国交省発表(令和6年)「まちなかの居心地の良さを測る指標(改訂版ver.1.1)」の要旨をご紹介します。
はじめに
こんにちは!GEOTRAインターン生の筒井です。
本記事では、国土交通省が令和6年に発表した、「まちなかの居心地の良さを測る指標(改訂版ver.1.1)」についてご紹介します。
国土交通省は、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成に取り組む地方公共団体や民間まちづくり団体等を支援するため、居心地の良い空間が形成されているかどうかをより人間らしい視点から把握し、改善点を発掘するツールとして「まちなかの居心地の良さを測る指標(改訂版ver.1.1)」を作成しました。
また、令和5年5月に公開されたver.1.0から改訂版となります。主な変更点についても本記事でご紹介いたします。
本指標作成の背景・経緯
令和元年6月26日、「都市の多様性とイノベーションの創出に関する懇談会」で、『「居心地が良く歩きたくなるまちなか」からはじまる都市の再生』の提言がまとめられ、「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成に必要な要素の一つとして、「滞在者数や通行者数等の量に加え、交流や滞在等活動の質も重視する」ことが挙げられました。
さらに、令和3年4月6日、「デジタル化の急速な進展やニューノーマルに対応した都市政策のあり方検討会」において、都市アセットの活用状況や都市の利便性に注目し、市民のQoL(生活の質)向上を可視化する評価指標の設定が重要であると提言されました。
これを受け、国土交通省では、より人間的な視点から居心地の良さを把握できるよう、地方公共団体や民間まちづくり団体などが現場で活用できる指標の作成に取り組みました。
目的
これまで都市空間の把握は、交通量や滞在者数、インフラ整備状況といった「ハード環境」を定量的に測る方法が主流でした。
しかし、日本の都市が成熟する中で、ただ新しく開発するだけでなく、既存の空間を活用するまちづくりが重視されています。都市は市民の基本的な生活機能を提供する場から、市民のQoLを向上させる場へと進化する必要があります。
そのため、従来の量的なデータに加え、都市がどう使われ、どんな活動が行われているかといった「質」にも目を向けることが重要です。
本指標では、「居心地が良く歩きたくなる」まちなかを目指し、空間の状態だけでなく、滞在者が感じる主観や活動を把握することで、「まちなかの居心地の良さ」を可視化しています。
本指標をKPIとしてPDCAサイクルを回すことで、本質的に居心地が良く、実際に利用されるまちなかの形成が期待されます。また、本指標により、まちづくりの効果を多角的かつわかりやすく可視化することで、ステークホルダーとの対話が深まり、活動の意義や継続の必要性への共感が広がります。
本指標の構成
本指標は、居心地の良さを「安心感」「寛容性」「安らぎ感」「期待感」の4つに分類し、対象地を要素ごとに把握します。
4つの要素には各項目の指標を設定し、項目ごとに【主観】と【活動】を計測します。
また、居心地の良さ(安心感・寛容性・安らぎ感・期待感)に加え、空間の状態(建物や土地の状況、機能等)と関連する項目(基礎情報、滞在者・通行者の確認)を参考情報として記録します。
本指標を用いた測定結果は、グラフでわかりやすく可視化され、居心地の4要素に関する現状を確認することが出来ます。
一方で、本指標は異なる都市の比較ではなく、特定のエリアの継続的な改善を主眼と置いたツールであるため、個々のまちづくりに応じた適切な指標を設定することが重要です。
ver.1.0からの主な変更点
ver1.0からの主な変更点として、①活用の手引き、②調査票・アウトプットの2点が挙げられます。
①活用の手引きでは、エリアの特性や取り組み等により、設定すべき指標は異なることから、エリアの特性に応じて独自の指標を設定する重要性をより強調する形に改訂されました。
また、エリア独自の指標の設定にあたっては、関係者間でのビジョンの共有・調査目的の整理等、事前準備が重要であることから、実施ステップが充実化されました。
②調査票に関しては、より使いやすいよう一部表現や構成が改訂され、エリア特性に応じた、空間の状態確認(機能・設え)や居心地の良さの指標項目の追加が可能となりました。
アウトプットについては、以前は居心地の良さの4要素は、要素ごとに全ての指標項目の平均値をレーダーチャートで示していましたが、一つ一つの指標項目に着目して議論することが重要であるため、指標項目ごとの結果が示されるようになりました。
GEOTRAの取り組み
GEOTRAでは、日本のまちづくりを主導する、様々な企業・自治体のご支援を行っております。
ここでは、過去の東京都の西新宿エリアにおける「エリア特性を生かした地域活性化」の事例をご紹介します。
西新宿は東京都庁がある「副都心」として日本有数の高層ビルが立ち並んでいるエリアであり、大きな建て替えを伴う再開発は難しいものの、ビル間の公開空地が多いことがエリアの特性として挙げられます。
東京都は、エリアの特性を生かした地域活性化を目指していますが、西新宿における、人の流れに関するデータがないこと、イベントを実施した際、どれくらいの集客が期待できるか予測できないことや、施策の結果をデータに基づいて都民に分かりやすく伝える必要がある、といった課題がありました。
高粒度に人の動きが捕捉出来る、GEOTRA Activity Dataを使用することで、イベント実施時の人の流れを再現・分析し、同結果をもとに、将来の集客予測ができるようになりました。
また、東京都が認識していたエリアの課題が、データを用いた可視化によって事実であることが確認されました。
更に、イベントの結果を市民にわかりやすく伝え、効果的に情報発信できるようになりました。
最後に
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、国土交通省が令和6年に発表した、「まちなかの居心地の良さを測る指標(改訂版ver.1.1)」についてご紹介しました。
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