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国交省発表(令和4年8月) の「デジタル社会に対応した新しい都市交通調査体系の実現に向けて~新たな都市交通調査体系のあり方に関する検討会 中間とりまとめ~」の要約をご紹介します

はじめに

みなさん、こんにちは!GEOTRA経営企画部マネージャーの小島です。

わたしたちGEOTRAは、位置情報データと機械学習技術を用いて、主に街づくりやインフラ開発などを担われているお客様へ、データサービスや分析サービスなどをご提供しています。

前回、1回目の投稿では、GEOTRAがどのような会社で、どんな社会課題を解決したいのか、何を目指しているのかについて、ご共有しました。

2回目の投稿となる今回は、国土交通省が令和4年8月5日に発表した、「デジタル社会に対応した新しい都市交通調査体系の実現に向けて~新たな都市交通調査体系のあり方に関する検討会 中間とりまとめ~」について、ポイントを掻い摘んで、ご共有します。

国土交通省都市局は、令和3年 11 月に「新たな都市交通調査体系のあり方に関する検討会」(座長:谷口守 筑波大学システム情報系教授)を設置し、近年の社会状況等の変化を踏まえた今後の都市交通調査体系のあり方に関する議論がなされています。

この度の中間とりまとめは、デジタル社会に対応した新しい都市交通調査体系の構築に向けた今後の方向性が示されています。


以下本とりまとめのサマリーとなります。

従来の都市交通調査

交通やエネルギー消費、医療、経済活動などのリアル空間上での最も基礎的な情報は、人の動きです。一人一人の人の動きを正しく可視化・把握することが、日本が抱える諸課題の解決に向けた突破口となります。

(GEOTRAにて作成)

人の動きを把握するのは難解で、これまでは人的リソースを使った手法が一般的でした。代表的な都市交通調査方法として、パーソントリップ調査があります。パーソントリップ調査は、5~10年に一度、調査圏域内から無作為に抽出した調査対象者から、ある1日の移動の情報を調査表により収集し、自動車・バス・自転車・鉄道などの交通手段別の人の動きを定量的に把握しようというものです。
パーソントリップ調査は、計画的な交通施設整備の推進やモビリティマネジメントなどのソフト施策の提案、都市計画や交通計画を担う人材の育成、学術研究の発展に大いに貢献してきました。

(GEOTRAにて作成)

都市交通調査を取り巻く近年の状況と課題

同とりまとめでは、現状の都市交通調査の課題として、以下の4つが触れられています。

①デジタル社会の進展による人々の活動場所の変化

想像に難くないですが、デジタル社会の進展により、オンライン化が進み、外出や移動をせずとも、活動のニーズを満たしたり、新型コロナ感染拡大を契機に、オンライン活動へのシフトが進んだり、人の動きや活動場所が多様化したりと、人々の活動と移動の乖離が進んでおり、一層、現状を適切に把握し、環境変化に素早く適応する必要があると述べられています。

②都市交通調査の実施状況の漸減傾向

都市交通施策は、道路や鉄軌道などハード整備中心から、公共交通の維持や公共交通の利用促進・利便性向上などハード・ソフト施策のバランスの良い取り組みへと進展し、長期の整備投資から、短期で柔軟な、アジャイルなまちづくりへと拡大。
しかしながら、従来のパーソントリップ調査を始めとする都市交通調査は、交通施策の必要性や規模の検討を主眼に設計されていたため、ウォーカブルなまちづくり、公共交通の利用促進、都市機能や居住の誘導といった多様な都市交通施策に対応した調査手法が未整備な状況下、都市交通調査の実施は減少傾向に。

③人の動きに関するビッグデータや高度なシミュレーション技術などの登場

一方で、情報通信技術の発展により、スマホや交通系ICカードなどから移動履歴の情報、ビッグデータの入手が可能となり、更には、3D都市モデルなどと重ね合わせて分析するデータの取得も可能に。
しかしながら、ビッグデータに関する基本的な情報の公表が不十分な場合が多く、目的に対応した活用ができなかったり、シミュレーションの精度の限界など、地方公共団体と都市計画コンサルタントとの間で共通認識を持てず、双方にとって非効率が発生するといった、ビッグデータの技術知識不足によって生じる課題が発生。

④進まないパーソントリップ調査データの利活用・オープン化

また、地方都市圏のパーソントリップ調査結果は、各都市圏で管理され、データ公表の方法などが都市圏によって異なっていたり、地方公共団体や民間事業者、まちづくり団体などの担当者が容易にデータを分析出来ず、データ利活用が進んでいない、といった課題がある。
 
