【薬の副作用】悪性症候群 ③
前回はこちらです
先日、大学病院の先生と悪性症候群のことを話す機会がありました。
薬の改善で悪性症候群になる人はほとんどいなくなり、大学病院でも数年に一度、患者が出るか出ないかなのだそうです。
そのため悪性症候群の特効薬であるダントリウムが一般の薬局で扱われていないことがほとんどで、薬がなくて探しまわっている間に症状がひどくなってしまうこともある。娘さんは本当に運がいいと言われました。
いつも利用している近所の調剤薬局ですんなりとダントリウムが出てきたので、この話を聞くまで入手困難な薬だったと知りませんでした。
行く先々の病院で「本当に運がいい」と言われる理由がこれでよくわかりました。
悪性症候群に似ている薬の重篤な副作用
悪性症候群に似た副作用に「悪性高熱症」「セロトニン症候群」があります。
「悪性高熱症」は、全身麻酔をした時にまれに出現するものです。このため手術の設備がある大きな病院だとダントリウムが常備されています。麻酔で出現するものなので悪性高熱症を外来で診ることはありません。
「悪性症候群」は、原因薬物の使用・中止後しばらくしてから徐々に出現する特徴があります。だいたい数日から数週間単位の経過で発症します。
症状がでたら原因薬物の中止とダントリウムで筋硬直の軽減をはかります。
「セロトニン症候群」は、原因薬物の開始や容量変更後に出現。摂取してから24時間以内に急激に発症します。(悪性症候群より経過が早いのが特徴)
悪性症候群と異なりセロトニン症候群はダントリウムは使用できません。症状がでた時は早急に原因薬物を中止することが最優先となります。
搬送先の病院では確定診断には至らなかった
悪性症候群とセロトニン症候群の症状は共通していることが多いので、とても誤診しやすいそうです。飲んでいる薬が判断材料になるのでお薬手帳は必須です。
ダントリウムは悪性症候群の特効薬ですが、セロトニン症候群には使用できないので、悪性症候群にかかる患者が現在ほとんどいないとはいえ、慎重に見極める必要があります。
娘が救急搬送された病院では「おそらく薬の副作用」だとしながらも確定診断はされませんでした。悪性症候群を直接目にする機会がほとんどなく、精神科以外の医師が悪性症候群かセロトニン症候群かを判断するのはかなり難しいとのことでした。
CK値の急激な上昇
診断の決め手となるものに血液検査のCK値(クレアチンキナーゼ)があります。悪性症候群になるとCKの数値が急激に高くなります。ここの数値で症状の重さもだいたいわかるようです。
CK値は筋肉の損傷を反映するもので、基準値は成人では男性で59~248U/L、女性で41~153U/Lです。
娘が救急搬送された際のCK値は4000を超えていました。
いきなり容体が悪くなった時にどれだけ早く治療を開始できるかがすごく重要で「様子見せずすぐに救急車を呼んだことが功を奏しましたね」と先生に言われました。
中にはCK値が10000を超える人が搬送されくることもあるそうで、こういう場合は即ICU直行になるとの事。
そう考えると4000という数字は初期の段階にあたるのかもしれません。
4000でも娘はものすごく苦しがっていたのに10000越えなんて・・💧
発症前後の血液検査のCK値と症状
・入院中の血液検査(退院2週間前)
外出時、嚥下障害と口が開いてしまう症状を診てもらうために、(後に救急搬送されることになる)病院で検査をしました。
この時のCKの数値は基準値内で白血球が少し高いぐらいでした。
・大学病院の診察時(退院直後)の血液検査
CK値はまだ基準値内でしたが、この頃にはアカシジアと振戦が強く出ていました。主治医の先生は「薬の副作用で出る症状ですね」と少し気にしている様子でした。
・救急搬送先での血液検査(疾患の診察日から3日後)
CK値が4000超え、CRPと白血球にも異常な数値が出ていました。前回の血液検査からたった3日の間に桁違いの数値になっていました。
・精神科病院での血液検査(搬送されてから2日後)
CK値は1000まで下がっていました。
主治医から悪性症候群と診断され、原因薬物2種を中止、特効薬のダントリウムを処方されました。
・救急搬送された病院の再診(診断されてから一週間後)
CK値はすっかり基準値に戻っていました。
「早期発見されたから早く元気になれたんだよ。本当に運がよかったね」とここでも娘は言われていました。
現在の娘の様子
「悪性症候群になったのはつらかったけど薬が減らせたのだけはよかったかも」症状が落ち着いた頃に娘からそう言われました。
精神科の主治医に減薬の相談をした矢先の悪性症候群発症。おかげで一瞬のうちに減薬は完了し、心配していた離脱症状もありませんでした。
本来なら少しずつ薬の量を減らしていかなくてはなりません。もし発症していなかったら今も薬を飲み続けていたでしょう。2種類の薬を中止できたことはある意味不幸中の幸いとも言えます。
ただ、数年かけて増やしてきた体重が今回のことで一気におちてしまいました。びっくりするほど痩せてしまった娘をみるたび、私の肉(脂)をわけてあげたいと思ってしまいます。
食欲が出てきたので、順調にいけば2年後ぐらいには元の体重に戻るでしょう。壊れてしまった筋肉も増やしていかないといけません。
娘の様子を書いたつぶやきにたくさんスキやコメントをいただきました。とても励まされました。本当にありがとうございます。
次回の記事で悪性症候群の話は終わりです。もっと簡潔にまとめた記事を書く予定です。
強迫症にも少し変化がありましたので、それもいつかお伝え出来たらと思っております。