な声は、ミイヒとはまた違った良さがあるのでぜひこのバージョンも音源化してほしいところである。この曲に限らず、様々な曲でパートをスイッチしたバージョンも聴いてみたい。
さて、この曲は音源が先に解禁されたと前述したが、その時初めてこの曲を聴いたすべての人が圧倒されたであろう部分が、ラスサビ中の高音アドリブだろう。ブリッジのニナの高音も十分凄いのだが、その後のサビから最後のリマのパートまで、ほぼ途切れずに後ろで高音が鳴り響く。私も初めて聴いたときは歌唱力の高さに鳥肌が立った。
しかしここで厄介なのが、こういった主旋律ではないパートを「誰が歌っているのか」という問題だ。NiziUのメインボーカルであり、かつ高音が得意なメンバーとして多くの人が思いつくのがニナだろう。そのためか、この高音パートはすべてニナが担当しているというのが一般的な見解となってしまった。しかしこの長さのパートを一人でこなすのは現実的に考え辛く、複数人が担当しているのではないかと私は当時から疑っていた。
そしてその後の音楽番組でのリップシンクなどから、この高音アドリブはニナ、ミイヒ、リクの3人が担当していることが判明した。実はこの3人は前回述べたように、メキハピでサビを任されたメンバーである。一見可愛らしい曲であるが、この高音パートの存在によりNiziUのボーカル層の厚さに気付かされるとともに、感動的な曲にも聞こえてくる。
ちなみにPoppin' Shakin'はTake a pictureと同様にEnglish ver.も配信され、デビュー1周年記念の生配信後にMVも公開された。実はこのMVは、これより前に公開されたテクピクのEnglish ver.のMVよりも再生回数が伸びており、オリジナルMVと再生回数が逆転するという現象が起きている。先ほど述べた「洋楽っぽい」曲調が関係しているのだろうか。
出だしからリマとニナのネイティブの発音が楽しめるが、この出だしのリマ→ニナという歌割りは、英語バージョンでの映えを狙った結果なのではと個人的に感じている。英語詞を先に書いたのではと推理するWithUもいる。
I AM
8曲目のI AMは、2ndシングルのカップリング曲として既にリリースされていた。今までに発表されたカップリング曲のうち、『U』の全形態共通のCDに収録されているのはこの曲のみとなっている。もちろんMVなどはなく音源のみだが、初めて聞いた時「なんだこの神曲は」と衝撃を受けてしまった。今でもNiziUの曲の中で1, 2を争うほど個人的にお気に入りである。
この曲の魅力を言葉で表すのは難しいが、まず「NiziUらしく明るい曲調」でありつつも「かっこいい」ガールクラッシュ的な要素を含んでいる点が挙げられる。その象徴と言えるのが、リマとマユカの挑発的なラップ。2番の冒頭とブリッジの部分にこのラップが出てくるが、今までのどの曲にも増してヒップホップ的な激しめのラップに振り切っており、聞くだけでテンションが上がる。特にこの曲のリマのボーカルは素晴らしく、まさに"魅力的なボイス"である。
さらにこの曲のミイヒのボーカルも印象的である。随所に登場する"I like to be who I am…"のパートやBメロをニナとともに担当しているが、初めて聴いたときはこの声がミイヒだと分からなかった。いつもと違う雰囲気の声で、太く低めの歌い方をしているように聞こえる。Twinkle Twinkleで見せたような軽く優しい歌声とは全く違った印象を受ける。多くのWithUの方が言っているように、ミイヒは歌唱力だけでなく曲によって歌声を変える能力も持っているのかも知れない。
かっこよさを感じさせる要因はBメロの曲調にもある。この曲のBメロはB♭の音を基本とする短調となっており、一旦ここで暗い曲調となる。この暗い曲調にミイヒとニナの自信に満ちた歌い方が合わさって、ガルクラっぽい雰囲気が醸し出されている。
しかし短調のBメロから一転、サビでは一気に視界が開けたように明るいメロディにシフトする。ここで何が起きているかというと、(勘のいい方は気づいているかもしれないが、)転調である。基本となる音B♭は変えずに長調に転調しているので、同主調転調である。前回の解説も含めるとこの転調ばかりでしつこいようだが、それくらいこのアルバムを聞くと同主調転調が頻繁に出てくる。
