見出し画像

国交省発表(令和5年5月)の「ビッグデータの実践的な利活用への手引き~携帯電話の位置情報データを活用した交通課題などの解決手法ガイド~」の要旨をご紹介します。

はじめに

みなさん、こんにちは!学生インターンの高桑です。

今回は、令和5年3月に発表されたビッグデータの実践的な利活用への手引き~携帯電話の位置情報データを活用した交通課題などの解決手法ガイド~についてポイントをまとめてご紹介します。 

昨今、携帯電話の位置情報データ(ビッグデータ)を活用し、観光客や住民の流動を可視化・分析することで、従来困難であった各種政策立案や地域の課題解決が可能になることが期待されています。まさに、前回のnoteでご紹介したEBPMの推進が期待されています。

本手引きでは、令和3年度(52件の応募に対し9件採択)、令和4年度(41件の応募に対し8件採択)に実施した実証実験事業の成果に基づき、携帯電話から得られる位置情報のビッグデータを活用して、地域の諸課題解決に向けてどのような利活用したかを解説するとともに、ビッグデータによる分析方法やデータの使い方に関する留意点について取り上げています。

 尚、GEOTRAは、令和4年度の実証事業に採択され、鳥取県様と共同で、鳥取県東部地域の交通渋滞等課題解決に向けた実証事業を行いました。

どのような課題に取り組むことができるのか

計17件の実証事業は、各事業の目的・課題から交通施策関連分野、観光関連分野、まちづくり関連分野に概ね分類されます。先ずはそれぞれの事業における課題・取り組み背景について解説します。

① どのような課題に取り組んだのか(事業)

(ア) 交通施策関連分野
主に交通渋滞や公共交通サービスの利用の低迷が課題とされ、渋滞エリアにおける、車の分散誘導や公共交通機関の利用促進に向けた適切な停留所・経路設定が求められています。

交通施策関連分野において取り組んだ課題一覧(原文より引用)

(イ)観光関連分野
観光客の詳細な動きが分からないことが誘客の方策を立案する上で大きな妨げとなっています。
加えて、二次交通の確保や観光ルートの開発といった誘客に向けた具体的な方策が求められている他、観光客の滞在時間を延ばすことや観光客によるごみ投棄問題に対しての取り組みも求められています。

観光関連分野において取り組んだ課題一覧(原文より引用)

(ウ)まちづくり関連分野
消費低迷や購買力低下の側面から地域内での買い回りの不便さや回遊の難しさといった問題が浮き彫りとなり、また、新たな集客施設の開設に伴い来訪者が集中した際の交通対策や観光閑散期における来訪者の減少が問題となっています。

まちづくり関連分野において取り組んだ課題一覧(原文より引用)

② そのほかの課題への取り組み例

防災面での活用の可能性が考えられます。例えば、ETC2.0データを利用して緊急輸送道路や被災箇所の代替ルートなど、災害に強い交通網の検討に役立てることができます。また、携帯電話の位置情報データを活用して人口統計を分析し、帰宅困難者や緊急物資の需要を予測することも可能です。これらの情報は地域防災計画の策定や緊急時の対応支援に資することが期待されます。

課題に対してどのように解決していくのか

実証実験における解決方策を幾つかご紹介します。

(ア) 交通施策関連分野での課題解決事例
GEOTRAが採択された「鳥取県東部における人流データ・シミュレーション技術等を活用した旅客流動分析及び広域交通マネジメント手法の検討」を例としてご紹介します。

鳥取県東部において
・大型連休期間中の交通渋滞や市街地で発生する慢性的な交通渋滞
・地方部固有の課題から交通需要を評価・予測する為の基礎データが乏しい
等の課題がありました。
こうした課題の解決に向け、交通施策の立案と広域交通マネジメント手法の構築と実践の検証を行いました。GEOTRAはKDDIが保有するau GPSデータにGEOTRAが加工を施した独自のGEOTRA Activity Dataを使用しています。これにより先述の交通課題に対しては多角的な要因分析を可能に加え、観光客の増加や道路の整備といった事象に対してのシミュレーションを可能にしました。また、これらのプロセスを体系化することで広域交通マネジメント手法の構築の検討を行っています。

