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ステージ復帰戦

昨日無事にステージ復帰戦が終演いたしました。

達成感というよりは、やっと肩の荷が下りて安心したというのが今の心境です。


高校2年生の秋に「ステージ引退」ということで、演奏会を行いました。
時間がない中でも一生懸命練習し、自分でも信じられないくらい良い演奏ができたことを覚えています。
コロナ禍での演奏会でしたが、「引退」ということもあり、今までお世話になったたくさんの方々が聴きに来てくださり、感謝の気持ちを伝えることができました。

自分の中で、この日以上の演奏はもうできないなと思っていたことに加え、受験期1年間意地でもピアノに触らないと決意していたので、今年の4月、1年ぶりにピアノに触れたときには、もう自分の出番はないなと思いました。

「音大生」という肩書もなければ、コンクール実積ももはや過去の栄光でしかないただの女子大生の演奏に、時間とお金を割いてもらうこと自体、申し訳なくなってしまう。

それでも趣味程度にピアノを続けることくらいなら許されるだろうと思い、今年の6月、緊張しながら、コンビニのコピー機で楽譜を購入。
受験生の時に辛くなったら聴いていた清塚信也さんの「For Tomorrow」を選び、気が向いた日にちょっとだけ譜読みをするみたいな生活が始まりました。

指も全然動かないし、下宿先には電子ピアノしかなかったので、もちろん上達することはなく、ただの息抜きでしかなかったです。

でもやっぱり、同じ門下の同級生が音大でバリバリ活躍している姿や、後輩がキラキラした目で演奏する姿、ずっとあこがれ続けてきたピアニストがステージに立っている姿を見たら、自分ももう一度ステージに立ってあの高揚感を味わいたいと思ったし、ここで賞味期限切れのピアニストになってしまうのは悔しすぎると思ってしまった。

そんなこんなで、8月に締め切りギリギリで2年前に「引退試合」をした地元の演奏会に今年も申し込みました。

曲も指導してくださる先生も練習場所も決まっていないまま本番まで3か月切っているという、正直アホみたいに計画性のない復帰戦。
完全に自分の気持ちが暴走していました。

怒涛の3か月は、自分の音楽人生の中でも上位にランクインするレベルで結構きつかったです。

誰に頼ることもできずに一人で練習する毎日。
「孤独」とはまさにこのことか!?とか思っていました。

で、気づいたらステージに立っていて、演奏が始まっていたという感じです。

本番は、決して満足のいく演奏ができたわけではなかったため、悔しいという気持ちが一番強かったです。
それでも、1000人規模の一級大ホールでスタンウェイのフルコン独り占めできた喜びと、想像以上にたくさんのお客様が聴きに来てくださった嬉しさで、久しぶりにステージ独特の高揚感を楽しみつつ、プライドをもってステージに立つことができました。

何より、たくさんのお客様が自分の演奏に涙を流してくださった経験は初めてで、技術だけではない音楽の力を再認識しました。

友人や大好きな地元の方々、恩師などたくさんの方も応援に駆けつけてくださり、本当に幸せ者だなと思いました。
最後に「ブラボー!!」の声も頂き、正直めちゃめちゃ嬉しかったです。

こんなにも温かい地元があって、たくさんの人に「おかえり」って言ってもらえて、なおかつ拙いピアノまで聞いてくださって…心がぽっかぽかです。

「復帰戦」といいつつも、今後の予定は全く決めていなくて。
このまま演奏家として再スタートするのもなしではないと思いつつ、音楽に人生の全てをささげる勇気がないために音大進学をしなかった自分が同世代の音大生たちと同じ土俵に立つのは失礼すぎるし、何より技術面で全く歯が立たない。 

今回感じた気持ちを忘れず、私らしさを前面に出しながら自分のスタイルで今後も音楽と真摯に向き合っていきたいなと思っています。

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