冒頭の'I like to be who I am…"で暗い曲なのかなと思わせつつ、サビで予想を裏切るような明るいメロディを持ってくるところは、作曲者の流石の技術であり、この曲の中毒性にも繋がっている。
このサビのコード進行は4→1→5→6(E♭→B♭→F→Gm)であり、「ポップパンク進行」と呼ばれているらしい。JPOPやKPOPでもたまに見かける進行で、ITZYの"WANNABE"やIZ*ONEの"Beware"のサビもこの進行である。洋楽ではよく見られ、特にソロアーティストのOwi Cityの曲に頻繁に出てくるのでぜひ聴いてみてほしい(Good Timeが有名)。浮遊感であったりお洒落な印象を持たせるコード進行である。
最後に触れておきたいのが、アヤカの歌割りについてである。この曲は2番までほとんどアヤカのパートが出てこないが、2番の終わりでアヤカが登場し、なんとブリッジのほとんどすべてを担当している。アヤカが長めに歌い続けるというパターンは今までに無く、WithU全員が歓喜したことだろう。音程もそれほど高くなく、アヤカに合っている。これまでのタイトル曲は音程が高いものばかりだったので、これからはアヤカの音域に合った曲にも期待したい。
Super Summer
9曲目に入ってくるのが、NiziU初のサマーソングとして昨年7月にデジタルリリースされたSuper Summer。この曲が持つ明るくハツラツとした曲調とどこか切ない雰囲気に個人的にドハマりし、一聴しただけでNiziUの一番のお気に入り曲になった。先ほど述べたI AMと1, 2を争うくらい好きなのがこのSuper Summerだ。
ただつい最近までWithUの間での人気はほとんどなく、NiziUの曲の中で最下位と言っていいほどの不人気ぶりだった。Twitterでよく見る人気曲ランキングでも下位常連だった。この理由としては、デジタルリリースということもありTVでの披露やYoutubeでの関連コンテンツの公開がほとんど無かったことが挙げられる。
しかし、この状況が打破されたのが先月20日。大寒のこの日に、誰一人予想していなかった供給:Super SummerのDPVが公開された。Super Summer信者の私が喜んだのはもちろんのこと、今まであまりSuper Summerに触れてこなかった方も聴き直すきっかけになったようだ。実際直近の人気曲ランキングでは順位が急上昇してきている。またこのダンスのユニークな振り付けが話題になり、再生回数も急激に伸びている。
前置きが長くなったが、この曲について考察していきたい。まずは歌割りの意外性について触れる。普段のNiziUの曲ではマコ・リクがメインでサビを担当することが多く、ミイヒ・ニナはBメロやブリッジの高音パートをしばしば任されていた。しかしこの曲では1番サビとラスサビ、つまりメインのサビをニナとミイヒで担当しているという、めったに見ない構成となっている。特にミイヒはhiE(E5)の音を地声を混ぜた声で出すという流石の歌唱力を見せている。
「ビビットなSky」という歌い出しで始まるが、ここはリオのパートである。リオの歌い出しも珍しいのではないかと思い調べたところ、この曲とI AM、Step and a stepの3曲が該当し、リマの次に多く歌い出しを担当していることがわかった。ちなみにリクも3曲で同率2位につけている。
先ほどミイヒについて触れたが、このSuper Summerはミイニナの歌唱力が爆発している曲の一つといえる。特に私の好きな部分「地平線の向こう側へ〜」ではミイニナの裏声と地声を自在に変換する技術が光る。壮大なサウンドや甘酸っぱい歌詞と相まって毎回切ない気持ちにさせられる。
そして"Super Super Summer"の部分にはニナのハモりが後ろに重なっているが、ここで高いファのシャープ(F#5)を地声で出している。ハモりとはいえ女性歌手の曲でもめったに出てこないほどの驚異的な高さであり、もちろんこれまでのNiziUの曲に登場する地声最高音となっている。
私は編曲に関してはド素人で、どの音がどの楽器なのかはあまりよく分からないが、音に注目してみると一曲通して楽器の数は少なくシンプルな印象を受ける。そのためかベースは比較的よく聞こえる。このベース音は若干重めで電子的なサウンドなので、私のお気に入りである。全体的にシンプルだがBメロでは壮大に、ブリッジでは落ち着いた雰囲気になるなどメリハリもあり面白い。
君と出逢って
