技研商事インターナショナル x GEOTRAセミナー『ビッグデータで地域特性・生活者を理解する ~人口動態・心理特性・地理情報を用いたエリア開発・まちづくり~』 セミナーレポート(24/11/26開催)
はじめに
こんにちは!GEOTRAインターン生の筒井です。
今回は、11月26日に開催した技研商事インターナショナル x GEOTRAのWebセミナーの概要をご紹介します。
本セミナーでは、「データを用いた地域・生活者理解」をテーマに、デモグラフィック(人口統計)、サイコグラフィック(心理特性)、ジオグラフィック(地理情報)の各種データを用いたエリア分析・まちづくりについて解説しました。
GIS(地図情報システム)や人流データ活用の支援実績が豊富な、技研商事インターナショナル市川様をゲストにお招きし、両社の事例を紹介しました。
第1部:技研商事インターナショナル 市川 史祥様
「公的統計、人流データ、サイコグラフィックデータを活用した”まち”の理解と需給バランスの可視化」
まず初めに、導入実績が2000社以上ある技研商事インターナショナルのマーケティングGIS(地図情報システム)をご紹介します。
商圏調査におけるジオデモグラフィックデータの利活用
従来、居住者(夜間人口)から商圏を読み解く際には、性別や年齢、世帯数、住宅所有率、富裕度といった属性を個別に分析していました。
しかし、「c-japan®(シー・ジャパン)」を用いれば、それらのデータを包括的に活用して、具体的な顧客ペルソナを設定可能です。
「c-japan®(シー・ジャパン)」のポイント
●年齢や家族構成、住宅事情だけでなく、年収や地価などのデータも考慮。
●町丁目や郵便番号、メッシュ単位で地域をクラスタリング。
●居住特性を35タイプに細かく分類し、地域や住民の特性を精密に把握。
図表も駆使して視覚的に理解を深めることができるため、意思決定が効率化します。
消費者を理解するサイコグラフィックデータについて
地域・生活者理解をする際に活用するデータとして、性別・年代、結婚の有無、家族構成などのデモグラフィックデータ、年収・貯蓄、職業・雇用形態、学歴などのソシオグラフィックデータ、価値観、購買活動、メディア接触などのサイコグラフィックデータがあります。
消費者の「価値観」や「購買活動」など、心理的側面を分析するサイコグラフィックデータを活用することで、従来のデモグラフィックデータやソシオグラフィックデータでは見えなかった、顧客の内面的な要素に迫ることができます。
技研商事インターナショナルの取り組み
●生活意識データ:どのような価値観が生活に影響を与えているのかを分析。
●購買カテゴリーデータ:どの製品やサービスが関心を集めているかを特定。
●デジタルメディアデータ:オンラインでの行動や接触するメディアを可視化。
これにより、消費者をより深く理解し、ターゲットに響くマーケティング施策を構築することができます。
ジオグラフィックデータを活用した地域による価値観の特性分析
地域ごとの価値観や生活意識はどう異なるのでしょうか?
技研商事インターナショナルでは、アンケート調査とジオグラフィックデータを組み合わせて分析を行いました。
デリバリーや持ち帰りなどの中食をよく利用しているとアンケートに回答した人の割合は、東京都心部ほど高くなっています。
また、お金をかけていることに「子どもの教育費」と答えた人の割合は、近郊エリアにかけて高くなっている傾向がありました。
このように、価値観・生活意識・消費の傾向は、地域によって異なることもあるということがデータ分析によって明らかとなっています。
この分析によって、地域ごとのニーズに応じた施策を立案するための重要な洞察が得られます。
地域の需給バランスの分析
次に、地域の需給バランスを「買い物弱者」という切り口で見ていきます。
「買い物弱者(高齢者等を中心に食料品 の購入や飲食に不便や苦労を感じる方)」が、どの地域・エリアに発生しているか分析し、地域の需給バランスを把握することが可能です。
以下の図では、赤い点は高齢者が比較的多数居住している場所、青い点はコンビニがある場所を表しています。
そして、実際にそのエリアの衛星写真を見ると、赤い点のエリアは戸建て住宅が多く、近くに買い物をするお店がないことから、買い物弱者が多いことが明らかとなりました。
このような分析により、デリバリー供給増加などの対応策が必要だとわかります。
技研商事インターナショナルの取り組みは、公的統計や多彩なデータを活用し、地域の需給バランスや消費者心理を可視化するものです。「まち」の課題を的確に把握し、より効果的な施策につなげるためにデータの利活用は重要です。
技研商事インターナショナル公式サイト▼
第2部:GEOTRA 樋田英能
「人流データ×データサイエンスによるまちづくりシミュレーション~移動需要と地理空間情報から読み解く」
GEOTRAは、高精度な人流データとAIを活用し、まちづくりの未来をシミュレーションするソリューションを提供しています。
再開発や新施設の建設、大規模イベントの開催など、街の変化に伴う「人の動きの変化」を予測することが可能です。
