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映画制作日誌|「ひとつまみ」からこぼれる

 将来、どんな仕事をしたいかというと、楽しい仕事をしたい。それはみんなそうで、楽しいと思える仕事ができる人なんて一握りしかいない。きっと一握りもいないと思う。ひとつまみくらいだろうか。親指と人差し指でパセリなんかを摘んで、パスタなんかに振りかけるくらいのひとつまみ。そのひとつまみから漏れてしまった人たちは、それぞれが何かのために何かを我慢しながら朝から晩まで働くのだ。そう教えられてきたけれど、周りを見れば楽しそうに働いている人はたくさんいる。きっとひとつまみ以上は楽しそうに働いている人がいる。


 そういう僕は何がしたいのかというと、誰かの作品を人に伝える仕事をしたい。それは出版社で編集をしたり、営業をしたりするのか、映画を配給しているのか、ライターとして記事を書いているのか、自分のお店を開いているのか、今はわからないけれど、自分が好きだと思った作品を誰かに好きになってもらえるように、作者と受け手を繋ぐ仕事がしたいと思った。


 なぜそんな仕事をしたいのか、いろんな人に聞かれて、いろんな理由を自分なりに考えて作り出した。伝える仕事がなければ作品は埋もれてしまうとか、みなが同じ流行ものばかりを追っているからこそ、そうじゃないいいものもあるのだと教えたいだとか、どれもなんとなくしっくりこない。とってつけたような薄っぺらい理由ばかりじゃないか。


 なぜなら、僕は人のために何かをするよりも、自分のために何かをしていた方が明らかにイキイキとしているからだ。自分を犠牲にして誰かのために…なんて利他的なことをするよりも、自分がしたいことをして、したくないことはなるべくしない。けど、その自分の仕事をいいなと思ってくれる人が少数でもいればラッキーくらいの気持ちで働ければ、それなりに幸せなのだと思う。なにせ、自分が好きなモノ・こと・人について語っている時が一番楽しいのだから。


 ということで、この映画制作チームがどこに向かって、僕はどんな関わり方ができるのか、まだよく分かっていないけれど、きっと、これからできる映画について、嬉々として語っていると思うので、どうか、その時を楽しみに待っていておくれよ。

(2022/5/20 大成海)

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