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いつかの自分が立てた旗

長年の計画などというものはなく
場所との出会いから半ば勢いで店をはじめた

けれど思い起こせば十数年前
いつか店をやりたいと思っていた頃があった


20代の頃
自分が大事に使っていた
キッチン用品の絵をノートに描いて
どんなふうに使うのかとか
使いやすさの説明とかを付け加えて
お店を開いたら絶対売れる!と謎に確信していた(恥ずかしい)

そのノートを当時一緒に住んでいた
今の夫に見せて無理やり共感させながら
なんのあてもなく夢を描いていた

その後 結婚しこどもが生まれ
そんな夢はいつの間にか忘れ去られ
生きていくための仕事を探し働いてきた


そんな中
夫婦関係、子育てに行き詰まる

家族を幸せにしたいのに
自分の中にはどんどんイライラが溜まっていった

幼稚園のころから
集団に馴染むのが苦手で
だましだまし学校生活を乗り切ってきた

けれど社会に出てからはごまかせない
自分が納得感を持って働くということが
恐ろしく難しかった
みんなが当たり前のようにできることが
私にはできなかった

その疲れやストレスからくるイライラは家族に向かう

こどもにたくさん怒っては
寝顔を見てごめんねと謝り
また次の日には怒っている

年子の子育ての大変さや
夫婦の間の問題も重なり
なにかを変えなければ
家族と自分が壊れてしまうような気がした


それから数年をかけ少しずつ変化していく

子育てをしながら週5で働くというのは
私にとっては至難の業だった

まずは現時点での優先順位を明確にした
いちばんに子育て、次に家事
お金はもっともっと下の方
仕事はこどもや家の仕事に
しわ寄せのいかない働き方にする

大切なものを明確にして環境を変えると
時間と心に余白が生まれ
生き方についてより考えられるようになっていく

通勤中に耳から
家では本から情報を得て
自分の中にあった価値観がいかに自分以外のものからつくられているかということに少しずつ気づき始める
これまでの生きづらさが言語化されていった

育った環境からくる苦しさにも向き合った
カウンセリングを受け
自分の取り扱い方を少しずつ知っていった

環境を変え、思考を変え
心に乗っかっていた重しが
ひとつひとつ外れていくのを感じた


そしてひとつの結論に至る
「家族を幸せにするには、まず自分が幸せになること」
そのひとつの結論をさらに深めていき
「自分らしく働く」という道を模索しはじめることになる

「自分にしかできないこと」なんてものは私にはない
けれど他の人より少しだけうまくできそうなことだったら‥

生活雑貨を扱う店だったらできるかもしれないと思い
その後間もなく 今の店がある廃校校舎と出会う

十数年前に ただの憧れのとして抱いていたものとは全く違うけれど
不思議なことに同じところへとたどりついた


自分が立てた旗というものは
忘れ去られたころに意外なかたちで
姿を表すのかもしれない

本当に気づいたら店をやることになっていた
準備段階で渦中にいる時は気づかなかったが
店をはじめ1年が過ぎた今
これはあの頃の自分の夢が叶っているということなのかな?
とふと思ったのだ

だったらこれからも
叶いそうにもない夢でも
どんどん旗を立てていこう

来世にお預けと諦めていたようなことでさえ
言葉にするのはただなのだから
やらないと損するような気持ちになっている

まずは40代のうちに北欧ひとり旅
そしていつか森の近くで暮らしたい

漠然としている夢でも一度掲げれば
無意識にその旗を目指して
昨日とは違う行動を選ぶ自分になるのではないか
なんて思っている

ただただ辛いと思って生きていた
20代の自分が描いた夢に
40歳の私は今、救われている

自分にありがとう
と思ったのははじめてかもしれない


これを読んでくれた誰かも
思い切って無謀な夢を口にしてみてくれたらうれしいな
とひそかに思ってここに書き留める

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