Step and a step
アルバムも終盤に入り満を持して登場するのが、NiziUのデビュー曲・Step and a step。MVは公開から約14か月経った現在112M回再生を突破しており、Make you happyとともにMVが1億回再生を突破した曲の一つだ。高評価も100万件を超えている。
「ゆっくり自分のペースで進んでいけばいい」という、夢に向かって進む人を励ますような内容の歌詞となっており、実際J.Y.Park氏がデビューするNiziUメンバーに向けて書いた歌詞とも言われている。曲調も応援ソングらしく比較的ゆったりしており、明るく元気なコンセプトが多いNiziUの曲の中で異質な存在となっている。
イントロには「JYP with NiziU」という餅ゴリの囁き()が入っていて、Make you happyの終わりの「JYP」より少し進化している。餅ゴリは自身がプロデュースした曲にこのような呟きをしばしば入れてくるが最近のTake a pictureやChopstickには入っていない。ちなみにSIGNALやBDZなどTWICEの曲によく見られたが、ITZYの曲には現時点で一回も入っていない。
この曲には音楽的に興味深いポイントがたくさんある。まずはコード進行。基本的には4→5→6→1(C→D→Em→G)の繰り返しで、変わったコードは一切出てこない。ロックっぽい進行らしいが、名前は調べても出てこなかった。単純なコードの組み合わせだが、実はこの順番で並ぶのはあまり見ないパターンである。4→5ときたらほとんど王道進行の流れになる傾向がある。4561進行の例として私が思いつくのはフレデリックの"オドループ"くらいだろうか。
次に細かい技法を紹介していく。ステステのAメロでは、ChopstickやTake a pictureの解説で述べた「スケール外の音」が出てくる。具体的に言うと"安心して"の"て"や"立ち止まってみたら"の部分はファ(F)の音であり、この曲の調であるト長調の音階(スケール)には登場しない。こうして意図的に違和感のあるメロディを持ってくることで、新しい音楽のあり方を模索しているのではないだろうか。
またサビに注目すると、出だしの"ステッ"のところで一拍だけ後ろの音が抜けているのが分かるだろうか。1番と2番両方のサビで最初の一拍だけ抜けていて、ラスサビでは3拍抜けている。一瞬アクセントを入れることで、サビの盛り上がりが強調される効果があると考える。ちなみにこの手法はJ.Y.Parkがよく使う手法であり、Take a pictureの1番のサビも出だしで一瞬盛り下がるという工夫がなされている。
ステステはEnglish ver.がない代わりにKorean ver.が存在する。テクピクやポピシェキのEnglish ver.とともに『U』の初回限定版Bに収録されているのだが、このKorean ver.が格好良すぎるということでリリース当時話題になった。私は元々CDは購入しないつもりだったのだが、この評判の良さに聴きたくなってしまい、渋谷のTSUTAYAで購入した。聴いてみるとメンバーの発音の良さに驚くとともに、リマユカのラップが特に格好よく聞き惚れてしまった。
恐らくオリジナルのステステと同じタイミングでレコーディングしているので、現在はさらに韓国語の発音が上達しているのではないだろうかと考えるとワクワクしてくる。韓国での知名度も最近上がってきたようなので、今年中には韓国デビューするのではないかと個人的に予想している。
9 colors
アルバムの終盤にはしっとり系の曲が入ってくるのが定番だが、このアルバムでは9 colorsがその役割を担っている。KOSEのCMソングとしてタイアップしていて数か月前から聞くことができ、Twinkle Twinkleとともに話題になっていた。NiziUメンバーの間でも人気らしい。
冒頭はギターとクラップのみのシンプルなアレンジで、そのままボーカルが入ってくる。Bメロになると音の種類も増えてだんだん盛り上がっていきサビで最高潮に…と思いきや、サビで一旦落ち着くようなアレンジになっている。ボーカルの入ったサビが終わると、インストだけのサビが始まり、ここで盛り上がりは最高潮を迎える。
