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ガラスの靴よりハイヒール
前進するたびに「コツコツ」と鳴らしながら背筋を伸ばして歩く女性は、とてもとても大人に見えた。
いつか私もハイヒールを履いてみたい。
そんなことを思いながら、玄関で勝手に母のハイヒールを履いてみたのはいつだったろうか。
前提からお話すると…
生まれつき足の骨が1つずつ多い上に、外反母趾・偏平足である私は、小学生のときに歩行困難になるなど、常に脚トラブルに悩まされている。
ゆえに、綺麗な形のハイヒールなど、履けっこないのだ。
ーーー
この3か月。
私の身には、信じられないことがたくさん起きている。
ずっと頭と体がフワフワしていて、これからどうしていけばいいのかよくわからない、というのが正直な感想である。
たった3か月。されど3か月。
たくさんの方に助けていただき、応援していただき、見守っていただき、道しるべをしていただき…
後ろを振り向くことなく、ただただ大きな背中を追い続けた結果、知らない世界にたどり着いていた。
見えなかったことが見えるようになり、毎日が新しくてワクワクする。
やりたいことが次から次へと溢れ出てきてウズウズする。
今の私ならイケるかもしれない、と思える日だってある。
だけれど、方向音痴の私は、もう一人では3か月前には戻れない。
3か月前の私はどんな想いで挑戦し、何を目標にしていたのか。
本当の私の気持ちを、
思い出したくても思い出せない。
それを「成長」と呼ぶのかもしれないが、私にはわからない。
うん、やっぱりわからない。
ーーー
ハイヒール。
気付いたときには、履いたまま全力疾走できるようになっていた。
大学の入学式用に購入した、どこにでも売っている私のハイヒール。
カポカポするし、脚痛くなるし、
もう一生履かないと思っていたのに、、、
今では靴箱の中でレギュラー顔してる。
いつから履くようになったのだろう。
いつから履けるようになったのだろう。
本当に私の足に合っているのだろうか。
本当に私に似合っているだろうか。
ーーー
ハイヒールを「コツコツ」鳴らして、知らない世界に飛び込んでみる。
何もわからないけれど、別に悪くないんじゃないか。
相変わらず猫背だけれど、たくさんの大切な人に照らしてもらった道なのだから、かっこ悪くてもちょっぴり勇気を出して進んでみようかな。
父は、高速道路はつまらないんだとよく言っていた。
今なら共感できる気がする。
ということで、私はのんびり自分の道を進んでいこう。
ーーー
受賞発表の時。
心臓が飛び出るくらい緊張した。
そして今も落ち着けない。
頭の中はごちゃごちゃで、ありとあらゆるものが散らかっているけれど、心の奥底にある秘密の部屋はまだ閉めておこうかな。
そして、本当に本当の自分を見失ったときだけ鍵穴から中身を覗いちゃえ。
ーーー
私にはガラスの靴は履けなかった。
美しくて心優しいシンデレラは、「苦しさや辛さ」に耐え続けた結果、”幸せ”を手に入れたんだって。
この3か月、私も「苦しくて辛い」なと思っていたんだけれど、そうじゃなかったらしい。
私はハイヒールでいいや、
「コツコツ」っていう音、やっぱり好きなんだよね。