こういった、都市交通調査体系、データ利活用の実態を踏まえ、新たな都市交通調査体系を整備する必要が生じていると述べられています。

デジタル社会に対応した都市交通調査体系

その様な背景を踏まえ、現状把握に明るいビッグデータや、パーソントリップ調査で取得できる交通手段別の行動履歴、その他統計情報など、それぞれの長所を生かして組み合わせた、新たな都市交通調査体系の構築を進めることの重要性が述べられています。

中間とりまとめ概要版資料より引用)

【補足】
「昨今、内閣府が推進する取り組みとしてEBPM(Evidence Based Policy Making)があります。EBPMとは、政策の企画を、エピソードに頼るのではなく、明確な目的のもと、データなどのエビデンス(根拠、証拠)から確りと現状を把握したうえで進めようという取り組みです。日本は、既に成熟した仕組みやインフラを持つ国であり、その分街づくりや政策に関する意思決定が複雑化する傾向にあります。そういった中で、社会課題を効率的・効果的に解決するためには、EBPMの推進が不可欠となります。

新しい都市交通調査体系の実現に向けた取り組み

新たな都市交通調査体系を整備するにあたり、4つの取り組みを進めると記載されています。

①活動(アクティビティ)に着目した新たな都市交通調査手法の開発

1つ目は、活動(アクティビティ)に着目した新たな都市交通調査手法の開発です。上述の通り、環境変化に素早く対応するためには、都市空間における人の活動や移動の実態を、原因も含めて適切に把握する必要があると記載されています。

中間とりまとめ概要版資料より引用)

②効率的で多様な都市交通調査手法の構築

2つ目は、効率的で多様な都市交通調査手法の構築です。
多様化する都市施策に対応し、一人一人の1日の活動、移動を推計するアクティビティ・ベースド・シミュレータを開発し、ビックデータとパーソントリップ調査を連携させた調査手法の構築に取り組むべき、またスマホアプリによる調査票の回答入力支援等を検討すべきとしています。

中間とりまとめ概要版資料より引用)

③都市交通調査のデータ利活用の推進

3つ目は、都市交通調査のデータ利活用の推進です。
様々な主体が地域のビジョンづくりや施策検討等を容易に実施できるようにするため、パーソントリップ調査データのオープン化、また、容易にデータ利活用を可能にする簡易分析及び可視化ツールの提供や、パーソントリップ調査データと3D都市モデルなどとの連携による、デジタルツインを見据えたパーソントリップ調査の改善、さらに、社会の変化、新技術の導入やビッグデータの変化などの情報をアップデートしながら、各地域で行われた調査の取り組みを共有する都市交通調査の統合プラットフォームを構築すべきとされています。

④新たな都市交通調査に係る手引きの作成

4つ目は、新たな都市交通調査に係る手引きの作成です。
デジタル社会の進展等による人の活動や移動の変化、ビッグデータの登場等によるデータ環境の変化、人口動態の変化などを背景とした地域が抱える課題や取り組む施策の変化など、最新の状況にあわせた新たな都市交通調査に係る手引きを作成する必要があるとしています。

まとめ

このように、本取りまとめでは、ビックデータやその他テクノロジーを適切に掛け合わせる事による、新しい都市交通調査体系の開発の必要性が提言されています。


(補足)GEOTRAの取り組み

GEOTRAでは、上記のような流れを踏まえて、人流データやシミュレーションに関するサービスのご提供をしております。上述の取り組みに関連したGEOTRAのサービスを2つご紹介させていただきます。
1つ目は、GEOTRAアクティビティデータです。
GEOTRAアクティビティデータは、KDDIにてお客様の同意を得たauのGPS位置情報データを活用し、自社開発したプライバシー保護技術によって、プライバシーがより強固に保護された、生活者一人一人の1日のアクティビティがわかる高粒度な人流データです。

(GEOTRAにて作成)

既に、三菱地所様、渋谷区様、三井物産様に、様々なユースケースでご活用頂いています。ユースケース事例については、後日ご紹介しますので、今回は割愛します。ご興味ある方は、弊社までお問合せください。
 
2つ目は、Webダッシュボードです。
Webダッシュボードは、GEOTRAアクティビティデータをもとにした、誰でも簡単にデータ利活用を可能にする可視化ツールです。統計分析に関する知識がなくとも、柔軟な人流分析が可能なツールをご提供しています。

(GEOTRAにて作成)

最後に

2回目の投稿となる今回は、国土交通省が令和4年8月5日に発表した、「デジタル社会に対応した新しい都市交通調査体系の実現に向けて~新たな都市交通調査体系のあり方に関する検討会 中間とりまとめ~」について、ご紹介しました。
今後皆様のお役に立てるコンテンツを配信できればと思っておりますので、ご興味をもって頂いた場合は是非フォローお願いします!

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