この流れ、どこかで見たことはないだろうか。実はこの曲はEDMに似た構成をしている。EDM用語を使うと、インストのみのサビをドロップ、ドロップの前の部分をビルドアップという。NiziUでこのような構成の曲は初めてであり、この曲がポピシェキ然り「洋楽っぽい」と感じさせる要因はここにある。前述の通り私はEDM好きなので嬉しい限りである。
このドロップ部分のインスト、よく聴いてみるとメンバーのボーカルをミックスしたような音をしている。曲中のメンバーのボーカルを切り取ってきた可能性が高いが、どの部分のボーカルを使用したのか推測するのもまた面白い。ニナのパートをサンプリングしたのではないかという意見もある。
次にメンバーの歌割りや歌い方について考察する。この曲の歌割りの大きな特徴としては、まずパート分けがかなり粗い。9人のうち7人が、一回歌いきって終了するというような割り振りになっており、前代未聞の粗さで結構珍しい。前回解説したWonder Dreamや今回のI AMの歌割りの細かさとは完全に対極にある。サビはマコ→ミイヒ→ニナの順で一人ずつ担当しているが、秘密兵器のニナを最後まで温存している感じがしてとても良い。
例によってリマが歌い出しを務めるが、ここの歌い方がとにかく素晴らしい。特に"どんなに"の部分では初公開の裏声が聞けるのに加え、エッジボイスを使うという技術の高さが伺える。まさに魅力的なボイスである。ちなみにエッジボイスは2番の冒頭でマユカも披露している。
もう一人ボーカルのMVPを挙げるとすれば、リクを選択する。マヤとともに1番2番のBメロ両方を担当し、もう出てこないだろうと思いきやラスサビで登場。ニナのサビの後ろで高音のアドリブを担当している。なんとここでF#5の音を裏声で出しており、リクは地声だけでなく裏声も綺麗に出すことができるということに気付かされる。
Need U
アルバムの最後を飾るのが、NiziU初のファンソングとして制作されたNeed U。リリース直前にMVも公開されたが、メンバー全員可愛すぎて個人的に最もお気に入りのMVとなった。約3か月たった現在、800万以上の再生回数を記録している。
全体的な曲調は、ファンソングの割には明るくポップな印象。TWICEのファンソング"One in a Million"やITZYのファンソング"MIDZY"と比較してみると、この曲がどれ程明るくエネルギッシュであるか分かる。しかしこの曲調は今のNiziUのイメージによく合っており、採用して正解だったと個人的に感じている。
まず歌詞について考察する。この曲の歌詞はストーリー性があって面白い。冒頭の"どこにでもいるような〜"の部分では、普通の女の子だったメンバーがオーディションを通してNiziUになる様子が表現されている。そしてNiziUとなった今、WithUとたくさん会うはずだったが、ほとんど会えていない現状を表す歌詞もたくさん登場する。
"会えない時を超えて"や"もう待てないよ!"がそれらの一例である。NiziUがWithUへの愛を歌ってくれているだけで感動的なのに、こういったコロナ禍を踏まえた歌詞が出てくることで「コロナが無ければどんなに良かったか」を想像してしまい、個人的に涙腺が崩壊した。
次にメンバーの歌い方について見ていく。この曲はNiziUでは珍しく4分を超える長めの曲なので、ボーカルの分量も通常より多くメンバーの様々な歌声を楽しむことができる。1番のサビはマコ→リク→ニナ2番のサビはミイヒ→ニナ→マコ、ラスサビはリク→マコ→ニナという歌割りになっており、4人とも高いレ(D5)を出している。ここで面白いのが、力強い高音が出せるニナが裏声、優しい声のミイヒが地声を使っているということ。スパサマの時も感じたが、ミイヒはあまり力まずにスッと高音の地声を出せているように聞こえる。
リクはいつも通りの力強さでD5を地声で出しているが、この曲にはサビ以外にもリクの歌声を堪能できる箇所がたくさんある。まずは歌い出し。この曲では珍しくリクが歌い出しを担当しており、リクの優しい歌声で曲がスタートする。さらに2番のBメロでも出てくるが、"わかんなくなる"の部分で"わっかんなくなる"というようにユニークな発音をしている。サビの"特別な"もそうだが、リクはこういった歯切れのよい発音をするので、聴いていて気持ちがいい。一文字ずつしっかり発音することがリクの歌唱力の高さの一因になっているのではないだろうか。