複合施設で最適なエリア設計は?若い世代を呼び込むにはどういった施策が可能か?などといった、特定の事象(再開発、大規模施設開業、土地利用変更、イベント実施等)に対する人の移動需要そのものの変化が学習・予測可能になります。
具体的なモデルの構築イメージとしては、人流データと施設情報、機械学習モデルを掛け合わせて、まちの賑わいをモデル化し、シミュレーションすることができます。
例えば、古民家カフェや緑地、水辺といったまちづくりの計画要素に、人の流れのデータと機械学習モデルを組み合わせることで、「このまちづくりでは、どこからどのような人々が訪れるのか」をシミュレーションします。
人流データ×データサイエンスによるまちづくりシミュレーション
街の魅力度をシミュレーションする際に、街の魅力度を構成する要素を分解・可視化する「特徴量分析」、施設や土地利用が魅力度にどのように影響するかを予測する「感度分析」、さらにそれらを統合した「開発シミュレーション」の実施が可能です。
人流需要予測シミュレーションは、開発プロジェクトの各段階で利用できます。
例えば、開発計画の検討、関係者との議論、さらに開発後に必要となるサービスの検討などに利活用いただけます。
開発シミュレーションの事例:新設大学病院での人流予測
GEOTRAでは、大学病院やアリーナ等、大規模施設新設時のシミュレーション実績があります。
具体例として、あるエリアの新設大学病院が開業した場合の創出人流の予測を行いました。
推計にあたって、類似する近隣医療機関・教育期間の人流を分析し、その値を公開されている新設大学病院の計画規模(病床数、学生数等)に適用することで、将来の人流インパクトを推計しました。
分析にあたって、以下のことを行いました。
分析のプロセス
類似施設の人流データ分析
近隣の6つの医療機関・教育機関を基に、人流データを収集。
入院患者、外来患者、職員、大学来訪者など4つの属性で分類しデータを取得。
新設大学病院の人流シミュレーション
類似施設のデータを元に、計画中の病院規模(病床数、患者数、職員数など)を反映し、新設大学病院による一日当たりの想定人流を導出しました。
駅周辺エリアへの影響推計
浦和美園駅周辺の現在の人流を基準に、新設大学病院開業後(2028年時点)の対象区域内の人口増加、およびシミュレーション導出した創出人流を加えた将来人流予測を可視化。
モデルの精度検証について
GEOTRAでは、データの正確性を高めるため、モデルの精度検証を実施しています。
具体的には、以下のプロセスを採用しています。
●訓練データと検証データの分割
人流データを「訓練用」と「検証用」に分け、訓練データを使ってモデルを学習させる。
●再現性の確認
学習させたモデルが実際の状況をどれだけ再現できるかを、検証データを用いてテストし、予測の精度を評価。
このプロセスを通じて、信頼性の高い分析結果が得られます。
最後に
ここまでご覧いただきありがとうございました。
本記事では、11月26日に開催した技研商事インターナショナル x GEOTRAのWebセミナーの概要をご紹介しました。
技研商事インターナショナル市川様をゲストにお招きし、「データを用いた地域・生活者理解」をテーマに、デモグラフィック(人口統計)、サイコグラフィック(心理特性)、ジオグラフィック(地理情報)の各種データを用いたエリア分析・まちづくりについて解説しました。
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GEOTRAでは、独自の個人情報保護技術により、人々の動きや行動目的などが高粒度に可視化された人流データ、GEOTRA Activity Dataをご提供しています。
更に人流データのご提供に留まらず位置情報データ全般に関する利活用促進のためのご支援を行っております。
また、GEOTRAは、まちづくり領域の計画・調査・データ分析に関わる方の成功を支援するための会員制コミュニティ「INCITY」を開始しました。
INCITY Membership にご登録いただいた方には、今回の勉強会のような人流データ活用に関するイベントや、会員限定のコンテンツが見られるMembership Siteにご招待します。
分析事例などのコンテンツを共有し、まちづくりの領域での新たなデータ分析・ユースケースの発展に寄与してまいります。
【「INCITY」詳細ページはこちら▶ https://www.geotra.jp/incity】
〇具体的な活動(抜粋)
【勉強会・限定イベント(INCITY Meetup)】
まちづくり×データ活用をテーマに、会員限定の勉強会・イベント「INCITY Meetup」を企画しています。
都市工学や交通工学などの有識者、自治体やデベロッパーなど、まちづくりの実務者が登壇し、現場の知見や専門性、具体的な事例に基づいた情報発信を行っています。
【セミナーアーカイブ】
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【技術資料・データライブラリー】
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