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映画制作日誌|(脚本)〜お化け屋敷を作ったのも人間〜
映画の脚本は書いたことがないし、これまで生きてきて、脚本を書く機会とか、動機とか、とにかく人生の何もかもが脚本とは無関係だった、と言い切れるかどうかは分からない。なぜなら、今回、脚本を実際に書いてみようということになったからだ。という話は置いておいて、まずそもそも、どうして脚本に関わることになったのかについて、自己紹介も含めて少しだけ書き残しておこうと思う。
好きな色は紺色、苦手な季節は春、好きなピザはマルゲリータ、苦手な抜け殻は蝉の抜け殻、好きな薬は目薬、苦手な症状は花粉症、と自己紹介をしようと思えばいくらでもできるけど、一番大事な紹介は、短いか長いかも判明していない天寿を、小説家として全うしようと僕が考えていることだろう。
僕はまだ小説家になれていないし、近い将来それになれたとしても玄関でボロボロのスニーカーの紐を結んでいるような段階でしかない。つまり、小説家として完熟していないし、完熟するかどうかも不明、むしろ、その望みが薄いような人間を、監督は脚本に誘ったということになる。これはちょっと、ちょっとというか本当に危険な行為だとも言えるし、一方では甘美だとも言える、と僕は思っている。特に理由はないけど、おそらく甘美の側面が強いし、実際に僕は「映画の脚本」という言葉に惹きつけられている。
だからこそ、生半可な姿勢ではいられない。
冒頭にも書いた通り、僕は脚本について何も知らない。でも、知りたいと思えば、今はどのような手段を取っても知れるし、幸いにも最近は脚本について知り尽くした方とも出会えてしまった。なのでおそらく、書けるようにはなると信じている、とここに記すからには、書かなきゃいけないので、少し怖気付いている。初めてジェットコースターに乗った時みたいな高揚と恐怖がぐちゃぐちゃに混ざり合って、心を掌握しつつある。
でも、きっと楽しい時間になる。なぜなら、僕は楽しいことを何よりも愛していて、今回の脚本も、「楽しそう」という危険な動機で引き受けたからだ。あるいはそもそも、楽しいことは「危険」という火薬の詰まった爆弾を抱えているのかもしれない。だからこそ、爆発させないように、爆発させないように、爆発させないように、深き淵に臨むがごとく、薄氷を踏むがごとく、戦々兢々として、好きなことに身を投じてみようと思う。
今日はここまで。
2022.4.23 益田雪景
photo: 監督