こんな感じでこの曲にはリクのパートが多いため、パートの分量もメンバーの中で最も多くなっている(ちなみにChopstickでは7番目)。加えてMVを見てみると、リクが写っている時間も他のメンバーと比べて結構長く感じる。パートも多くてMVに写る時間も長いということで、「今回はリクが大優勝してる」という意見がWithUの中で多く挙がった。
しかし私個人的にはニナも大優勝しているのではないかとMV公開当時から感じていた。まずMVのニナが可愛すぎる。メイクもあまり濃くなくニナの可愛さが存分に引き出されたスタイリングとなっている。さらに曲中のニナのパートが多く、久しぶりにニナの歌唱力を実感できるような歌割りになっていると感じないだろうか。特にサビの存在感は大きく今まで地声で圧倒することの多かったニナの綺麗な裏声を聞くことができ、改めて歌唱力の高さを実感させられる。
次にこの曲のコード進行に注目したい。実はこの曲にはかなりの種類のコードが使用されていて、JPOPにおいて伝統的に用いられてきたたくさんの種類のコード進行が登場する。つまり少なくとも曲調に関しては、完全に「JPOP」に振り切った曲となっている。
まずイントロやサビの部分で使用される、この曲の主役となっているコード進行は「カノン進行」と呼ばれる。JPOPでは頻繁に用いられるので聞いたことのある方も多いのではないだろうか。基本的に明るいが、どこか切なくなるような感じもして個人的に一番好きなコード進行だ。Need Uはニ長調なのでD→A→Bm→F#m→G→D→Em→Aとなる。JPOPでは使われすぎているので例を挙げるときりがない。KPOPではTWICEの"Merry&Happy"やIZ*ONEの"DESTINY"、BTSの"Permission to Dance"もこの進行をもとに作曲されている。いつか自分でもカノン進行を用いた曲を作曲してみたい。
JPOPらしい注目のコード進行はBメロにも出てくる。まずは"この気持ち一緒なの?"の部分。ここではおそらくG→F#→Bm→[Am→D7]の進行が用いられているが、これも頻繁に見る進行であり近年のJPOPでトレンドになってきている。この進行が用いられている椎名林檎の有名曲から、丸の内サディスティック進行・通称「丸サ進行」と呼ばれている。YOASOBIの曲に頻出することで知られており、実はITZYの"WANNABE"にも一瞬出てくる。
そして、その直後の部分「聞こえてる?〜そばにいるよ」では2→3→4→5(Em→F#m→[G→G#dim]→A)
という進行が使われている。数字を見ての通り、だんだんコードが上がっていくことでじわじわ盛り上がる様子が表現できるため、Bメロやブリッジによく見られる進行である。IZ*ONEの"Up"のBメロにも出てくるが、個人的にこれもJPOP的な性格の強いコード進行だと感じている。
コード進行の話題だけでとても長くなってしまったが、それくらいこの曲は色々なコードが組み合わさってできた複雑な曲であり、日本人好みの曲調に仕上がっている。
まとめ
今回NiziUの1stアルバム『U』を一曲ずつ考察してきて感じたことは、音楽性の高さである。特にJ.Y.Park氏プロデュースの楽曲は意外性のあるものが多く、新たなジャンルを開拓しているようにも見える。
さらにKPOPを手掛けてきたプロデューサーの曲とJPOPを手掛けてきたプロデューサーの曲が混在するという、NiziUだからこそできた前代未聞のラインナップになっている。
これからもKPOPとJPOPの良いところを取り入れながら、新たなジャンルを開拓していって欲しい。
前回に引き続き今回も相当な量になってしまいましたが、どうだったでしょうか。最後まで読んで下さった方、ありがとうございます。そして、お疲れ様でした🙇「なんとなく音楽的に凄いアルバムなんだな」ということさえ分かって頂ければ、こんなに嬉しいことはありません。
ここまで偉そうに色々書きましたが、私自身独学(趣味)で音楽理論を学んでいるということもあり、論理が中途半端だったり、間違っていたりする部分もあると思います。何か反論や訂正ございましたら、遠慮なく教えてください。
これからもこんな感じで楽理の面から様々な曲を分析していきたいと考えていますので、リクエスト等あればぜひTwitterのDMなどに送って頂ければと思います。
※こちらもPart1同様、ニジらぶさんに添削して頂きました。
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