(イ)観光関連分野での課題解決事例
ここでは事業No.5を例にご紹介します。
北海道の一部地域にて「北の山岳リゾート」としてリブランディングを図っており、来訪客の促進のために「来訪喚起」と「来訪のための交通機関の確保」の2点に対する施策の立案を目的とした事業となります。

収集データには
①    全国うごき統計(ソフトバンク株式会社)
②    検索×位置情報ビッグデータ(ヤフー株式会社)
を使用しており、①来訪客の属性分布や居住地、立ち寄り地点の把握、②検索語と位置情報から来訪者や非来訪者からの需要の把握に活用されています。
こうしたデータの活用により、有効なPRや需要とマッチした二次交通の整備に向けた施策の立案を可能にしています。

(ウ)まちづくり関連分野での課題解決事例
ここでは事業No.1を例にご紹介します。
地方部の過疎化が進展し、持続可能なビジネスモデルの構築が困難となる中、バス事業の収支改善のため、移動ニーズを洗い出し、バスの利用促進を図り、地域経済の発展を目指したものになります。

収集データには
①    流動人口データ(株式会社 Agoop)
②    自動運転バスの利用者データ(=AIカメラ)
を使用しており、①訪問者の多いスポットや時間帯の抽出したのち、経路の仮説立案を行い、②車内AIカメラを用いて同一人物の乗車と降車を記録し、実際に設定した経路の効果測定を行っています。段階的に複数のデータを組み合わせて利用することで有効的な経路とダイヤの策定を可能にしています。

ビッグデータを取り扱う際の留意点

(ア)交通施策関連分野
交通施策関連の分野では、既存の交通調査データと組み合わせたり置き換えたりすることで、ビッグデータの活用を試みています。ただし、既存の交通調査とは一部内容が異なることが判明しているため、注意が必要です。現時点では通信時間の制約により、1時間以内の移動に関するデータが把握できない可能性があります。また、移動か滞留かの判定や空間解像度においても制約があります。

各種交通調査とビッグデータの比較(原文より引用)

こうした制約を考慮し、例えば事業No.2では以下のような新たなデータの構築を行っています。

事業No. 2におけるビッグデータの適用手法(原文より引用)

(イ)観光関連分野
分析を行う上で観光客をどのように定義するかという問題があります。今回行われた実証実験においてある事業では観光客の統計データを取得するための判定条件を
①    片道移動距離 80 ㎞以上、もしくは所要時間 8 時間以上
②    足元及び隣接市区町村居住者を除く
としています。このように、分析対象となる地域や属性によって取得したデータに何らかの工夫を施す必要があります。
一方で、事業No.3では、ビッグデータとその他の位置情報(群流センサ例えば Wi-Fi やBluetooth)を組み合わせて観光客の流動の把握を試みています。

(ウ)まちづくり関連分野
まちづくり関連分野では特に人流データが重要視されています。しかし、携帯電話の位置情報から収集したデータであることからすべての人の動きを網羅している訳ではなく、スマートフォンの所有有無や位置情報の共有についての同意があるか否かなどによりデータ量が変わります。したがって、それを補完するためのユーザインタビューやアンケートのほか行動観察が重要となります。また、今回の実証実験で行われたように検索データと位置情報データの掛け合わせによってこれらの情報を補完する方法も提案されています。

最後に

本記事では、「ビッグデータの実践的な利活用への手引き~携帯電話の位置情報データを活用した交通課題などの解決手法ガイド~」についてご紹介しました。

皆様のお役に立てるコンテンツを配信できればと思っておりますので、少しでもご興味をもって頂けた方は、いいね or フォローをよろしくお願いします!

弊社へのお問い合わせ先
メール:sales@geotra.jp